【東京オリンピック トラック競技最終日】日本人女子初!梶原悠未が女子オムニアムで銀メダル獲得!
目次
トラック競技も今日が最終日。ロードレースに始まった16日間、MTB、ロードTT、BMXレーシング、BMXフリースタイル、そして最後のトラック競技で、多くの人が目標と置いた東京オリンピックが終わりを迎える。
昨日までの自転車競技で日本はメダルを獲得していない。最終日、有終の美を飾れるかどうか。
トラック競技最終日は、10時より、
・女子オムニアム決勝(スクラッチ、テンポ、エリミネーション、ポイント)
・女子スプリント準決勝、決勝
・男子ケイリン準々決勝、準決勝、決勝
の3種目が行われた。
女子スプリント
3日目となる女子スプリント。今日が最終日となる。まずは準決勝が行われた。
第1ヒート、オレーナ・スタリコバ(ウクライナ)とリー・ワイジー(香港)の1本目。ワイジーがラスト1周を先行すると、昨日と同様に最後のストレートでスタリコバを差し切って、1本目を取った。
2本目、スタリコバが先行、最終周回でワイジーが迫るが、スタリコバは寄せ付けないまま、2本目を取り、決勝へと進んだ。
第2ヒートでは、エマ・ヒンツェ(ドイツ)対ケルシー・ミッチェル(カナダ)。ラスト2ラップの時点で先行したヒンツェだったが、ラスト1周のバック側でミッチェルが追い込みをかけ、ヒンツェをかわして先にフィニッシュへと飛び込んだ。
2本目は、ラスト2周で高いところから一気にかけたヒンツェにミッチェルはつくことができず、ヒンツェが取った。
3本目はミッチェルを先に行かせる形を取ったヒンツェ。予選タイムでヒンツェを上回るミッチェルが先にかけるとヒンツェは追うことができず、ミッチェルが3本目を取り、決勝進出を決めた。
これで優勝候補とされていたヒンツェとワイジーは3位決定戦に回ることとなった。
3位決定戦1本目は、ワイジーとヒンツェがゆっくりと相手を見ながらスタートした1本目。残り1周で一気にワイジーが加速し、ヒンツェは付けないまま、1本目をワイジーが取った。
2本目は、ラスト2ラップで、ヒンツェを前に出したワイジーが後ろから捲りに行く。ベテランのワイジーがラスト1周のバック側で一気にヒンツェを抜くと、そのままフィニッシュへと飛び込み、笑顔を見せた。ワイジーは銅メダルを獲得した。
優勝候補とは目されていなかった二人が金メダルを争う決勝戦1本目。ミッチェルが先行し、スタリコバが追うが、先ほどのように捲り切ることはできず。ミッチェルが1本目を制する。
2本目もミッチェルが先行。やはりスタリコバが追いすがるが、世界記録を持つミッチェルの先行の粘りが勝ち、2本先取で初めての金メダルを獲得した。
今回女子スプリントで優勝したミッチェルは、2017年、自国カナダのトロントで行われたワットバイクでのトライアウトに参加。そこで基準をクリアし、ナショナルチーム入りを果たしたという。昨年の世界選手権スプリントでは4位に入っている。
女子スプリントでの決勝だけでなく、女子ケイリンにおいても決勝戦に2人ずつ進出させたカナダとウクライナだが、これまでの世界大会では表彰台に乗ることはあったものの、優勝レベルの成績は残していなかった。
ドイツやオランダだけでなく、新たな大きい勢力としてこれからさらなる活躍を見せてくれるかもしれない。
女子スプリント 決勝リザルト
金メダル ケルシー・ミッチェル(カナダ)
銀メダル オレーナ・スタリコバ(ウクライナ)
銅メダル リー・ワイジー(香港)
・
14位 小林優香(日本)
男子ケイリン
昨日に続いて行われた男子ケイリンの準々決勝。日本の新田祐大、脇本雄太ともに1回戦を1位通過し、決勝そして金メダルへ向けた戦いへ挑む。
6人中4人が準決勝へと進出する準々決勝。
新田が走る第1ヒートは、またしてもハリー・ラブレイセン(オランダ)やジェイソン・ケニー(イギリス)などが走る厳しいメンバーでの組となった。
1回戦と同様に最も内側からのスタートとなった新田は、スタートから誘導の真後ろ、1番手をとる。
マシュー・リチャードソン(オーストラリア)とラブレイセンが先に仕掛け、新田は3番手でラスト2周に入る。ラスト1周に入る頃、さらに後方から一気にケニー、ケヴィン・キンテロチャヴァッロ(コロンビア)、ライアン・ヘラル(フランス)が加速し、3人が先行する形に。最後尾に追いやられた新田はここで敗れ、東京オリンピックでの戦いを終えた。
