2021全日本トラック3日目 リザルト&コメントレポート

目次

12月12日(日)、静岡県・伊豆ベロドロームにて行われいる全日本選手権トラックレース3日目。
 
この日の競技は、短距離が男女ケイリン、中距離が女子スクラッチ、男子オムニアム、女子マディソンの4種目だった。それぞれの結果とコメントを振り返る。(男子オムニアムのみ別記事にて)
 

女子スクラッチ

2021全日本トラック3日目

出場者7人の中には東京オリンピックのマディソンでの代表となった中村妃智(JPF)の姿も

 
 
7人が出場した女子スクラッチ。誰かが抜け出してはスピードが上がり、捕まってはまたスピードが落ちるという展開が続く。
 
終盤には石上夢乃(鹿屋体育大学)や古山稀絵(チーム楽天Kドリームス)の飛び出しなどもあったが、ラスト2周で全て吸収された。
 
2021全日本トラック3日目

しっかりとスプリントで力を見せた鈴木が優勝

 
 
最終周回に入ると鈴木奈央(チーム楽天Kドリームス)と内野艶和(チーム楽天Kドリームス)の踏み合いに。
バックストレート側では鈴木が内野をかわしていく。
 
「展開的には逃げたい選手とスプリントにしたい選手とに分かれていて、私は最後のスプリントにかけていたので、逃げの展開を作らないようにして、最後自分の行けるところから行こうと思ってました。これまでの全日本選手権よりは、(アタックを)かける回数が多かったので、最後は脚も削れているなという感覚だったんですけど、しっかり自信を持って前に踏みました」と話した鈴木が、スピードで勝り、今大会3勝目を手にした。
 
「中距離種目の中でもうスクラッチが一番好きで、一番得意な種目なので、この種目でこのジャージをいただけてすごくうれしいです」と鈴木は笑顔を見せた。
 
2021全日本トラック3日目

優勝した鈴木が拍手に応える

2021全日本トラック3日目
 
女子スクラッチ リザルト
1位 鈴木奈央(チーム楽天Kドリームス)
2位 中村妃智(JPF)
3位 岩元杏奈(日本体育大学)
 

男子ケイリン

2021全日本トラック3日目

決勝に上がった6人がスタート

 
 
6組に分けて行われた予選では、それぞれ1着の選手のみが決勝へと進んだ。敗者復活戦の結果とを合わせて、決勝に残ったのは、小原佑太(ドリームシーカーレーシングチーム)、中野慎詞(ドリームシーカーレーシングチーム)、新山響平(チームブリヂストンサイクリング)、村田祐樹(富山県自転車競技連盟)、松井宏佑(チーム楽天Kドリームス)、荒川仁(千葉県自転車競技連盟)の6人となった。
 
前日のスプリントで優勝している寺崎浩平(チーム楽天Kドリームス)は、1/2決勝での太田海也(日本競輪選手養成所)の落車の煽りを受けて決勝に進むことはかなわず。7~12位決定戦へ回ることとなり、しっかりとそこでは勝ち星を得た。
 
2021全日本トラック3日目

ラスト2周で仕掛けた小原

 
 
決勝では、スタートから3番手に位置した小原がラスト2周の第一コーナーから勢い良く飛び出し、後続との差を徐々に広げていく。
 
小原はこの飛び出しについてこう考えていた。
「まずは力を出し切って、しっかり出し切った中で負けるなら仕方ないと思っていました。流れ的にあそこ(ラスト2周)しか多分動くところがなかったと思うので。いろんなレースを見ていても、残り2周から1周半が仕掛けどころで、結局そこで逃げ切るか、捲られるかのどっちかだったので、僕は中団(集団の真ん中あたりのこと)に入っていたので、もう先行しかないと思って」
 
2021全日本トラック3日目

後続との十分に差を開いていく

2021全日本トラック3日目

小原が先行したままフィニッシュ

 
 
後ろからは新山や中野が追うが、広がった差がなかなか縮まらない。最終周の最後のコーナーを回ってもまだ少し差を残したまま小原が先行で勝利を収めた。
 
外的要因が比較的少なく、勝っても負けても理由が一つずつ明確にできるスプリントの方が得意と話した小原だったが、今回はケイリンでの勝利。
「一つ一つの判断がすごく冷静にできたので、それが結果に繋がったんだと思います」と小原は振り返る。
 
以前、世界大会にて1kmのTTを1日に2本走らなければならない地獄を味わったことがあると言い、「それを経験してから、結局スプリントもケイリンも1本1本疲れて、痛みがあるんですけど、1kmTTに比べたらかわいいなって毎回思えたので(笑)。それで1本ごとにしっかり集中して出し切る気持ちが強くなりました」と話す。
 
2021全日本トラック3日目

勝利を決め、両手を大きく広げて拍手に応えた小原

 
 
東京オリンピックを終えて短距離男子は、新田祐大や脇本雄太、深谷知広がナショナルチームから抜け、パリを目指す若手選手の実力は拮抗している状態がうかがえる。まずはアジア選手権、ネーションズカップなど世界大会への選考がこの全日本から始まることとなるはずだ。
 
「まずは自分の知識だけじゃなくて、ジェイソン(・ニブレットコーチ)らの知識を入れて、それをしっかり自分の中で消化していくことが今後に繋がると思うので。しっかりそれを”普通”にできるようにしていくことで結果的にみんなより差がつくのかなとは思うので。まずは真面目に」と、小原は一つ一つの積み重ねの大切さを語った。
 
2021全日本トラック3日目
 
男子ケイリン リザルト
1位 小原佑太(ドリームシーカーレーシングチーム)
2位 中野慎詞(ドリームシーカーレーシングチーム)
3位 村田祐樹(富山県自転車競技連盟)
 

