KERINグランプリ2021 努力と模索、人間模様が渦巻く競輪の面白さ
目次
イメージを辿った勝利
2021年12月30日、頭に雲を被った富士山が見下ろす静岡競輪場で、感染対策のため5000人に絞られた観客を前に勝負が決した。
出場者9人全員が脚を使う展開の中、ラスト1周の第2コーナーを抜けた先で単独で飛び出したのはKEIRINグランプリ初出場となった古性優作。
古性が追ったのは、2012年にグランプリを制した同地区の先輩、村上義弘の影だった。
「村上さんが初めて優勝したときも、青の4番車で、単騎で勝ってたので、それのイメージだけ持って入ってきました」
村上のレースをまさにトレースしたかのようなタイミングで飛び出した古性は、「ゴールまでがもう本当に長く感じた」と話し、最後のフィニッシュラインで沈むことも覚悟したが、予想外に、むしろ誰も寄せ付けずに駆け抜けた。勝利を確信すると、すぐに右拳を突き上げて喜びをあらわにした。
競輪の魅力を伝える”第一歩”となる頂上決戦
競輪のレースの中でも最高峰であるKEIRINグランプリに出場できるのは、その年のグレードレースでも最も格式の高いGⅠレースを勝った選手、そして年間賞金ランキング上位者を合わせた9人である。
2021年グランプリの切符を手にしたのは、松浦悠士、郡司浩平、平原康多、古性優作、佐藤慎太郎、守澤太志、吉田拓矢、宿口陽一、清水裕友。
初出場となったのは、古性、吉田、宿口の3人のみで、それ以外の6人はグランプリの場を既に経験している。最多出場は、なんとグランプリ12回目の平原だ。
平原は2018年、同じく静岡競輪場で行われたグランプリの最終周回で落車し、自転車にうまく乗れないような状況ながらも多くの声援と拍手に後押しされ、再乗。一人、既に勝敗がついたゴールへと向かった。
「あれが僕の競輪人生の中で一番印象深いレースなので。うれしかったし悔しかったし、いろんな思いが本当に詰まったグランプリでした。またそこに帰ってきて、また勝負できるチャンスが来たんで、そこは頑張りたいですね」と事前に行われた前夜祭で平原は語っていた。
今回の出場者の中で最年長となる佐藤は、グランプリと他のレースとの違いをこう話す。
「グランプリっていうのは競輪に関わる人間全てが注目するレースだと思います。また、競輪で普段(車券を)買わなくてもグランプリだけは見ようかなっていう人も大勢いると思うんで、競輪に魅力を感じてもらう第一歩になるようなレースだと思うんですよね。なのでしっかり競輪の魅力を伝えられるような走りができればいいかなと思ってます」と話した。
競輪ではもちろんそれぞれが優勝を狙うが、地区ごとに「ライン」と呼ばれるチームで隊列を組む。今回のグランプリでは、清水、松浦の中国ライン、吉田、宿口、平原の関東ライン、郡司、佐藤、守澤の南関東&北日本ライン、そして単騎の古性と4つに分かれた。
トラックナショナルチームがもたらした”スピード競輪”の時代
近年、東京オリンピックやその先のパリオリンピックに向けてフィジカルもメンタルも磨きをかけたトラックナショナルチームに所属する競輪選手たちの活躍によって、競輪のレースの展開もこれまでと大きく形が変わってきている。「スピード競輪」と呼ばれ、いかにナショナルチームの選手たちのスピードに対応できるかが勝敗を分けることも増えてきた。
特に東京オリンピック代表の一人として世界と戦う力を身につけた脇本雄太への警戒は最大限に向けられていた。しかし、今年は脇本や新田祐大など、ナショナルチームに所属する選手がグランプリへの出場権を得ることはできなかった。
松浦は前年との違いをこう話す。
「レース展開とかも去年はやっぱり脇本さんありきの作戦だったんで。去年はもう本当に脇本さんに対して通用するのかどうかっていうところだけかなと思っていました。今年はかなり混戦になると思うので、レースの一瞬の判断というか、見極めがすごく大事だなと思ってます。
