ズイフトで見せた熱戦 2022UCIサイクリングeスポーツ世界選手権

目次

日本時間2月27日、第2回となるズイフトを使ったUCIサイクリングeスポーツ世界選手権が開催された。 今大会に参戦した日本人選手のコメントを交えつつレースを振り返り、ズイフトには大会開催の意義について聞いた。

 

2022eスポーツ世界選手権

 

話を聞いたのは

池田隆人選手

池田隆人選手

高杉知彰選手

高杉知彰選手

 

世界選にふさわしいコースでの激戦

第2回UCIサイクリングeスポーツ世界選手権がイギリス時間で2月26日の18時15分、女子エリートのレースからスタートした。日本時間だと27日早朝の3時15分。男子レースは4時45分にスタートを切った。

初回大会は国ごとに選出された選手が出場したが、今大会では小さな国でもレースに参加する機会を与えるべく大陸別予選が行われた。アジア予選では5人の日本人男子選手が勝ち上がり、今回の本戦への切符を手にした。女子は、日本自転車競技連盟の推薦により1人が出場した。

男女共に走るコース、距離は同じだ。ズイフトが世界選手権にふさわしいコースをと用意したものだ。

女子は23か国、84人の選手が出場。4人に絞られたラスト200mでロイズ・アデゲースト(オランダ)が小集団を突き放し、そのままフィニッシュへと飛び込んだ。

 

2022eスポーツ世界選手権のコース

ニューヨークのニッカーボッカーサーキットを2周半するコースで争われた。最大の難所は、フィニッシュライン前、距離1.4kmの上り。総距離54.9km走る中で、その上りを3回通過する

2022eスポーツ世界選手権のプロフィール

概ね平坦と見なされる細かなアップダウンが続くコース中、平均勾配6.1%、最大勾配14%の上りが待ち受ける。ここで多くの選手が、15秒間体重が10%軽くなるアイテム「フェザーウェイト」を使用していた

 

チームでの戦い、個人での戦い

男子のレースは、23か国、86人の選手たちが出走。5人の日本人選手内での作戦は特になく、各々が自由に走った。スタートから本田竜介や笹内秀法がアタックを仕掛けたが、早々に集団が吸収。レース中盤には、リック・オッテマ(オランダ)と高杉知彰の二人逃げができあがる。高杉は、「狙っていた動き」と振り返るが、うまく協調することができず、集団に戻ることを選んだ。

レースが終盤に差し掛かると、新たな6人の逃げグループが形成された。これに日本人選手は乗ることができなかった。高杉はこう話す。

「自分の考えたプランは、逃げに入って前待ち。乗り損なってしまって、少しテンションが下がりました。しかしオーストラリアが逃げに入ってなかったので、集団をコントロールしてくれると思い、脚をためることに集中しました。オーストラリアのアシストは強力で、捕まえにいく動きで脚が削られたと思います」

最後の上りに向け、集団をオーストラリアのアシスト勢が強力に牽引。最大20秒ほど開いたタイム差だったが、ラスト1kmを過ぎた上りでバラバラになった集団からエースたちが先頭に合流した。集団後方で日本人選手たちも食らいついたが、高杉いわく「出力差に絶望を感じた」と言うほど、先頭へと向かったエース選手たちはとんでもないペースでかっ飛んでいったという。

最後まで残った逃げ選手を前回王者のジェイソン・オズボーン(ドイツ)がパスして単独先頭に立ったが、ラスト100mでジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が後方から一気に抜き去り、優勝を飾った。

 

2022eスポーツ世界選手権

2022eスポーツ世界選手権

100年後のニューヨークを表現した景色をバックに選手たちが走る

 

日本人選手の課題点

日本人最高位は池田隆人の37位。池田と高杉は、ワールドエリートズイフターズというチームに所属し、世界の選手たちと走る機会も多いが、池田は今回の順位について「ひどいと思います」と悔やんだ。

「やはり世界選手権というだけあって世界各国の最も強い選手が集まるので、普段行われるズイフトの公式リーグ戦よりも、さらに数段レベルが高いと感じました」

しかし、課題は明白に持った。

「短い坂で力を出すための練習は余りしておらず、ズイフトレース頼りでした。しかし、今年はズイフトレースの回数を少なめにしていて、思ってた以上にキレが悪かったです。FTPとスプリント〜1分以下のパワー数値が伸びていても、その中間の2〜5分のパワー数値はほぼ関係なかったというのも、今回失敗して初めて気が付きました。今後は短い坂での走りを継続的に強化していきたいです」

日本人では池田に次ぐ39位だった高杉は、レースをこう振り返った。

「とても楽しかったというのが第一の感想です。ヨーロッパのトッププロをはじめ、eスポーツの強豪選手とレースができたこと、展開を作ってチャレンジができたこと、最後の上り勝負まで行けたことは、とてもエキサイティングでした。自分のパワープロファイルや当日の走り方を振り返ると妥当な順位ですが、振り返ると改善点もあり、悔しい気持ちも少しだけあります」

改善点については、「個人ではレースの展開を読んで臨機応変に対応するところ、後は絶対的なパワーの差を痛感しました。オーストラリアやアメリカのチームでの動きも特筆すべき点で、日本のチームの中での連携や最後の集団に残す枚数の差も課題だと思います」と、池田同様、明確な課題が見えていた。

 

eスポーツ世界選の開催意義

前回に続き、プラットフォームを提供したズイフトは、今大会の開催意義についてこう話している。

「eスポーツ世界選手権は、オリンピック競技連盟と提携して大会を開催できた初めてのケース。他のスポーツ関連のeスポーツと異なり、シミュレーションイベントではなく、それ自体が新たなフィジカルスポーツとして確立されつつあります。私たちはこの競技がオリンピックの競技として採用されることを望んでおり、そのためにはこの世界選が、重要な一歩となるはずです」

前回大会では、自転車競技では無名のボート選手が世界選のタイトルを獲得したことにより、ワールドチームからの契約を申し込まれた。このように新たな才能を発見するにも、そして新たなファンを獲得するにも、このeスポーツという分野はさらに発展させていく価値があるのだ。

 

RESULTS

男子エリート

優勝 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア) 1時間15分41秒
2位 フレディ・オヴェット(オーストラリア) +0秒
3位 ジェイソン・オズボーン(ドイツ) +1秒

37位 池田隆人(日本) +27秒
39位 高杉知彰(日本) +31秒
63位 前川聡朗(日本) +5分10秒
69位 本田竜介(日本) +8分41秒
74位 笹内秀法(日本) +8分51秒

女子エリート

優勝 ロイズ・アデーゲエスト(オランダ) 1時間23分19秒
2位 セシリア・ハンセン(スウェーデン) +1秒
3位 ゾエ・ランガム(イギリス) +1秒

59位 樫木祥子(日本) +12分53秒