2021全日本トラック4日目 リザルト&コメントレポート

目次

12月13日(月)、静岡県・伊豆ベロドロームで行われていた2021全日本選手権トラックレースも最終日を迎えた。最終日は、短距離&中距離のタイム系競技と男女それぞれのポイントレースが最後に行われた。4日間走り通しの選手たちが多く、さすがに疲労も見えた部分もあったが、それぞれが出し切った結果を残した。
 

女子個人パシュート

2021全日本トラック4日目

スタートする古山

2021全日本トラック4日目

五味田をパスしてもタイム計測が続いた予選の古山

 
 
3kmを一人で走る女子個人パシュートには3人がエントリー。予選でタイム計測をし、上位2人が決勝へと進む。
 
予選では、ナショナルチームで活動する古山稀絵(チーム楽天Kドリームス)がホーム側からスタートし、バック側から同時にスタートした五味田奈緒(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)を途中でパスしつつ、3分41秒216というタイムでトップ通過。
 
 
2021全日本トラック4日目

決勝では早々に太郎田を追い抜いた古山

 
 
決勝では、太郎田水桜(法政大学)との一騎打ちとなったが、「この後もポイントレースが残っているので、早々に仕留めてやろうと思って前半から積極的にいきました」と、早々に古山が太郎田を追い抜き、勝利を確定させた。
 
「予選でもう少しタイムを狙っていたので、タイムが出なかったのは少し残念なんですけれども、この全日本チャンピオンジャージを着たいというのがあったので、それは叶って良かったです」古山はこう笑顔で話した。
 
 
2021全日本トラック4日目
 
女子3㎞個人パシュート リザルト
1位 古山稀絵(チーム楽天Kドリームス) 追い抜き勝ち
2位 太郎田水桜(法政大学)
3位 五味田奈緒(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)
 

男子4km個人パシュート

4kmを走る個人パシュートには、19人の選手が出走。予選はタイム計測ではあるが、ホーム側とバック側から2人同時にスタートし、追い抜いてもそのままタイム計測が続く方式で行われた。上位4人が決勝と3-4位決定戦へと勝ち上がる。
 
今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)は、3カ月前の世界選手権のこの競技での日本記録(4分14秒751)を更新したばかりということで、注目が集まった。
 
 
2021全日本トラック4日目

松田祥位(エカーズ)

 
 
まず5組目の出走となった松田祥位(エカーズ)がコンパクトなフォームで、1km1分7秒の最速ラップタイムを刻み、ここまでで最速の4分24秒138というタイムでフィニッシュ。
 
コロナ禍のヨーロッパから帰国した松田は一時期、自転車自体を休んでいたが、今回の全日本トラックに向けて、9月から練習を再開。ロードのTTを得意とし、今大会でも個人パシュートをメインとして出場した。
全日本ロードの時点では、「(4分)15秒ぐらいを目標にしていきたいですね。そうするとやっぱりロードの方でも融通効かせながら走れるので。(トラックでは)ナショナルチームを目指してまた頑張りたいです」と話していた。
 
 
2021全日本トラック4日目

安達光伸(朝日大学)

 
 
松田の記録を更新したのは、大学2年生の安達光伸(朝日大学)。3kmまではほぼ松田と変わらないタイムを刻んでいたが、ラスト1kmで上回り、4分20秒798でフィニッシュした。
ずっと早いタイムをキープできて、最後1kmも上げることができたので、結構良かったと思います」と安達は振り返る。
 
ナショナルのBチームにも所属する安達だが、3~4カ月前に日本競輪選手養成所のJKA250バンクで計った4分28秒台が自己ベストだった。理由についてただ、「調子が良かったです」と穏やかに笑ったが、そのスパンで8秒も更新できるというのは末恐ろしい存在には違いない。安達もまたパリを目指すと話す。
でもレースの方がまだ苦手なんで、そこで上位に入れたら自信もつくと思うので、まだそこは足りないかなと思っています
 
 
2021全日本トラック4日目

今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)

 
 