女子ケイリン

2021全日本トラック3日目

決勝一本勝負で行われた女子ケイリン

 
 
女子ケイリンは人数が少ないため、予選は行われず。決勝一本勝負となった。
メンバーは、小林優香(チーム楽天Kドリームス)、梅川風子(チーム楽天Kドリームス)、久米詩(JPCA)、昼田奈緒(同志社大学)、中村友紀子(京浜ピストクラブ)の5人。
 
前日のスプリントの結果やこれまでの実績からすると、小林と梅川の一騎打ちが予想された。
 
2021全日本トラック3日目

小林が最初に仕掛けた

2021全日本トラック3日目

追走の梅川を振り切って差をつけたまま小林が先着してフィニッシュ

 
 
ラスト2周の途中で自ら仕掛けた小林がそのまま前に出切ると、久米と梅川が追いすがる。しかし差は開いたまま、後手を踏んでしまった梅川が単独で距離を詰めにかかるが、長い距離を踏むのが得意と話す小林がまさに本領発揮。差をつけたまま一発勝負を取り切った。
 
2021全日本トラック3日目

観客の拍手に手を振る小林

 
 
小林は、東京オリンピックまでで競技を引退と表明していたが、東京オリンピックを走り、実際の表彰台を自身の目で見て、強い気持ちが芽生えた。
 
「やっぱりこの3人の中に私は入りたいと思いましたし、この舞台で成功したいっていう強い思いが生まれたので、もう一度(競技でオリンピック)目指すことに決めました」
 
東京オリンピックが終わってからは一度しっかり休んだ。そして競技復帰を表明してから、この全日本までに向かう気持ちをこう明かした。
 
「オリンピックが終わって一旦、3カ月は地元の久留米の方に帰って、日本の競輪の方の練習をしていたので、このドーム(伊豆ベロドローム)に戻ってきたのは11月初旬くらいです。その中で1カ月後に迫ったナショナル選手権をまずは楽しもうと考えていたんですけど、やっぱり昨日(スプリント)2位というのがすごく悔しくて。だったら、しっかりこのケイリンを取りたいなっていう思いで今日は入ってきたので。それが今日達成できて良かったです」
 
2021全日本トラック3日目
 
女子ケイリン リザルト
1位 小林優香(チーム楽天Kドリームス)
2位 梅川風子(チーム楽天Kドリームス)
3位 久米詩(JPCA)
 

女子マディソン

2021全日本トラック3日目

チーム楽天Kドリームスの鈴木奈央&内野艶和ペアが交代を行う

 
 
二人一組で交代しながらポイント周回でのポイント獲得を競うマディソン。
 
女子マディソンは、チーム楽天Kドリームスの鈴木奈央&内野艶和ペア、日本体育大学の中村妃智&古山稀絵ペア、日本学生選抜の岩本杏奈&石田唯ペアの3組のみで行われた。男子オムニアムの後に行われたこともあり、トラックが広く感じるような人数でのレースとなった。
 
2021全日本トラック3日目

日本体育大学の中村妃智&古山稀絵ペア

 
 
レース前に中村が「ライバルになるのは、鈴木選手と内野選手のスプリントが強い2人になるので、その中で私達はスプリントというよりもロングスプリントで戦うタイプの2人で、どうにか2人の意表をつくといいますか、良いタイミングで2人で掛けて、ポイントを重ねて1位を目指して走っていきたいと思います」と話していたのに対し、鈴木はレース後、「自分たち2人は逃げる展開っていうよりはスプリントの展開が得意なので、逃げさせないようにしてスプリント勝負にしたいという感じで考えてました」と話した。
 
2021全日本トラック3日目

集団は3人という少人数

 
 
それぞれの思惑通り、中村や古山の日体大が飛び出そうとアタックを繰り出すが、楽天Kドリームスの2人がすぐに対応した。
マディソンの醍醐味でもある交代に関しては、3組しか出場していない分、スペースは十分すぎるほどにあった。
 
「ネーションズカップとかに比べると交代はしやすいんですけど、人がいないので(笑)。逃げたい人もいれば、いろいろ各自の考えがあってちょっと難しかったんですが、しっかり交代も失敗なくできて、スプリントもしっかりできたので、良かったかなと思います」と鈴木は話した。
 
ペアの内野も「ポイント周回はしっかり5点を取るということを意識して走りました。まずは交代をミスせずに最後まで走り切れたので良かったと思います」と語った。
 
選手たちは走り通しの4日間。疲労も溜まってきていた様子だ。4枚目のナショナルチャンピオンジャージを獲得した鈴木は、「明日でやっと終わります。長かった(笑)」と笑ってみせた。
 
2021全日本トラック3日目
 
女子マディソン リザルト
1位 チーム楽天Kドリームス(鈴木奈央、内野艶和)  40pts
2位 日本体育大学(中村妃智、古山稀絵) 26pts
3位 日本学生選抜(岩本杏奈、石田唯) 24pts
 
 

パラサイクリング結果

2021全日本トラック3日目
 
パラサイクリング 500mTT リザルト※係数タイム
1位 杉浦佳子(VC福岡エリート)40秒218
2位 藤井美穂(楽天ソシオビジネス)41秒837
 
 
 
2021全日本トラック3日目
 
パラサイクリング 1kmTT リザルト ※係数タイム
1位 川本翔大(大和産業)1分4秒254
2位 藤田征樹(藤建設)1分8秒036
3位 沼野康仁(use lab.VC SPLENDOR)1分24秒654
 
 
日本自転車競技連盟(TRACK)
https://jcf.or.jp/track/