第2ヒートは、200mTTで世界記録を持つニコラス・ポールが先頭で後ろを突き放す形で先着フィニッシュ。後ろからはジャック・カーリン(イギリス)、ジャリル・チョンエンファ(スリナム)、マキシミリアン・レヴィ(ドイツ)が準決勝進出を決めた。
脇本が登場した第3ヒート。スタートし、4番手に位置した脇本。最後尾には昨日も積極的なレースを見せたアズジルハスニ・アワン(マレーシア)が控える。
ラスト2周でアワンが先に仕掛けると、その後脇本も加速。ラスト1周で出切った脇本が持ち味である徹底先行を見せ、トップフィニッシュで準決勝へと駒を進めた。
次の準決勝。
第1ヒートは、混戦となる中、マシュー・グレーツァー(オーストラリア)とケニー、ジャリル・チョンエンファ(スリナム)が勝ち上がった。
脇本が出走した第2ヒートは、ほぼ全員が優勝候補と言えるような強豪ばかりのメンツが揃った。
スタートでは脇本は先頭を取った。誘導が待避後、ラスト2周で脇本の後ろからマキシミリアン・レヴィ(ドイツ)が先に仕掛け、その後ろに脇本はつく。しかし後ろからラブレイセンやアワンなどが外側を固め、脇本は踏んで行ける場所を無くしてしまう。
しかもラブレイセンの後輪に前輪をかすめ、バランスを崩しかけ、重心を取り戻したものの、追いつくには距離が短すぎた。脇本の前を行った集団からアワンが先着。脇本は5着となり、決勝進出を逃した。脇本は順位決定戦へと回ることになった。
順位決定戦が東京オリンピック最後のレースとなった脇本。男子スプリントでは3位に入ったスピードのあるジャック・カーリン(イギリス)もメンバーにいる中で、脇本の強みを全面に出したレース展開となった。
初手、一番手を取った脇本。誘導が外れ、先頭に出た脇本は、しばらく牽制しながらも後続が誰も仕掛けないのを確認すると、そのまま自らが加速。ラスト2周を徹底的に先行したまま逃げ切り、先頭でフィニッシュラインを切った。脇本は7位という結果でこの東京オリンピックでのレースを終えた。
そして最後の男子ケイリン決勝。メンバーは、ジャリル・チョンエンファ(スリナム)、アズジルハスニ・アワン(マレーシア)、ハリー・ラブレイセン(オランダ)、ジェイソン・ケニー(イギリス)、マシュー・グレーツァー(オーストラリア)、マキシミリアン・レヴィ(ドイツ)の強者6人。
スタートして、先頭はケニー。グレーツァーがその後ろを走る。
ラスト3ラップ、誘導退避とともに誰もが予想外だったケニーが一人早駆け。ケニーの後ろを走ったグレーツァーが後ろの仕掛けも気にしたことで踏み止まり、ケニーは後続との差を一気にほぼ半周ほどあけた。ラスト2周に入ってもスピードが落ちないままケニーは逃げ続け、後続からは世界王者のラブレイセンも出てくるが差が縮まらないままラスト1周に入る。
バック側でも、最終コーナーでも詰めることはできず、ほぼ半周の差を保ち、ケニーが先頭でフィニッシュラインを切った。ケニーはまたしてもオリンピックで勝利を収め、これで合計7つ目の金メダルを手にすることとなった。
後続からはラブレイセンとアワンが抜け、ラブレイセンを差したアワンが2位。今大会3つ目の金メダルを狙ったラブレイセンは3位で銅メダルを獲得した。
男子ケイリン 決勝リザルト
金メダル ジェイソン・ケニー(イギリス)
銀メダル アズジルハスニ・アワン(マレーシア)
銅メダル ハリー・ラブレイセン(オランダ)
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7位 脇本雄太(日本)
16位 新田祐大(日本)
女子オムニアム
・スクラッチレース
マディソンでは、ローラ・ケニー(イギリス)やキルスティン・ウィルド(オランダ)の強さが目立ったがオムニアムではどうなるか。日本からは女子オムニアム現世界チャンピオンの梶原悠未が金メダルを狙って出場。21カ国、21人の選手が出走した。
まず30周回で争われたスクラッチレース。マディソンよりかははるかに落ち着いたペースでスタートし、周回をこなしていく。飛び出しも特になく、先頭交代を順番に繰り返していく。
ラスト10周になると、位置取りのための牽制が始まる。ラスト5周、ケニーやウィルドが前方に位置し、徐々にスピードが上がり始めた。
しかし、スピードが上がり切ったラスト2ラップ。集団前方に位置したエリサ・バルサモ(イタリア)がバランスを崩して転倒すると、他8人が巻き込まれる大きな落車が発生。