9組目に登場したのは、日本記録保持者の今村。序盤は他の上位選手と変わらないタイムで刻んだが、半分を過ぎたところでスピードアップ。最後まで踏み切り、4分17秒368というタイムでフィニッシュした。狙っていたタイムには届かなかったと今村は話す。
 
「日本記録までとはいかなくても、4分15~16秒は出るかなと思ってたんですけど、コーチも朝、(4分)20秒ぐらいじゃないかと言っていて。20秒ぐらいだともしかしたら負けかねないなと思ってたんで、予選18秒ぐらいかなってちょうど伝えていました」
 
 
2021全日本トラック4日目

序盤に突っ込み気味で入った山本だったがタイムが伸びず、中盤に近谷に追い抜かれる

 
 
最後の組では、前回王者で現在は競輪選手を目指すべく日本競輪選手養成所に入所中に近谷涼(チームブリヂストンサイクリング)が走った。前回大会の予選では4分27秒台で走った近谷だったが、むしろその記録を上回り、4分24秒674というタイムで走り切った(前回大会は250mバンクではなく333mバンク)。
 
全ての選手が予選を走り切り、優勝争いは今村と安達、3-4位決定戦へは松田と近谷が進んだ。
 
 
2021全日本トラック4日目

中距離のトレーニングはしていないはずの近谷だったが、4分24秒台で走り切った

2021全日本トラック4日目

松田がわずかな差で勝利

 
 
3-4位決定戦では、1km時点ではほぼ同タイム。2km~3kmで1、2秒松田が先行する形となるが、最後の1kmで近谷が猛追。同じ4分24秒台でわずか0.4秒、松田が先着し、表彰台を射止めた。
 
 
2021全日本トラック4日目
 
 
今村と安達の決勝では、先にリードを奪ったのは安達だった。
「(安達は)結構ゆっくり入るようなタイプの選手なんで、(最初からタイムを出してきて)びっくりしたんですけど。そういう脚質の選手が突っ込むときって、やっぱり最後垂れてくるんで、その辺は(自分が)キープしていれば何とか返せるかなと思ってたんですけど、結構気持ちでちょっと負けてたかもしれないです」と話す今村も、この連戦4日目の疲れがさすがに出てきており、序盤はもう「あれ以上上がらなかった」。
 
「残り5周では絶対(ペースを)上げようと思っていました」と言うように、3km時点でわずか0.1秒逆転すると、その差を広げていく。フィニッシュでは2秒の差をつけて今村が勝利を決めた。
 
 
2021全日本トラック4日目

今村が後半にペースを上げる

2021全日本トラック4日目

観客の拍手に応える今村

 
 
「決勝はもはや体力がなくて、ギリギリ勝つという形になってしまいました」と話した今村。さすがに連日の疲れが残っていた。それでもさらに上を目指す。
 
連日のレースの中でもしっかりタイムを出せることが僕の強さだと思うので、もっともっとタイム伸ばしていかないとですし、披露した中でもいいタイムを皆さんが興奮してくださるようなタイムを更新します
 
 
2021全日本トラック4日目
 
男子4km個人パシュート リザルト
1位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 4分20秒745
2位 安達光伸(チームブリヂストンサイクリング) 4分22秒919
3位 松田祥位(エカーズ) 4分24秒539
 

女子500mTT

2021全日本トラック4日目

競技への参加は2回目と話した久米が優勝

 
 
女子500mTTに参戦したのは、中西美央(鹿屋体育大学)と久米詩(JPCA)の2人のみ。この競技では日本記録も大会記録も、今回バンク内で審判をしていた前田佳代乃が保持したままだ。
 
優勝を決めた久米は、「まだ課題がたくさんあるので、これから一生懸命練習したいと思います」と話した。また、今大会通しての感想を「競技に参加すること自体が2回目とかだったので、ちょっとわからないことも多かったんですが、楽しめました。連日たくさんのお客さんが入ってくださって楽しめたので、またこれからも応援お願いします」と話した。
 
