【東京オリンピック トラック競技4日目】男子オムニアムは英国が金、女子ケイリンはオランダが金
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ロード、MTB、BMX、ここまでのトラック競技と自転車競技全体でメダルを最も獲得しているのはイギリスとオランダの7個で同率1位という状況。もともとのポテンシャルの高さに加えて、”オリンピックシフト”が功を奏しており、昨年までよりも一段高い状態でこの東京オリンピックへと挑んできている様子が伺える。
8月5日、東京オリンピック、トラック競技もいよいよ折り返しの4日目。15時30分から、
・男子オムニアム決勝(スクラッチ、テンポ、エリミネーション、ポイント)
・男子スプリント予選、1/8決勝、1/8決勝敗者復活戦、準々決勝(レース1、2、決定戦)、5~8位順位決定戦
・女子ケイリン準決勝、決勝
の3種目が行われた。
男子オムニアム
20カ国、20人の選手たちが出場する男子オムニアム。昨日までのチームパシュートを走ったメンバーだけでなく、このオムニアムが初登場となるフレッシュなメンツも出走。
現オムニアム世界チャンピオンでロードレースではグルパマ・FDJに所属するベンジャミン・トマ(フランス)や、リオオリンピックチャンピオンのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)など、これまでの世界大会で実績を残してきた選手たちが勢揃いする機会となった。日本からは橋本英也がメダル獲得を狙う。
・スクラッチレース
第1種目の10km、40周でのゴール順でポイントが振り分けられるスクラッチレース。
様子見という意味合いか、序盤から数名が飛び出しては吸収という展開が続く。
レースが終盤に差し掛かったところで、今回のレースでも積極的に動くベンジャミン・トマ(フランス)のアタックをきっかけに、ヤンウィリアム・ファンシップ(オランダ)、アルチョム・ザハロフ(カザフスタン)、ニクラス・ラーセン(デンマーク)の4人が抜け出す。さらに後方からマシュー・ウォールズ(イギリス)が単独で追いついた。勢いのある5人は、スピードが落ちた集団をラスト4周のところでラップ。
一塊となった集団はフィニッシュに向けてスピードが上がる。
橋本もポイントを取ろうと集団前方に位置する。橋本はスクラッチレースを終えて、8位の位置に。このスクラッチレースの平均時速は56.539kmだった。
・テンポレース
5周目以降、毎周1位で通過した選手に1点が入る第2種目のテンポレースは、スクラッチレース同様10km40周を走る。
逃げて周回ラップを狙った動きが多発。スクラッチで逃げたメンバーを主軸としてレースが進む。序盤は、橋本も逆転を狙うべくラップの動きに乗ろうとするも、あまりのスピード域の高さに沈んでしまう。
中盤で、またしてもベンジャミン・トマ(フランス)、ヤンウィリアム・ファンシップ(オランダ)、ニクラス・ラーセン(デンマーク)、テリー・シェアー(スイス)が抜け出す。後ろからエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が合流。
脚があり、かつ脚の揃う飛び出した5人はあっという間に集団をラップ。全員が集団の後方についたかと思いきや、ファンシップのみ、集団からつかず離れずの位置で走り続ける。これはテンポレースならではのうまいポイントの取り方だった。
他の4人がラップする直前、集団の先頭からは、アルベルト・トーレス(スペイン)らがさらに飛び出しており、すでに半周ほど集団の前を走っている状態。トーレスらが集団をラップするまで、集団後方に間を空けて走り続ければファンシップが先頭ということになる。つまり毎周回ポイントを稼げるのだ。
ファンシップはしっかりと周りを見つつ、トーレスらが合流してからもその方法でポイントを取り、最終的には10回分のポイントを獲得した上で、最後にはしっかりと集団をラップしてポイントを重ねた。
テンポを終えて、このレースでポイントを稼いだファンシップが首位に。2位がトマ、3位がウォールズと続く。徐々にそれぞれの脚の調子が明らかとなっていった。
