ツール・ド・フランス2021第11ステージはヴァンアールトが優勝
第108回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月7日に南仏プロヴァンスのソルグからマロセーヌまでの198.9kmで、モン・ヴァントウを2回越える山岳ステージの第11ステージを競い、ベルギーチャンピオンのウァウト・ヴァンアールト(ユンボ・ヴィスマ)が独走で逃げ切って4度目の区間優勝を果たした。
区間2位はフランスのケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード)、3位はオランダのバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)だった。マイヨ・ジョーヌを着たスロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)は区間4位でゴールし、総合首位を守った。
世界チャンピオンのアラフィリップがアタック
第11ステージは164選手が出走。2Kkm地点で最初のアタックを仕掛けたのは、アルカンシエルを着た世界チャンピオンのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。彼は25km地点でマイヨ・アポワを着たナイロ・キンタナ(チームアルケア・サムシック)と一緒に集団から逃げ出す事に成功した。
メイン集団ではトニー・マルティン(ユンボ・ヴィスマ)が落車する事故が発生した。彼はそのまま救急車で病院へ搬送され、レースを棄権した。
32km地点のカテゴリー4の丘は、アラフィリップが先頭で通過。キンタナは諦めて集団に戻った。40km地点の中間スプリントを通過後、アラフィリップに5選手が追いついて先頭は6人になった。集団からはさらに13人が追走し、そこにヴァンアールトも加わっていた。
ツール初登場だったカテゴリー1のコル・ド・ラ・リギエールのふもとで、先頭はアラフィリップ、アントニー・ペレス(コフィディス)、ピエール・ローラン(B&Bホテルズ・P/B KTM)、ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション)の4人になり、ヴァンアールトがいた13人の追走グループに1分差を付けていた。頂上はマーティンが先頭で通過した。
ヴァンアールトがモン・ヴァントゥでアタック
最初のモン・ヴァントウ越えが始まった残り99kmで、逃げていた4人は追走グループに追いつかれ、先頭は16人になった。しかし、頂上まで残り7kmで生き残っていたのは、アラフィリップ、ヴァンアールト、ペレス、エリッソンド、ジュリアン・ベルナール(トレック・セガフレード)、クサンドロ・ムーリッセ(アルペシン・フェニックス)、ルーク・ダーブリッジ(チームバイクエクスチェンジ)の7人だった。
山頂まで残り2kmで、後続グループからモレマがアタックし、先頭に合流。残り76kmのモン・ヴァントウ頂上はアラフィリップが先頭で通過した。80人ほどに減っていたマイヨ・ジョーヌ集団はイネオス・グレナディアズが引き続け、5分ほど遅れていた。
2度目のモン・ヴァントウ越えが始まる前に、逃げグループはベルナールがスピードを上げ、ペレスが遅れてしまった。そして残り36kmでエリッソンドがアタックし、独走を開始した。しかし、彼は単独で追ってきたヴァンアールトに1km先で追いつかれてしまった。そしてモン・ヴァントウの頂上まで残り11kmで、ヴァンアールトがエリッソンドを振り落として独走を開始。彼はゴールまで残り22kmの頂上を、追走するエリッソンドとモレマに1分以上のタイム差を付けて通過した。
後方のマイヨ・ジョーヌ集団は、2度目のモン・ヴァントウで次第に小さくなり、総合2位のベン・オコナー(AG2R・シトロエンチーム)も脱落してしまった。頂上まで2kmで、マイヨ・ジョーヌ集団は6人になっていた。ここで新人賞総合2位でマイヨ・ブランを着ていたヨーナス・ヴィンゲゴール(ユンボ・ヴィスマ)がアタックし、マイヨ・ジョーヌのポガチャルだけが付いていく事ができた。ところがモン・ヴァントウ頂上まで残り1kmを目前にしてポガチャルは減速。ヴィンゲゴールは単独で頂上を目指した。
モン・ヴァントウの下りで、ポガチャルはリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアズ)とリゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング・NIPPO)に追いつかれたが、ゴールまでにヴィンゲゴールを捉える事はできた。
ヴァンアールトはそのまま逃げ切り、2019年、2020年に続いて3年連続でツール区間優勝を上げる事ができた。彼はこれまでツールではゴールスプリントで競り勝って区間優勝しており、単独で逃げ勝ったのは初めてだった。
■山岳区間で逃げ勝ったヴァンアールトのコメント