 
2021全日本トラック4日目
 
女子500m TT リザルト
1位 久米 詩(JPCA) 37秒371
2位 中西美央(鹿屋体育大学) 37秒556
 

男子1kmTT

250m×4周でいかに全力を出し切れるかが勝負の鍵を握る1kmTT。出し切った暁には、視界が真っ白になり、激痛に襲われ、自身で自転車を降りることすらままならなくなってしまうようなまさに人間の限界を競う種目でもある。
 
東京オリンピックでの代表である前回大会王者の新田祐大(ドリームシーカーレーシングチーム)もチームスプリントに続いてこの競技にも参戦した。
 
 
2021全日本トラック4日目

まずナショナルチームの新山がトップタイムを出す

 
 
19人の出場選手の中で、1分2秒台~6秒台のタイムが多く出る中で、1分1秒621というタイムを出したのは、6組目に走った新山響平(チームブリヂストンサイクリング)。
 
続いて、9組目出走の深谷知広(ドリームシーカーレーシングチーム)が250m(18秒704)、500m時点での最速タイム31秒859を出したが、後半でやや失速。1分1秒966というタイムで走り切った。
 
 
2021全日本トラック4日目

小原が昨年の新田の大会新記録を上回る走り

 
 
その後、11組目走者の小原佑太(ドリームシーカーレーシングチーム)が後半にタイムを落とさず、昨年の新田のタイム(1分1秒551)を上回る1分0秒815という大会新記録を叩き出した。
 
小原 周回ごとのラップタイム
1周目ラップタイム:19秒156
2周目ラップタイム:13秒262(2周完了時タイム:32秒418)
3周目ラップタイム:13秒698(3周完了時タイム:46秒116)
4周目ラップタイム:14秒699(4周完了時タイム:1分0秒815)
 
 
2021全日本トラック4日目

スタートする新田

 
 
そして最終走者の新田。
どのぐらいのタイムを出して、どういう感じで走れるか自分の中である程度イメージはしていたので、1分2秒ぐらいのタイムを出している選手が走っているときはすごく安心して準備してたんですけど、新山が1分1秒走ったあたりからちょっとドキドキしてきました」と新田は振り返る。
 
 
2021全日本トラック4日目

空気抵抗を少なくすべく、なるべく前面投影面積を減らそうと小さくなって走る新田

 
 
1周目のラップタイムを深谷の次に早いタイムで通過し、そこから猛プッシュ。昨年よりも踏み込めている感じがなく、残り1周半から力が入らなくなったと話した新田だが、観客のざわつきを聞き、タイムが出ているのではと感じた。
 
前々走者の小原が1分0秒でざわついていたので、それ以上のタイムが出てなかったらざわつかないだろうなと。これはタイム出てるなと思って。もう力は入らないので、なるべく風の抵抗を受けないように縮こまっていました
 
エアロフォームを気にしつつ最後まで踏み切った記録は、1分0秒107。小原を記録を上回り、さらに大会記録を更新しての優勝となった。
 
新田 周回ごとのラップタイム
1周目ラップタイム:18秒896
2周目ラップタイム:13秒039(2周完了時タイム:31秒935)
3周目ラップタイム:13秒480(3周完了時タイム:45秒415)
4周目ラップタイム:14秒692(4周完了時タイム:1分0秒107)
 
 
2021全日本トラック4日目

自身の大会記録、そして小原の記録も破って優勝を決めた新田

 
 
高地で中川誠一郎が2013年に出している日本記録には、わずか0.09秒届かないタイムだったが、新田自身は日本記録更新というところはあまり考えておらず、「どれだけ苦しいところまで追い込めるか」を重視した。
今回は、前回と異なり、脚の痛さよりも呼吸の苦しさが勝ったと話す。「全力ダッシュした後に口を抑えられる感じ」と新田は表現していた。
 
新田は、年齢を重ねてもまだ進化できるということを自らこの1km TTで証明したことになる。
今のナショナルチームのメンバーと比べると10歳ぐらい年上で、そんな中でも進化できるっていうのは証明できてますし、あとは、年齢を積み重ねたことによって得られる経験という部分が結構あって。単純にタイムも若いから速いとかではなくて、走り方とか全てが詰め込まれてる種目だと思うので
 