・エリミネーションレース
第3種目、2周ごとに最後尾でラインを通過した選手が1人ずつ除外(エリミネート)されていくエリミネーション。
スタートしてすぐ、アメリカがトラブルによりニュートラルとなり再スタートとなった。
再スタートが切られるといきなり、見るからに速いスピードで展開していく。
前の2種目までにポイントを稼いだ上位選手たちは、集団の真ん中の方で脚を休めながら、ピンチの場面ではしっかりと脚を使って前へ残った。
中盤ほどまで、自ら脚を使って集団前方の内側に位置した橋本だったが、外側からどんどんと追い抜かれ、行き場所を失ってエリミネートされてしまった。
終盤になると、ファンシップやヴィヴィアーニなどが集団の先頭に出てくる。誰が残ってもおかしくない実力者たちがどんどんと絞られていく。最終的に残ったのはヴィヴィアーニ(イタリア)とウォールズ(イギリス)。最後に余裕を見せて先に前に出たヴィヴィアーニがエリミネーションを制した。
・ポイントレース
最終種目の25km、100周を走るポイントレースは、10周ごとにポイント周が設けられており、1位5点、2位3点、3位2点、4位1点とポイントが与えられ、最終周回はその倍点がつく。
ポイントレーススタート時点で首位に立ったのは、114ポイントのマシュー・ウォールズ(イギリス)。ヤンウィリアム・ファンシップ(オランダ)が110ポイント、ベンジャミン・トマ(フランス)が106ポイントと続く。
最終種目となるポイントレースでも世界選手権やこれまで3種目でも行われたように、単なるポイント周回での攻防に止まらず、ラップポイントを狙う動きが頻発した。
スタートの号砲とともにロジャー・クルーゲ(ドイツ)とヤウヘニ・カラリオク(ベラルーシ)が飛び出し、集団はそれを容認。2人は早速集団のラップに成功する。
首位に立ったウォールズがゲイヴィン・フーバー(アメリカ)とともに集団から出る。2位以下の他選手が追うかと思われたが、あっさりとラップを許し、ウォールズは2位以下に大きく差を空けることとなった。その後、78ポイントで7位に位置していたキャンベル・スチュワート(ニュージーランド)が単独でラップ。
ラップ合戦はまだまだ続く。先頭を1人で走り続けたエリア・ヴィヴィアーニがポイント周回でのポイントに加えて1ラップを成功させ、82ポイントで6位だったところを一気に2位の位置までのし上がった。また、ヴィヴィアーニに途中から合流したクルーゲとカラリオクもさらに1ラップし、順位を上げた。
さまざまな攻撃が代わる代わる仕掛けられるなか、落ち着いて周りを見つつ、マークすべき選手を判断していたウォールズは明らかに視野が広く、他の選手よりも疲労の度合いが低いように思われた。残り40周回のポイントを他上位選手をマークしつつ自ら取りに行った。
すでに1回ラップをし、ポイントを稼いでいるスチュワートは、さらにラップすることで表彰台獲得を目指し、ニクラス・ラーセン(デンマーク)とアルベルト・トーレス(スペイン)とともに逃げる。数周ほど走り、追いつきそうなタイミングでスチュワートが猛加速。ラスト2周のところで集団後方を捕らえた。これにより、スチュワートは一気に2位まで順位をアップ。
スチュワートらが集団に追いつく前、さらに集団から飛び出していたトマ、ウォールズ、ヴィヴィアーニの3人は集団に吸収され、最終フィニッシュに向けてさらに集団全体が加速する。
テリー・シェアー(スイス)が1着にフィニッシュ。2着に入ったウォールズがさらにポイントを重ね、男子オムニアムの優勝を決めた。
このポイントレースでの平均時速は、55.108kmというスピードだった。橋本はこのポイントレースでは手も足も出なかった。このスピード域で何度もアタックを繰り出せるレベルでやっと優勝争いに加われる。世界の壁は、まだまだ高い。
男子オムニアム リザルト
金メダル マシュー・ウォールズ(英国) 153pts
銀メダル キャンベル・スチュワート(ニュージーランド) 129pts
銅メダル エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア) 124pts
・
15位 橋本英也(日本)54pts
男子スプリント