脇本さん、新田さんがいると、レースが単調になりがちというか、(彼らが脚を使う)その前に脚使ってしまったらもう立ち遅れてしまう。もう本当に、1回勝負できるかどうかっていうところなんですけど、今年は本当に何回も動けるような選手が自力(先行する選手のこと)なので、これが競輪というようなレースにはなりそうだなという雰囲気はしてます」
一方、同地区で松浦の相棒となった清水は、今回は賞金ランキングで選出され、4回目のグランプリ出場となった。清水は、グランプリ前夜祭の記者会見で「上位の選手とは差がある」と話していた。その理由について、2021年シーズンの結果とともに「今、スピード競輪で、レースのスピードは全体的に上がるので、そういうところでのスピードへの対応というのがまだまだできてないのかなと」と語っていた。
関東勢の結束
前年のグランプリでは他地区ながら初めて脇本の後ろにつくことを選んだ平原は、世界で戦う脇本の強さを最も実感した一人だった。
「単純に言ったらもうスケールが違いますね。レースを走っている中で、自分はそれを一番感じました。スピードだったり、持久力だったりとか競輪的要素そのものもそうなんですけど、グランプリという舞台でああいう勝負ができるっていう、すごい男だなって。後ろについていて痺れさせられたというか。もう影響しか受けてないですね、彼からは」
平原は、脇本からのトレーニングの話などを参考にしながら自分の競輪と照らし合わせて、どういう風に改善すべきかを常に考えているという。自身のピストフレームさえもナショナル組のスピードに対応するためにナショナル組のものと似た形を選んだ。
「レース自体のスピードが上がるので、そういう自転車で踏めていないと、レースにも参加できない感じがしますね」と平原は話した。
いつも決して自らを驕らない平原だが、同地区かつ同じ競輪場で練習する後輩の宿口からは「化け物」と言われるほど十分に異次元な強さを持つ一人だ。
一番近くで平原の強さを目の当たりにする宿口だが、平原のすごいところを聞くと、「一つあげるならケガに強いです」と答えた。
「2021年も5回ぐらい落車して、また練習中に骨折って。だけど、GⅠ取ってグランプリに出場してるわけじゃないですか。だから人間やめてますよね(笑)。脇本、新田、平原の3人はもう化け物です」と笑いながら宿口は話す。
また、自身が平原のような”化け物”レベルに向かうことに関しては、「化け物に近づきたい気持ちはあるんですけど、険しい道のりですね。だけど本当に目指している道はそこなので。腐らず頑張れたら」と話した。
高校時代からここまで、20年以上世話になっている平原に対しても、宿口が優勝したGⅠで前を引いた吉田に対しても恩赦の思いがあった。それゆえに宿口は、今回のグランプリでラインの勝利を絶対視した。
2021年最後のGⅠレースである朝日新聞社杯競輪祭に勝利し、グランプリの出場権を得た吉田だったが勝利の瞬間、「喜びと、やっちまったなというのがありました」と笑う。本人的には「優勝してしまった」だったそうだ。
そんな吉田もまた、関東ラインの勝ちに重きを置いた。
「関東の結束力を見せたいですね」と話した吉田だが、平原と宿口とは同地区ながら練習する拠点は違い、直前の合同練習などは全く行わなかった。しかし、レースで何度も連携してきた二人と組むことに対しては不安は全く持っていないようだった。
学生時代はトラック中距離をメインに走っていた吉田は、競輪選手に移行するにあたり、全力を”出し切る”ということに苦労したと話す。しかし、今回のグランプリでは最年少、26歳でいよいよ競輪選手の頂点の戦いに挑むこととなった。
トップに居続けられる理由
ラインを組む際、大きく区分するのであれば、後ろに同地区の選手を連れて先行する自力選手、先行選手の後ろについて他ラインの動きを妨げつつ、最後に捲りにかかる追い込み選手に役割は分かれる。
2021年、今回で3回目のグランプリ出場となった郡司は改めてラインの重みを感じていた。ナショナルチームに所属していた圧倒的実力を持つ自力選手の深谷知広が、郡司と同じ南関東地区に籍を移したことによって、先行を任されることがほとんどだった郡司は、後ろ(番手)に回ることも多くなった。