 
2021全日本トラック4日目

表彰前に話す新田と小原

 
 
東京オリンピックを終えた後もナショナルチームと同じメニューでトレーニングを続ける新田。自身のやるべきことについてこう語る。
 
弱くなっては駄目だと。居続けることでただ古株という感じになってもしょうがないんで、すごく刺激をもらえる人だなと思ってもらえるような人になっていることが重要だと思います。(後輩たちに)抜かれる時っていうのは絶対来ると思うんですけど、抜かれた時に安心して次をバトンを渡せるというか、頑張ってこいと言えるような関係性になっていられれば。そういうふうになれるように僕は日々を頑張って過ごすことが必要かなと思います
 
オリンピックに魅せ続けられた新田は、新たな目標を携え、さらに先陣を切っていく。
 
 
2021全日本トラック4日目
 
男子1kmTT リザルト
1位 新田祐大(ドリームシーカーレーシングチーム) 1分0秒107
2位 小原佑太(ドリームシーカーレーシングチーム) 1分0秒815
3位 新山響平(チームブリヂストンサイクリング) 1分1秒621
 

女子ポイントレース

2021全日本トラック4日目

女子ポイントレースには6人が出場

 
 
6人が出場した女子ポイントレースは全80周で行われた。ポイントレースは、10周ごとに訪れるポイント周回で、1位通過に5ポイント、2位に3ポイント、3位に2ポイント、4位に1ポイントが与えられ、その総ポイント数で競う。
 
東京オリンピックでの代表、中村妃智(JPF)にとっての引退前ラストレースとなった。
 
 
2021全日本トラック4日目

鈴木、内野、古山がポイント周回に向けてスプリント

 
 
最初のスプリントポイントでは、今大会の個人種目ではスクラッチ、エリミネーション、オムニアムと勝利をさらった鈴木奈央(チーム楽天Kドリームス)が1着通過。
 
その後、ポイント周回を前にすると活性化する集団の中で、3回目以降のスプリントポイントを4回1着通過した内野艶和(チーム楽天Kドリームス)が23ポイントで首位に立ち、古山稀絵(チーム楽天Kドリームス)16ポイントで2番手につける。
倍のポイントがつくフィニッシュの着順で勝負が決まることに。
 
ラスト2周で上位勢が牽制する中、飛び出したのは前日の全日本シクロクロス女子エリートで優勝したばかりの渡部春雅(明治大学)。しかし、ラスト1周で集団が吸収すると、一気に鈴木が後方からスプリントをかけ、1着でフィニッシュした。2着には古山、3着には中村、4着には内野が入り、内野がポイント差を保ったままポイントレース優勝を決めた。
 
 
2021全日本トラック4日目

優勝した内野。今大会でようやく一番高いところに立った

 
 
何回もアタックがあって、走っている最中心折れそうにもなったんですが、最後まで諦めずに走り切れて良かったです」と内野は表彰台で話した。
さらに今後に向けて、「まだまだ課題が残るレースが多かったので、次の大会に向けてしっかり改善していきたいと思います」と語った。
 
 
2021全日本トラック4日目
 
女子ポイントレース リザルト
1位 内野艶和(チーム楽天Kドリームス) 25pts
2位 古山稀絵(チーム楽天Kドリームス) 22pts
3位 鈴木奈央(チーム楽天Kドリームス) 19pts
 

男子ポイントレース

この全日本トラック最終種目、120周、30kmで争われた男子ポイントレースには、15人が参戦した。
 
2日目に行われたスクラッチレースでも最後に飛び出し、中距離ヘッドコーチのクレイグ・グリフィンも注目した山下虎ノ亮(榛生昇陽高校)が仕掛けようとレース序盤から何度も動きを見せる。それにチームブリヂストンサイクリングのメンバーが被せるような形で、7人の逃げグループが形成された。7人の中にチームブリヂストンサイクリングは徳田優以外全員の5人を入れた。
 
 
2021全日本トラック4日目

単独で飛び出した山下。ブリヂストン勢が追いかける

 
 
