2022TOJ 第4ステージコメントレポート チーム右京の完全勝利
目次
昨年に引き続き短縮日程で開催された三菱地所プレゼンツ ツアー・オブ・ジャパン2022。今年は信州飯田ステージが追加され、5月19日から全4ステージにて行われた。レースを振り返りつつ、コメントレポートをお届けしていこう。
快晴の東京ステージ
いよいよ今年のツアー・オブ・ジャパン(TOJ)も最終ステージの東京へとやってきた。
今年も日比谷公園スタートではなく、大井埠頭の周回コースのみの設定。パレードランに加えて7㎞のコースを16周回する112㎞で争われた。
前日の雨は夜のうちに止み、5月22日の朝の時点では空を完全に雲が覆っていたが、スタート時間までに青空が広がり、例年のように初夏のような気温と強い日差しが降り注いだ。
リアルスタートが切られると山本元喜(キナンレーシングチーム)、前日にスプリントポイントを稼いだ渡邉歩(愛三工業レーシングチーム)が飛び出す。しかし、逃げに乗りたいメンバーが多く、すぐに振り出しに戻された。
ポイント賞ジャージは前日の時点でレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)が着用したが、点差も少なく、今回のステージでの5周目、9周目、13周目に設定された中間スプリントポイント、そしてフィニッシュの着順によってまだ多くのメンバーにチャンスがある状態となっていた。
1回目のスプリントポイントは、集団のまま突入し、デッドヒートが繰り広げられた。EFエデュケーション・NIPPO デヴェロップメントチームはその時点でポイント賞で2位につける岡のためリードアウトを行なったが、キンテロがスプリント力を見せつけて岡を捲っていき、キンテロ、岡、そしてリーダージャージを着るネイサン・アール(チーム右京)の順で通過した。アールもまた、前日までのスプリントポイントでキンテロと僅か1ポイント差の3位(ポイント数では岡と同率2位)の位置につけており、取れるものを全て狙いに行った形だ。
1回目のスプリントポイントを通過し、集団が一度落ち着いたタイミングで今度は山岳賞ジャージを着る小林海(マトリックスパワータグ)が飛び出すが、さすがに総合4位につける小林の飛び出しを上位勢が許すことはなかった。
6周目、門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPO デヴェロップメントチーム)のアタックをきっかけに西尾憲人(那須ブラーゼン)がつき、集団から一人抜け出したホセ・ビセンテ(マトリックスパワータグ)が追いつく。すると、やっと集団と徐々に差が開き始めた。
集団からはさらに入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、新城雄大(キナンレーシングチーム)の2名、そして山田拓海(日本ナショナルチーム)が飛び出している。
メイン集団と先頭の3人とは23秒のタイム差がついた。
追走の入部と新城に山田がつき、追走も3人になると、9周目に設定された2回目のスプリントポイント前に追走が逃げグループの背中を捉えられる位置までやってきた。
チームメイトのキンテロのスプリント賞ジャージを守るため、そして今回のステージの逃げ切りによっては自身もジャージを獲得するチャンスがあったビセンテは、スプリントポイントに向けて最終コーナーから先に仕掛ける。一方で岡のためにポイントを取らせたくない門田が追う。門田がビセンテを差し切って、先頭通過した。
9周目の途中には追走3人が逃げの3人に追いつき、先頭は6人となった。
集団はリーダーのチーム右京がコントロールを行なっていたが、集団スプリントにしたいチームブリヂストンサイクリングや愛三工業が牽引に協力し始めていた。
11周目、6人の逃げと集団とのタイム差は1分ほどまで広がった。集団では新人賞ジャージを着る宇都宮ブリッツェンの宮崎泰史や、チームユーラシア・iRCタイヤのメンバーも先頭で牽引に加わる。
13周目、最後の中間スプリントポイントはまたしてもビセンテと門田の争い。やはり門田が先着し、ポイントを潰した。
集団スプリントに向けて
いよいよ終盤に向けて集団は徐々にタイム差を縮めていき、1分を切った。14周目後半には30秒、15周目には23秒、そして最終周回へと突入。スピードの上がった集団にバックストレートで逃げグループ5人が吸収されるが、西尾が単独で粘る。集団先頭は、キンテロのスプリントに向けて小林が速度を上げた。