「後ろをついてくれる方の気持ちはさらに分かるようになりました。番手を回る機会が増えて、もちろんそれは自分とってプラスでもあるし、うれしいことではあるんですけど、やっぱりラインの重みというのは、前よりさらに考えさせられたなと1年通して思いました。
僕自身、自力でやることが多くて、番手に回ったときにどうしても先行選手を残したいとか、先行選手主体に思ってしまうところがあったんですけど、後ろにつく3番手だったり、ときには4番手ついてくれる選手もいるので、前の自力で頑張ってる選手だけじゃなくて、後ろをついてくれる方の思いとかも考えて、自分で走らなきゃいけないなというのがあったので、番手に回してもらったときはかなり自分の中でも責任重大だなと思いますね」
今回は、南関東からは郡司一人の出場となったが、追い込み選手である北日本の二人が郡司の後ろにつくことが決まった。本来であれば自身の勝利のみを考えてもいいように思えるが、あくまでラインを生かした走りをしたいと郡司は話した。
「もちろん1着目指して走るのは、単騎であっても、ラインがあっても同じことだと思うんですけど、やっぱりラインを生かして有利になれるような走りをしたいと思うので、その中で(自分に)飛びついてもらえるというのは頼もしいですし、それを活かした走り方をして、後ろについてくれる(佐藤)慎太郎さんであったり守澤さんが生きるようなレースを自分はしたいなと思います」
郡司の後ろを回ることとなった佐藤は、出場者の中で最高齢の45歳であり、唯一グランプリ優勝経験がある選手だ。今回は賞金ランキングでの出場となったが、「年間通して稼げてこのグランプリの舞台に戻ってこられたというのは、それはそれで自分で評価したいなと思います」と話した。
2019年にはグランプリを勝ち、S級S班の位置も3年連続となる。40歳を超えてなお、その場所に居続けられる理由について佐藤はこう振り返る。
「体も年老いていきますし、全力でできる時間は残り少ないと思うんで。そう考えたときに、一瞬一瞬を大切にしたいなという気持ちになったのは、4年とか5年前ぐらいですね。それが普段の生活からそんな風にできるようになってきて、結果が出てるのかなという感じはしますけどね」
多くの人は、年齢を重ねるごとに新しいものを取り入れようとすることを拒絶する傾向にあるように思える。しかし、グランプリの出場権を獲得したベテラン選手たちは、変わることを厭わず、強くなることへの好奇心を持ち続けていた。
「守りに入らないというか、今自分がやってることが本当に正しいかどうか分からないんで、もっと新しいものはあるんじゃないかっていう好奇心じゃないけど、そういうのはちょっと他より強いかもしれないですね」
佐藤はこう語る。
39歳の平原もまた、「固定概念が持たないっていうことと、やっぱり子供心というか、子供のときって好奇心で何でも興味あって何でもやると思うんですけど、そういう気持ちを忘れないっていうことなのかなと思います」と話していた。
郡司、佐藤の後ろを走ることを決めた守澤は、既にグランプリの切符を手にしていた2021年12月9日、広島でのレース中に落車し、鎖骨を骨折。翌日に手術を受けていた。グランプリのわずか20日前だ。骨折を押してでもグランプリへの出場は譲れなかった。
「もうやっぱり無理してでも走らなきゃいけない舞台ですし、まあでも手術すれば自転車には乗れるので。折れてはいるんですけど、走る分には大丈夫だと思います」と守澤は話す。
昨年初出場となったグランプリから2年連続での出場となった守澤だが、GⅠのタイトルこそ取れなかったものの、多くのグレードレースで決勝まで進み、賞金ランキングでグランプリ出場権を得た。また、この1年間で周りからのS級S班への期待の大きさを知った。
「自分は(GⅠなどの)タイトル取れるようなタイプじゃないんで、(グランプリに)出るならほぼ賞金だなと思っていたので。今年(2021年)の初めの時点からもう一戦も落とせないっていうぐらいの気持ちで、絶対決勝に乗ってというのを目標にやっていました。