7人の内の一人である橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)が最初の3つのポイント周回でトップ通過しつつ、7人のグループは、集団をラップ。ラップする直前には橋本が単独で一気に集団先頭に躍り出る。それには山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)がチェックに入り、さらに今村が追走をかける。そこで集団を引き連れ、一度全て吸収されると、今度は山下と中里仁(ラファサイクリングクラブ)が抜け出すが、中里が遅れ、山下が一人先行する形に。後ろはブリヂストン勢が追う。
 
 
2021全日本トラック4日目

山下をパスし、兒島が独走で先頭に出る

 
 
集団から一人飛び出した兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が一気に山下をパスしていくと、前日のオムニアムのポイントレース同様、兒島が単独先頭になったが、一度ポイント周回を単独先頭で通過すると、集団に吸収され、また一塊となった。
 
 
2021全日本トラック4日目

レース中盤、兒島、今村、山本、山下の4人が抜け出す

2021全日本トラック4日目

4人を追う橋本、河野、中里の3人

 
 
一度ペースが落ち着いたタイミングでまたしても橋本がかけるが、集団には逃してもらえず、ポイント周回前に吸収。この時点でポイントトップは今村、橋本と続く。
 
すると、兒島がまた一気にペースをあげ、今村、山本、山下がつき、4人の逃げグループが形成された。すでに2ラップされている選手たちは続々とレースを降ろされ、トラックを走る人数は7人まで減ったため、4人を追う集団は、橋本、河野、中里の3人という不利な状況。
 
 
2021全日本トラック4日目

兒島の抜け出しに今村がつく

 
 
勢いのついた4人がラップしたところで、今村が橋本を逆転し、ポイント首位に立った。獲得ポイント順に、山本、山下、橋本、兒島と続く。
次のポイント周回前に兒島が抜け出したのに今村、山本がつくと、その順でポイントを獲得。兒島が2位に上がる。
そのあとは今村の独壇場となった。10回目、11回目のポイントをトップで通過し、2位以降との差をさらに広げる。
 
最後にラップされた橋本がさらに仕掛けるが、その後ろから兒島が一気に抜き去ると、さらに集団から今村が合流。「1個前のポイント周回で、今村選手にポイントを取られてしまって、点数的には逆転はもう難しいなと思って。でもいい練習と思って。今村選手と最後まで踏み切りました」と兒島は振り返る。
 
2人が抜け出す形で最終ラップをまわり、今村が最後もトップでフィニッシュ。優勝を決めた。
 
 
2021全日本トラック4日目

トップでフィニッシュし、優勝した今村とそれを讃える兒島

 
 
3位争いは、その時点で同点だった高校生・山下と山本の着順で決まることとなり、先着した山本が意地で表彰台を確保した。
 
山本は、「ポイントレースだけ振り返れば、この順位はある程度良かったかなって思うこともありますけど、昨日オムニアム終わってから、ランナーズハイみたいになって、体がもう熱くなっちゃって、一睡もできない感じでここに来ていて。もう個抜き(個人パシュート)もグダグダだったんで、もう意地で、気持ちだけで走ってました」と話す。
 
それでもブリヂストン勢は全員が動きを見せ、積極的な脚の削り合いの展開となった。引きずられるだけだったと話した山本はこう前を向く。
兒島筆頭にどんどん、今村さんもどんどん強くなって。僕も置いていかれないようにしないと思って。でもそういう環境じゃないと上がっていくのが難しいと思うので、上も下もどっちも食えるように頑張っていくだけです
 
 
2021全日本トラック4日目

積極的な動きを見せた山下

 
 
男子ジュニアの強化指定選手として選出されている山下は、終始抜け出そうと動いていた。
「一人で逃げるのは得意としてたんで、エリートでは全然話にならなかったんですけど、自分の得意なところはちょっとは出たかなと思います」と話す。
 
レースの展開的には、ブリヂストンのメンバーと互角に渡り合っていたように思えるが、本人的には「全然互角ではなかったですね。全然自分の力が劣ってたんで」と、実力不足を感じていた。
 