「言葉を失う。ツール・ド・フランスに来た時は、このステージで勝つとは思っていなかった。ちょうど昨日、逃げに出れば勝つチャンスがあるかもしれないと思い始めた所だった。モン・ヴァントウは自転車競技で最も象徴的な山の1つだ。これはたぶん、ボクの競技キャリアで最高の勝利かもしれない。登山の前に、逃げるための大きな戦いがあった。例えばアラフィリップは、その瞬間に多くのエネルギーを費やしてしまった。しかし、何よりも、できると信じれば全てが可能だと思う」
■総合首位のポガチャルのコメント
「モン・ヴァントウの2回目の登坂中、ペースはずっと非常にハードだった。最後の1kmでヴィンゲゴールがアタックし、ボクはただ彼に付いて行けなかった。それは多すぎて、ちょっと爆発した。下りでウラン、カラパスと力を合わせ、皆の一日を救う事ができた。
ヴィンゲゴールに落とされた時、落ち着かなければならないと思い、自分のペースをセットした。脱落した時、我々は頂上に近づいていたし、下りは彼を連れ戻す好機だと分かっていた。最後はボクにとって良い一日だった」
■第11ステージ結果[7月7日/ソルグ~マロセーヌ/198.9km]
1. VAN AERT Wout (JUMBO-VISMA / BEL) 5:17:43
2. ELISSONDE Kenny (TREK – SEGAFREDO / FRA) +01:14
3. MOLLEMA Bauke (TREK – SEGAFREDO / NED) +01:14
4. POGAČAR Tadej (UAE TEAM EMIRATES / SLO) +01:38
5. URAN Rigoberto (EF EDUCATION – NIPPO / COL) +01:38
6. CARAPAZ Richard (INEOS GRENADIERS / ECU) +01:38
7. VINGEGAARD Jonas (JUMBO-VISMA / DEN) +01:38
8. LUTSENKO Alexey (ASTANA – PREMIER TECH / KAZ) +01:56
9. KELDERMAN Wilco (BORA – HANSGROHE / NED) +01:56
10. MAS NICOLAU Enric (MOVISTAR TEAM / ESP) +03:02
15. O’CONNOR Ben (AG2R CITROEN TEAM / AUS) +05:35
■第11ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. POGAČAR Tadej (UAE TEAM EMIRATES / SLO) 43:44:38
2. URAN Rigoberto (EF EDUCATION – NIPPO / COL) +05:18
3. VINGEGAARD Jonas (JUMBO-VISMA / DEN) +05:32
4. CARAPAZ Richard (INEOS GRENADIERS / ECU) +05:33
5. O’CONNOR Ben (AG2R CITROEN TEAM / AUS) +05:58
6. KELDERMAN Wilco (BORA – HANSGROHE / NED) +06:16
7. LUTSENKO Alexey (ASTANA – PREMIER TECH / KAZ) +06:30
8. MAS NICOLAU Enric (MOVISTAR TEAM / ESP) +07:11
9. MARTIN Guillaume (COFIDIS / FRA) +09:29
10. BILBAO LOPEZ DE ARMENTIA Peio (BAHRAIN VICTORIOUS / ESP) +10:28
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):CAVENDISH Mark (DECEUNINCK – QUICK-STEP / GBR)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):QUINTANA Nairo (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL)
■新人賞(マイヨ・ブラン):POGAČAR Tadej (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
(※第12ステージは VINGEGAARD Jonas (JUMBO-VISMA / DEN) が着用)
■チーム成績:BAHRAIN VICTORIOUS (BRN)
■敢闘賞:ELISSONDE Kenny (TREK – SEGAFREDO / FRA)
第12ステージはスプリント・ステージ
ツール一行はピレネーを目指し、南東部から南西部へと移動を開始。7月8日はドローム県のサン・ポール・トロワ・シャトーから、ガール県のニームまでの159.4kmで、平坦区間の第12ステージが行われる。山岳ポイントは中盤にカテゴリー3が1カ所で、集団ゴールスプリントになると予想されるが、風の影響でエシェロン(集団分断)が発生する可能性もある。