やっぱりSSの赤いパンツを履くことによって、他の選手からの見られ方も変わりますし、ファンの方々からの声援なり罵声なりも本当に今までにないぐらいいろんななことを言っていただいて、やっぱそれを言っていただくことによって僕の成長にも繋がったと思ってますし、本当に精神面で成長できた1年だったなと思います」
オンシーズン、オフシーズンが明確にあるロードレースやトラックレースなどと違い、競輪は1年通してほぼ常に開催がある。
その中で、前年のトップ9人の証であるS級S班の選手たちには、シーズン通して出場するレース全てで期待がかかり、下手な走りをできない重圧もある。
2021年、GⅠのタイトルを1つ、GⅡのタイトルを1つ取り、昨年同様賞金ランキングトップの座を守った松浦も、時には厳しい声を浴びせられることもあった。
「やっぱり全部勝てるわけじゃないんで、(2021年は)精神的に結構きつかったですね。負けたときに、負のオーラじゃないですけど、言葉とかちょっとマイナスイメージがやっぱり残っちゃうんで。その辺がちょっとつらい部分もありましたけど」と松浦は話す。
また、コンディショニングという面に関しても1年を通して、高いレベルが求められる。郡司はこう語った。
「一番難しいというか、コンディションを調整する上で競輪選手の課題だなと思うんですけど、どこかで目標を立てて、そこにピークを持っていくために、やっぱりどこかを犠牲にしなきゃいけないところも出てくる。でも犠牲にするっていう中でも、立場上、最低限の走りだったりとか、結果は残さなきゃいけないので、そこが一番、年間通して難しいなと感じてるところではあるんですけど、でもオフシーズンがないので、やらなきゃいけない。そこはもう常に自分の中では課題にはなってきてるところではあります」
レース中の心組み
12月30日、16時30分。決戦の時がやってきた。段々と気温が下がり、時にバンクを強風が吹き付ける。
発送機からスタートしてすぐの位置取りは、郡司、佐藤、守澤の南関東&北日本ライン、清水、松浦の中国ライン、吉田、宿口、平原の関東ライン、そして近畿から単騎の古性が一番後ろにつけた。
松浦は、関東の3人が先頭にくるのであれば、隊列の中程、それ以外であれば、中程あるいは後方と目論んだ。
単騎の古性は、「初手もあそこしか取れなかったですし、そこからでいいかなという感じで」と、関東勢の後ろの最後方に待機したが、「前が遠く感じましたね」とも話した。
ラスト2周、誘導員が抜けるタイミングとともに清水が先頭の郡司に並んだ。それに郡司は張り合う。第1コーナーで清水は後ろを確認しつつ、一度郡司に前を譲る形となったが、その隙に今度は吉田率いる関東勢が大外から一気にスピードを上げる。前日に吉田が「ラインの力を見せたいと思います」と話した通り、一切力を出し惜しみすることなく先頭へと突き抜けた。
「清水が少しひるんだところで、もうちょっと待ってから吉田が来ると思ったんで、追いつけなかったです。あのまま踏んでたら突っ張れた(並んできた他のラインの選手を前に行かせずに先行すること)んですけど、吉田も外(側から)行ったので」
郡司は振り返る。
ほぼ捨て身と言ってもいい引きに、一気に関東勢と平原の後ろにぴったりついていた古性の4人が前に出切った。
平原の後ろにしっかりと陣取った古性は、「自分がしっかり自力出せる位置を考えて、どこになるのかなと自分でもちょっと思ったんですけど、ベストな位置を取れたかなと思います」と話す。
4人が前に出た状態でスピードが上がったままラスト1周に突入すると、後ろから清水と松浦の中国ラインが猛追。ラスト1周の鐘が鳴り響く。風も強くなってきた。
1.5周ほど先頭で風を切り続けた吉田が最終周のバックストレートで力を使い果たすと、先頭は宿口に明け渡された。しかし、ほぼそれと同じタイミングで自ら脚を使って前に出たのは古性だった。後ろからは清水が古性を追うが、スピードが違った。
古性は平原、そして宿口を抜き去ると1人前に出切り、後続との車間が空いた。宿口の後ろから平原、そして間を縫って外側から郡司が伸びたものの、古性の後輪を捉えることができない。佐藤や最終周で一度離れかけた守澤も一つの集団となって突き抜けられる場所を探したが見つからず。