梶原はその前を走っており、難を逃れたが、優勝候補のケニーなど、多くの選手が巻き込まれた。
落車を逃れた選手たちがそのまま最終ラップに突入。最終コーナーをトップで通過したアネット・エドンモンソン(オーストラリア)を梶原が捲り、さらに外側からジェニファー・バレンテ(アメリカ)が伸びを見せてトップフィニッシュ。梶原は2着でのフィニッシュとなった。
スクラッチレース終了時ランキング
1位 ジェニファー・バレンテ(アメリカ) 40pts
2位 梶原悠未(日本) 38pts
3位 アネット・エドンモンソン(オーストラリア) 36pts
4位 アニータイヴォンヌ・ステンベルグ(ノルウェー) 34pts
5位 キルスティン・ウィルド(オランダ) 32pts
・テンポレース
スクラッチレースでの終盤の落車で9人がDNF扱いとなったが、ポイントは最終完走者と同ポイントがDNFの選手たちにも加算された。
7.5km、30ラップで争われたテンポレースでは、先ほど落車したエリサ・バルサモ(イタリア)とクララ・コッポーニ(フランス)が1周目のポイントを前に抜け出す。3周目でにローラ・ケニー(イギリス)が飛び出すと、一気に集団と差をつけ、5周目まで先頭で走る。
集団から梶原悠未やキルスティン・ウィルド(オランダ)を含む6人が追いつくと、順番に先頭交代をし始める。10周目には梶原が先頭交代のタイミングでポイントを取った。
後ろからさらに逃げグループに加わり、逃げグループは8人となる。逃げの8人は集団最後尾に追いつき、半分ほどの選手がマイナス20ポイントとなった。
ラップにより一つになった集団では、ラスト3周で集団からクララ・コッポーニ(フランス)が飛び出して先頭通過。そのままコッポーニがトップでフィニッシュし、集団にいた梶原は、全体の9番目でフィニッシュした。
梶原は2種目を終えて、2位のウィルドと70ポイントと同率の3位となった。1位はバレンテの76ポイント。
テンポレース終了時ランキング
1位 ジェニファー・バレンテ(アメリカ) 76pts
2位 キルスティン・ウィルド(オランダ) 70pts
3位 梶原悠未(日本) 70pts
4位 アニータイヴォンヌ・ステンベルグ(ノルウェー) 68pts
5位 ローラ・ケニー(イギリス) 56pts
・エリミネーション
2周回ごとに最後尾がエリミネートされるエリミネーションでは、梶原がほとんどの時間を行き場所を失うことの少ない外側で脚を使いながら走り、しっかりと終盤まで残る。
7回目のエリミネーション周回で内側で走り続けたローラ・ケニー(イギリス)がエリミネート。9回目には2位に位置するウィルドがまさかの脱落となった。
後方を走りながらも、前に踏める位置で走る梶原は残り続ける。この時点での首位、ジェニファー・バレンテ(アメリカ)が残り4人でエリミネートされ、梶原、クララ・コッポーニ(フランス)、アマリー・ディデリクセン(デンマーク)が残る。
次のエリミネーション周回、最後尾からホームストレートで梶原が2人を捲る。梶原はラスト2人の中に残った。最後はコッポーニが踏むと、梶原は次のために踏み止めて2位で38ポイントを加算した。
3種目を終えて、バレンテが110ポイントで首位をキープ。梶原が2ポイント差で2位につける。
3位はアニータイヴォンヌ・ステンベルグ(ノルウェー)が94ポイント。
エリミネーション終了時ランキング
1位 ジェニファー・バレンテ(アメリカ) 110pts
2位 梶原悠未(日本) 108pts
3位 アニータイヴォンヌ・ステンベルグ(ノルウェー) 94pts
4位 アマリー・ディデリクセン(デンマーク) 92pts
5位 キルスティン・ウィルド(オランダ) 90pts
・ポイントレース
10周ごとにポイント周回となるポイントレース。20km、80周回で争われた。
最初のポイント周回、ジェニファー・バレンテ(アメリカ)、キルスティン・ウィルド(オランダ)、ホーリー・エドモンドストン(ニュージーランド)、アニータイボンヌ・ステンベルグ(ノルウェー)が前に抜け出し、ポイントを加算する。そのまま4人が飛び出した状態だったが、ラスト68周回中には集団に吸収された。