山下は、表彰台を狙うというよりは、自身の立ち位置を明確にしたかったようだ。
「今自分の立場がどれぐらいあるのかっていうのと、自分がどれだけ通用するかっていうのを試したかったので、優勝とか入賞は目指さず、積極的に自分の立場を知るために走ったのがこの結果です
ナショナルチームから合宿への誘いも受けた山下。今後どう化けていくかが楽しみな選手だ。
 
オムニアムでは優勝、ポイントレースでは2位と、躍進を見せた兒島も山下の走りを評価していた。
「高校生の山下虎之亮くんが結構アグレッシブなレース運びをしていたので、すごい強いなと思いました。でもそんな中でもやっぱり高校生には負けられないなっていう意地があって。そこで自分も負けじとアタック合戦に加わって、どんどん人数を減らしつつ、残ったメンバーで戦えるかなと思ったんですけど。でもその中でも山下くんが残ってたので、本当にこれからが楽しみだなと思います」
 
優勝した今村は、「もちろん勝ちたかったですし、最終種目なんで、しっかり脚使って、もう本当にトレーニングのつもりで踏みましたし、でもその中でもやっぱりスプリントできるところはして、どんどん前に前に行っていました。(最終周は)やっとゴール!終わった!って感じでした」と笑う。
 
4日間で7つの種目に出場した今村は、6つで優勝、全てで表彰台に乗った。
これまで、特にレース種目では窪木一茂や橋本英也の影に潜むことが多かったが、今回は前面に出て、レースを作る側となった今村。
 
前に比べると、タイムの面だったり自分の積み上げてきたものっていうのに少し自信を感じていたので、それをレースの内容だったり、脚を使わないといけないところで出せたと思います。やっぱりナショナルチームでやってるので、ここに来る選手たちの中ではある程度トップなので、そこは自信を持って戦ってきました
 
 
2021全日本トラック4日目

表彰台でコメントする今村

 
 
パリオリンピックを目指す今村。残り3年という時間はあっという間に過ぎるだろう。その中で世界選手権やオリンピックとなるとやはり世界で活躍するロード選手たちのスピードに太刀打ちできるような力が欲しいところだ。
 
僕も先輩たちと一緒にやってきて、僕もそこまでもう海外の人から見ればもう若手とかじゃないですし、経験も今いる若手の選手に比べれば多い方なんで、フィジカルでもそうですし、レースの展開でもやっぱりどんどん前に行かないといけないなっていうのは思ってます。それでもやっぱり英也さんだったり窪木さんはすごい強いので、その先輩方から刺激をもらいながら。やっぱりレース数が少ない中で海外に行くとどうしても差を感じるんで、国内にいてできること、やれることを探して、少しでも海外との差っていうのを詰めていかなければならないなとは思います
 
今大会で見せた今村の実力もこれまで積み重ねてきた結果の一つだ。パリまでの残り3年、個々の実力をしっかりと世界レベルで見極めながら、驕らずに、着実に成長していくほかない。
 
 
2021全日本トラック4日目
 
男子ポイントレース リザルト
1位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 69pts
2位 兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング) 52pts
3位 山本哲央(チームブリヂストンサイクリング) 35pts
 

パラサイクリング 個人パーシュート

2021全日本トラック4日目
 
パラサイクリング 女子3km個人パーシュート リザルト※係数タイム
1位 杉浦佳子(VC福岡エリート) 4分5秒839(大会新記録)
2位 藤井美穂(楽天ソシオビジネス) 4分28秒秒910
 
 
 
2021全日本トラック4日目
パラサイクリング 男子3km個人パーシュート リザルト※係数タイム
1位 川本翔大(大和産業)  3分30秒733
2位 藤田征樹(藤建設) 3分38秒254
 
 
 
2021全日本トラック4日目
 
パラサイクリング 男子4㎞個人パーシュート リザルト※係数タイム
1位 沼野康仁(use lab.VC SPLENDOR) 6分11秒207
 
 
 
日本自転車競技連盟(TRACK)
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