「めちゃくちゃ長かった」と話すおよそ半周を耐え切った古性がフィニッシュに先着し、初出場で初勝利を収めた。
これで青の4番車がグランプリで勝利するのは、3年連続3回目。
その1回目の勝者である佐藤は、「4番車だね、グランプリは。だから俺、第1希望が4番車にしたんだけどさ」とレース後、口にした。
現在45歳の佐藤は、事前の取材でも年齢による限界点をどうにかやりくりしているという印象だったが、今回のグランプリで新たな欲が芽生えたようだ。
「また勝ちたい気持ちも沸々と湧いてきてるんで、来年も走りたいですね。そしてまたあの表彰台に立ちたいです。そういう気持ちがある限りは上で戦えると思うんで、また明日から頑張りたいと思います」
レース後、記者に囲まれ、うなだれる清水に対して後ろから現れた松浦が肩を叩く。
「もう終わったことじゃん。来年頑張ろ」と、清水に声をかけた松浦もまた、すぐに前を向いていた。
「もう1年頑張ってまたチャレンジするしかないんで。今はね、もう終わったことで、本当に悔しいですけど、その悔しさを持ってまた来年やるしかないと思ってます。(清水)裕友とまた(グランプリに)乗れたらいいですね」
競輪の面白さ
今回のグランプリ、関東地区の3人、平原、宿口、吉田は全員が全員口を揃えてラインの勝利を望んだ。そしてそれこそが力になると平原は考えた。
しかしそれが時には足枷になってしまうこともあるように思える。
ラスト半周、吉田がつけた勢いのまま宿口は先頭で風を切ったが、その上を古性に行かれてしまった形だ。
平原の後ろから古性が飛び出した際、前を走る宿口から古性の後ろに乗り換えることもできないわけではない。しかし、平原にその選択肢は存在しなかった。
「自分があの上を一緒に行くわけにはいかないし、古性がすごい上手いし、強かった」
平原は話す。
一方で宿口は、「情けないですね、ちょっと自分が……」と悔しさを滲ませた。
関東3車という絶好の機会だったが、平原から見ると宿口はかなり緊張していたようだ。
「リラックスはさせてたつもりだったんですけど。でもそれだけ責任感じて走ってくれてたので。気持ちはわかりますし。前の2人(吉田、宿口)はすごい悔しそうにしてくれるんですけど、3人が3人出し切ってるから清々しい負けです。やるべきことをやれたので、納得はしてます」と平原は冷静に話した。
競輪は想像以上に信頼関係で成り立っている面が大きいように思える。ただ”強いだけ”でトップに残り続けることは難しい。それゆえに、競輪の面白さの根源は、”人間らしさ”にあるように思う。
松浦は競輪の魅力をこう話す。
「スピード感とか迫力とか、後方になっていても最後突っ込んでくる選手もいますし、そういうゴールまで分からないっていう緊迫感を現地に見に来てほしいなと思います。
ギャンブルとしての魅力で言えば、他の競技にはない人間性という部分を見られるので、そういう人間味あふれるところを見てほしいですよね」
松浦は、競輪を知ってもらうために考えることも多いようだ。
今回は単騎で勝利を掴んだ古性だったが、自身も願わくばラインで出場したかったと話す。
「寂しかったですね。ちょっと心細く感じたので、来年は僕だけじゃなくて、近畿を引っ張っていけるように頑張りたいと思います」
古性が語る競輪の魅力もラインに関するものだった。
「本当に関東勢がまさしくそうだったと思うんですけど、やっぱり平原さんの気持ちを背負ってラインが結束していたと思いますし、そういう人間模様が見えてすごく面白いレースだったかなと思います。伝えるのが難しいですけど、そういうところが競輪はいいなと思います」
話を聞いた選手たちはそれぞれ「面白いレースを見せたい」という思いを強く持っていることが伝わってきた。
あくまで走っているのは我々と同じ、感情がある人間だ。見る側としても、それぞれの努力によって強さを保つ選手たちにリスペクトを持てたなら、レースが、競輪という場が、さらに面白くなるのではないだろうか。
2022年、また新たな戦いはもう始まっている。