昨日の敗者復活戦で勝利した脇本雄太は1/8決勝の第4ヒートに登場した。相手は、200mフライングTTで世界記録を持つニコラス・ポール(トリニダードトバゴ)。ほぼ丸々3周、踏み合いの展開となるが、脇本が最後は力負け。敗者復活戦へと回った。
敗者復活戦の相手はアズジルハスニ・アワン(マレーシア)とジェイソン・ケニー(イギリス)の2人。ラスト2周の時点では、脇本とケニーが張り合ったが、ラスト1周のバック側でアワンとケニーに先を行かれ、さらにケニーが先行してフィニッシュ。
アワンと脇本はともにここで敗退が決まり、脇本は観客席に一礼をして去った。明後日からは本命の男子ケイリンが控えている。
結局、明日行われる準決勝へと勝ち上がったのは、予選タイム1位~3位と5位の実力者たち。
奇をてらうような走りというよりは、冷静に相手を見ながら余裕を持って合わせに行ける圧倒的な実力を持つジェフリー・ホーフランドとハリー・ラブレイセンのオランダ人2人は一度も負けを喫することなく、準決勝へとコマを進める。
そして、予選TTでもこの二人に次ぐ記録を出していたジャック・カーリン(イギリス)も危なげない走りで最後の4人へ名前を連ねる。
準々決勝で2回、ニコラス・ポールに負けたデニス・ドミトリエフ(ロシア)だったがポールの失格判定により2回目はドミトリエフの勝利とカウント。ドミトリエフは、ポールとの3戦目をしっかりと勝ちきり、準決勝へと進む。
明日の準決勝は、まず第1ヒートはホーフランド対ドミトリエフの勝負。第2ヒートはラブレイセン対カーリンの勝負となり、その先に頂上決戦となる決勝も同日行われる。
昨年の世界選手権スプリント決勝はオランダ対決となったが、今回は果たしてどうなるだろうか。
女子ケイリン
上位4人が準決勝へと勝ち上がる準々決勝。
リー・ワイジー(香港)とエマ・ヒンツェ(ドイツ)を含んだ第1ヒートでは、ローリンヌ・ヴァンリーセン(オランダ)とケイティ・マーチャント(イギリス)が最終周回の第2コーナーで落車。マーチャントは立ち上がり、完走したが、ヴァンリーセンは倒れたまま動かず、意識を失った状態で救急搬送されてしまった。
勝ったのはワイジー。ヒンツェも勝ち上がった。
第2ヒートでは、シャネ・ブラスペニンクス(オランダ)が独走で圧倒勝利を見せつけた。同じヒートで走ったリーソフィー・フリードリッヒ(ドイツ)は、好調な走りを見せていたが、ここでまさかの敗退となった。
第3ヒートに小林は登場。小林は誘導が外れてからも良い位置で展開するが、今大会、非常に積極的な走りを見せているケルシー・ミッチェル(カナダ)が先行に入ると、中国、オーストラリアが追い、小林は最後尾となってしまう。その配置のままラスト1周を走り切り、追い抜くことができなかった小林は、上位4人までに入ることができず、準々決勝での敗退が決まってしまった。
準決勝は、2つのヒートに分けられ、それぞれのヒートでの上位3人が決勝へと勝ち上がる。
結局決勝には、優勝候補と目されていたドイツ勢は一人も入らず、オランダ1人、カナダ2人、ウクライナ2人、ニュージーランド1人という構成となった。
最初に攻めに転じたのは、アグレッシブな勝負姿勢が光るカナダのミッチェルと1回戦から逃げ切り勝利を見せているオレナ・スタリコバ(ウクライナ)。
しかし、ミッチェルの後ろに位置したオランダのブラスペニンクスは、戦況を最も理解していた。ラスト1周に入る直前まで先頭に出ずに待ち、ラスト1周に入るタイミングで完全に前に出たブラスペニンクスは、他を寄せ付けずにラスト1周を踏み込んでいく。
後ろからは、エレッセ・アンドリューズ(ニュージーランド)が追うが、横に並ぶこともできない。圧倒的なほどの力を見せつけたブラスペニンクスが、東京オリンピックの女子ケイリンを制した。
女子ケイリン リザルト
金メダル シャネ・ブラスペニンクス(オランダ) 10.622秒(200mタイム)
銀メダル エレッセ・アンドリューズ(ニュージーランド) +0.061秒
銅メダル ローリーヌ・ジェネスト(カナダ) +0.148秒
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16位 小林優香(日本)