ツール・ド・フランス2022 第9ステージはユンゲルスが逃げ切り初優勝
フランスで開催中の第109回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月10日にスイスのエーグルからフランスのシャテル・レ・ポルテ・デュ・ソレイユまでの192.9kmで、山岳区間の第9ステージを競い、ルクセンブルクのボブ・ユンゲルス(AG2R・シトロエン チーム)が60kmを独走で逃げ切り、29歳で区間初優勝を果たした。
区間2位はスペインのジョナタン・カストロビエホ(イネオス・グレナディアズ)、3位はスペインのカルロス・ベロナ(モビスターチーム)だった。
メイン集団はゴール目前でマイヨ・ジョーヌを着たスロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツがアタックし、唯一反応できた総合2位のヨーナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)と一緒にゴールした。他の総合上位の選手たちは、この奇襲で3秒遅れてしまった。
ユンゲルスが残り60kmを独走
第9ステージは165選手が出走。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査で陽性になったフランスのギヨーム・マルタン(コフィディス)、膝の怪我が治りきっていなかったデンマークのカスパ・アスグレーン(クイックステップ・アルファヴィニル チーム)、病気になったポルトガルのルーベン・ゲレイロ(EFエデュケーション・イージーポスト)がスタートしなかった。
オフィシャルスタートからアタックが続いたが、逃げはなかなか成功しなかった。37.1km地点のカテゴリー4の丘はカストロビエホが先頭で通過した。44km地点で15人が逃げ出す事に成功し、ここにティボ・ピノー(グルパマ・FDJ)とユンゲルスが加わっていた。マイヨ・ベールを着たウァウト・ヴァンアールト(ユンボ・ヴィスマ)とブランドン・マクナルティ(UAEチーム・エミレーツ)を含めた追走グループが53km地点で追いつき、先頭の逃げ集団は21人に膨らんだ。
この逃げで最も総合成績が上位だったのはリゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・イージーポスト)で、3分24秒遅れの総合16位だった。集団はUAEチーム・エミレーツがコントロールし、逃げのタイム差は大きく開きはしなかった。108.5km地点のモス峠(カテゴリー2)はピエール・ラトゥール(トタルエナジーズ)が先頭で通過した。
次のクロワ峠はカテゴリー1で全長8.1kmの坂だった。ここで逃げ集団はユンゲルスが先頭を引き、山頂まで残り2.3kmで独走状態になった。しかし、山頂間近でユンゲルスにシモン・ゲシュケ(コフィディス)が合流し、ゴールまで残り61kmの頂上を先頭で通過して、山岳賞ポイントを10ポイント獲得した。これでゲシュケはマウヌスコート・ニルスン(EFエデュケーション・イージーポスト)のポイントを上回り、山岳賞総合首位に立った。
ユンゲルスは下りで再び単独になり、ゴールまで残り25kmで最後のパ・ド・モルジャン峠(カテゴリー1)を上り始めた時、追走集団とのタイム差は2分近くあった。UAEチーム・エミレーツがコントロールを続けるメイン集団では、この峠でコロンビアのダニエル・マルティネス(イネオス・グレナディアズ)が遅れてしまった。彼は結局この日、16分以上遅れてゴールし、総合トップ10から陥落してしまった。
パ・ド・モルジャン峠で追走集団はピノが引き、ウラン、ベロナ、カストロビエホだけが彼に付いて行った。そこから山頂まで8.7kmでピノーがアタックし、単独で2分先行している先頭のユンゲルスを追いかけた。ピノーはタイム差を着実に縮めていったが、個人タイムトライアルが得意なユンゲルスも粘り、ゴールまで残り9.8kmの山頂を通過した時、まだ23秒のアドバンテージを持っていた。
パ・ド・モルジャン峠でユンゲルスは山岳賞ポイントを10ポイント稼ぎ、ゲシュケを抜いて山岳賞総合首位に立ったかと思われた。しかし、後方で逃げ続けていたゲシュケは5位通過で2ポイントを獲得し、ユンゲルスに1ポイント差でマイヨ・アポワを獲得できた。
山岳賞は取れなかったが、ユンゲルスはそのままタイム差を守ってゴールの坂を駆け上がり、独走で逃げ切った。彼は2017年にジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)で区間優勝していたが、ツールの区間優勝は初めてだった。小国ルクセンブルク出身の選手がツールで区間優勝したのは、2011年のアンディ・シュレック以来だった。
今年のツールで最初の区間優勝を開催国フランスにもたらすために、単独で追走を続けたピノーは、ユンゲルスを捕まえられなかっただけでなく、ゴール目前で2人のスペイン人に追い抜かれ、結局区間4位でレースを終えたが、この日の走りで敢闘賞を獲得する事ができた。