次に飛び出したのは、アネット・エドモンソン(オーストラリア)とエリサ・バルサモ(イタリア)。しかし。ポイント周回を前にスピードを上げた集団に吸収される。集団先頭は、第一種目で落車したものの順位を5位まで上げてきたローラ・ケニー(イギリス)。そのまま2回目のポイント周回をケニーがトップ通過した。
残り57周でアマリー・ディデリクセン(デンマーク)が一人飛び出し、女子マディソンで銀メダルを取ったときと同じアグレッシブさを見せる。集団は牽制状態が続き、差をどんどんと広げていく。
デンマークが3回目のポイント周回をトップ通過し、集団はバレンテ、梶原、ケニーの順でポイントを獲得。結局、梶原はこれが最後のポイント加算となった。
この時点でアメリカが118ポイント、日本が110ポイント。4位につけているデンマークがラップを成功すると、全員を逆転することになる。
残り47周でウィルドが一気に加速し、単独でデンマークを追う。先頭は2人となった。しかし集団も追い、差を縮めていく。
4回目のポイント周回をオランダ、デンマークが先に取ると、逃げの2人は吸収され、集団がひとかたまりになった。
今度はラスト38周のところでエリサ・バルサモ(イタリア)が抜け出す。それに中国、フランス、ポルトガル、ロシア、イギリスがつくが、最初に抜け出したイタリアが遅れ、先頭は4人となった。
5回目のポイント周回、逃げの4人の中でイギリスのケニーがトップ通過。ポイントを重ねる。
一方、集団ではバレンテが落車し、いったん止まるがすぐに集団に復帰した。
逃げには3人が合流する。
6回目のポイント周回をニュージーランドのエドモンドソンがトップ通過し、2番手でイギリスがポイントを重ねる。
逃げていたグループをまた全て吸収すると、最終盤を狙って見合った集団はスピードが緩む。そのタイミングで一度オーストラリアが加速するがすぐに集団は一つにまとまった。
フィニッシュを除く最後のポイント周回を前に集団はスピードを上げる。先頭はウィルド。二番手はデンマーク。
スピードが上がる中、ラスト9周のところで梶原がウィルドの後輪に前輪がぶつかり落車してしまう。落ち着いて対処し、ラスト6周のところで梶原は復帰した。
ラスト4周、さらにスピードが上がる。梶原は集団前方に位置。
そしてラスト1周、スプリントでケニーがトップ、バレンテ、ウィルドの順でフィニッシュ。埋もれた梶原は最終スプリントに参加することはできなかったが、集団11位でフィニッシュ。総合ポイントも2位の座を守り切った。
スクラッチから首位を守り切って優勝を決めたバレンテは、バンクでアメリカ国旗を掲げながら嬉し涙を見せた。
梶原は銀メダル獲得。会場の拍手に応え、手を振りつつ、これまで一緒に戦ってきた母がいる観客席へと向かい、しっかりと握手を交わした。
今回の東京オリンピック、日本ナショナルチームとして自転車競技最終日に一つメダルを獲得することができた。
しかし梶原本人は、うれしさよりも悔しさが勝ったようで、テレビのインタビューには涙を流して答えた。
「メダルを獲れたことはとてもうれしいです。練習の成果がつながったかなと思います。でも、優勝を目標にここまで取り組んできたので、すごくすごく悔しいです」
そう語った。
ポイントレースでの落車については、
「一回リセットできたので、最後は運が味方してくれたと思います。一番近くで、私の母が、毎日練習から生活まで全部サポートしてくれて、一緒に頑張ってきたので、まずはメダルをとれてよかったです」と話す。
自転車競技を広めるために、と以前に話した梶原。ウェブでの配信ではなく、テレビで多くの人が見られる昼間の時間帯の放送でこのレースが日本全国に届けられた。そんななかで本人が切望した金メダルではないものの、メダルを獲得できたという功績はあまりにも大きい。
「日本人の女子選手がオムニアムで世界に通用するということを、しっかり日本の皆さんに走りで届けることができたと思うので、もっともっと競技人口が増えて、日本のレベルが上がって、世界で強豪国と呼ばれるようにみんなで一生懸命もっと頑張っていきたいと思います」
力強くカメラに向かって話した梶原。
日本人女子が自転車競技でメダルを獲得するのはこれが初。本人が幼少期から憧れたオリンピックでのこのメダルは、また誰かの憧れになっていくはずだ。
女子オムニアム
金メダル ジェニファー・バレンテ(アメリカ) 124pts
銀メダル 梶原悠未(日本) 110pts
銅メダル キルスティン・ウィルド(オランダ) 108pts