残り2㎞で西尾を吸収した集団は、マトリックスパワータグや宇都宮ブリッツェン、チームブリヂストンサイクリング、チーム右京らがスプリンターを引き連れてスプリント態勢を整える。
しかし、最後から2つ目のコーナーで先頭を走っていたマトリックスパワータグとチームブリヂストンサイクリングがオーバーランし、コースアウトしてしまう。その隙に宇都宮ブリッツェンが先頭に出て、スパークルおおいた、愛三工業レーシングチームが並びにかかる。チーム右京のスプリンター、レイモン・クレダーはスパークルおおいたのスプリンター沢田桂太郎の後ろに入った。
ラスト300mの最終コーナーを宇都宮ブリッツェンの阿部嵩之が先頭で入り、小野寺玲を発射する。
小野寺の後ろから沢田が先頭に出ると、その後ろに付いていたクレダーがラスト200mでスプリントを開始。
「スプリントを早くかけすぎてしまうと失敗すると思ったので、ラスト200mぐらいまで、自分もギリギリまで我慢した」と話すクレダーは、右側から一気に沢田を抜き去ると自転車一台分丸々出切る形で爆発力を見せつけ、そのままフィニッシュラインへと飛び込み、大きく両手を掲げた。
後方ではスプリントアシストに回ったリーダージャージのアールがチームメイトの勝利に拳を突き上げていた。
厳しいステージを乗り越えての勝利
「素晴らしい1日でした。本当にうれしいです。これまではチームメイトの総合のためにずっとアシストしてきました。そして今日はスプリントで活躍することができてうれしいです」と表彰台で話したクレダーは、前日までのステージでアールの総合のために集団牽引などの仕事をしっかり行なっていた上でのスプリント勝利だった。
前日の表彰台ではアールが「明日はレイモンドの日になると思うよ」と言ったように、前日のミーティングではチームみんなが今日はクレダーのために働くと声をかけたという。
クレダーは「もう本当にチームのおかげだと思います。チームメイトは本当に自分に協力をしてくれました」とチームの働きに感謝を告げた。
クレダーの脚質向きではない3日間を終えて訪れたスプリントステージだったが、自身の状態についてこう語った。
「初日は、クライマーでない僕にとっては本当に大変で、何とか生き延びようと走りました。残り3周のところで、僕は完全に空っぽになってしまって、もう前にいることはできなかったんです。でもチームメイトがステージ1位と2位を獲得したことは本当にうれしかったです。富士山では、僕はただ山頂までのんびりと走るだけでした。その翌日は、僕らはネイサンのために、総合のために働く必要がありました。それが今週の最も重要な目標だったので。でも昨日のステージの最後の5~6kmは今日のために脚を休めておきました。そして今日は脚を最終ラップまで取っておいて、スプリントで仕留めるプランだったんですが、それが完璧にうまくいきました」
着順はクレダー、沢田、黒枝咲哉(スパークルおおいた)、キンテロ、岡の順。キンテロは最後に14ポイントを積み重ねてポイント賞トップの座を守り抜いた。
「本当にチームのアシスト、助けがあって、ブルーチャージをキープできたと思います。昨日はステージ優勝というところを狙っていたんですが、それは達成できずで、でも昨日の結果でこのポイント賞を取ることができました。
本当にチームには感謝しかありません。自分をアシストしてくれて、逃げができたとしてもグループの中で自分が良いポジションで終われるように本当にチームメートが助けてくれました。そしてこのブルージャージを着ることができました」
初参戦のTOJとなった今年、キンテロはポイント賞ジャージを持ち帰った。
ツアー・オブ・ジャパン2022 リザルト
ツアー・オブ・ジャパン2022 第4ステージ リザルト
1位 レイモンド・クレダー(チーム右京) 2時間17分22秒
2位 沢田桂太郎(スパークルおおいた) +0秒
3位 黒枝咲哉(スパークルおおいた) +0秒
個人総合順位
1位 ネイサン・アール(チーム右京) 10時間17分22秒
2位 ベンジャミン・ダイボール(チーム右京) +8秒
3位 トマ・ルバ(キナンレーシングチーム) +1分37秒
ポイント賞
レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ) 45pts
山岳賞
小林海(マトリックスパワータグ) 23pts
新人賞
宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン)
チーム総合
チーム右京