■区間初優勝したユンゲルスのコメント
「正直言って、(この勝利は)大きい。区間優勝はボクがここに来た目的だった。これはチームにとって大きな意味がある。この数年間、特に去年の苦労から抜け出せた。これがボクのレーススタイルだ。勝利を勝ち取るスタイルだ。イェル・ヴァネンデルトが追ってきたリエージュ~バストーニュ~リエージュでの勝利をすごく思い出すよ。とても幸せだ。
体調は日に日に良くなっていた。今日は最後の上りで優勝候補たちから離れるのは不可能だったから、遠くから行かなければならなかった。下りでいくらかのタイムを補えると思っていたし、自分が爆発しないとは分かっていたが、最後の1kmは永遠みたいだった。できる限りの危険を冒し、それは実現した。この数年間、ボクを信頼してくれたチームと皆に感謝したい」
■第9ステージ結果
[7月10日/エーグル(スイス)~シャテル・レ・ポルテ・デュ・ソレイユ/193 km]
1. BOB JUNGELS (AG2R CITROEN TEAM / LUX) 4h 46’ 39’’
2. JONATHAN CASTROVIEJO (INEOS GRENADIERS / ESP) + 00′ 22’’
3. CARLOS VERONA (MOVISTAR TEAM / ESP) + 00′ 26’’
4. THIBAUT PINOT (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 00′ 40’’
5. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) + 00′ 49’’
6. JONAS VINGEGAARD (JUMBO – VISMA / DEN) + 00′ 49’’
7. GERAINT THOMAS (INEOS GRENADIERS / GBR) + 00′ 52’’
8. ADAM YATES (INEOS GRENADIERS / GBR) + 00′ 52’’
9. ENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP) + 00′ 52’’
10. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 00′ 52’’
70. DANIEL MARTINEZ (INEOS GRENADIERS / COL) + 16’ 02’’
■第9ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO) 33h 43’ 44’’
2. JONAS VINGEGAARD (JUMBO – VISMA / DEN) + 00′ 39’’
3. GERAINT THOMAS (INEOS GRENADIERS / GBR) + 01’ 17’’
4. ADAM YATES (INEOS GRENADIERS / GBR) + 01’ 25’’
5. DAVID GAUDU (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 01’ 39’’
6. ROMAIN BARDET (TEAM DSM / FRA) + 01’ 39’’
7. THOMAS PIDCOCK (INEOS GRENADIERS / GBR) + 01’ 46’’
8. ENRIC MAS (MOVISTAR TEAM / ESP) + 01’ 50’’
9. NEILSON POWLESS (EF EDUCATION – EASYPOST / USA) + 01’ 55’’
10. NAIRO QUINTANA (TEAM ARKEA – SAMSIC / COL) + 02’ 13’’
11. PRIMOŽ ROGLIČ (JUMBO – VISMA / SLO) + 02’ 52’’
30. DANIEL MARTINEZ (INEOS GRENADIERS / COL) + 17’ 12’’
[各賞]
■ポイント賞:WOUT VAN AERT (JUMBO – VISMA / BEL)
■山岳賞 : SIMON GESCHKE (COFIDIS / GER)
■新人賞:TADEJ POGACAR (UAE TEAM EMIRATES / SLO)
(※第10ステージは THOMAS PIDCOCK (INEOS GRENADIERS / GBR) が着用)
■チーム成績:INEOS GRENADIERS (GBR)
■敢闘賞 : THIBAUT PINOT (GROUPAMA – FDJ / FRA)
休養日明けの第10ステージは丘越え区間
7月11日はアルプスのスキーリゾート地で今年2回目の休養日を過ごし、ツール2週目の初日となる12日は、モルズィヌ・レ・ポルテ・デュ・ソレイユからムジェーブまでの148.1kmで、アルプス丘越え区間の第10ステージが行われる。