宇都宮ブリッツェン・増田成幸は区間22位、総合7位 ツール・ド・北海道2022 第2ステージ
ツール・ド・北海道2022 第2ステージは、蝦夷富士の異名を持つ羊蹄山を眼前に見据え、そこから吹き降ろす風に向かうように進む今大会最も厳しいと言われるステージ。前日のハードな第1ステージではレースを降ろされる選手が続出し、プロトンは48人とかなり小さくなった。セレクションに生き残った選手たちによる、ハイレベルな戦いが予想された。
第2レースの見どころは、40.6km地点に出てくる新見峠(標高741m)だ。今回4人で臨んだ宇都宮ブリッツェンだが、その新見峠に入る前にできた7人の逃げに、阿部嵩之と堀孝明の2人を送り込むことに成功。一時は集団と4分の差を開く。
第1ステージを経て、総合優勝争いとなるであろうメンバーは、ステージを取った今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)を筆頭に、3秒差で増田成幸、山本大喜(キナンレーシングチーム)、41秒差で松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)、マルコス・ガルシア、トマ・ルバ(以上キナンレーシングチーム)、門田祐輔(EF エデュケーション-NIPPO ディべロップメントチーム)、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)の上位7人。ここにタイム差2分の谷順成(那須ブラーゼン)がからめるかどうか。このGCライダー(総合優勝を狙える選手)たちは、集団待機の形でレースは進む。
先頭の7人は、新見峠を通過したあとも逃げを容認される形で2分半ほどのアドバンテージを得る。しかし徐々に遅れる選手も出始め、堀は集団に戻る形となった。
再びレースが動き始めたのが残り70km。一列棒状で非常にアクティブになった集団から、10数人がブリッジを仕掛ける。実はこの動きが、今日の結果の明暗を分けることとなる。それは自転車ロードレースにつきものの、不文律によるレースの”アヤ”だった。
集団内ではこのとき、総合上位の選手からトイレタイムというアピールがあった。増田もそれに同調してペダルを止めたが、その際に前方でアタックが掛かってしまう。「そういうときは勝負を仕掛けない」という不文律が自転車ロードレースにはあるが、それに則って集団に留まった選手、勝負が掛かっているからには前を追う選手がいて、自分がどう動くか瞬時に決断を迫られた集団は、まさにカオス状態であったという。
この「不文律」は「規則」ではないのが難しいところで、増田が止まっていた宇都宮ブリッツェンとしては非常に厳しい状況に。また多くの総合上位選手も集団に留まる形となる。
チームとしては何とか前に追いつきたいし、増田の総合はUCIポイントのつく10位までには最低でも食い込みたい。増田の近くにいた小野寺玲、堀はもちろん、前を逃げていた阿部を戻してまで、増田のアシストに全員で徹する。
そして残り46km、追走の15人が追いつき先頭は19人に。この先頭に先ほど名前を挙げたGCライダーのうち、松田、門田、ルバ、谷が入っているのが勝負を難しくさせた。増田や今村は5人で追走をしかけるも、残り27kmでタイム差は4分強。さらに10人が増田たちに追いつき、追走は15人となり、小野寺、山本大喜もここに。
総合1~3位が必死で前を追うものの、先頭集団も総合争いがかかる。残り12kmになってもタイム差は4分5秒。先頭に選手を入れてない宇都宮ブリッツェンに対し、今村のチームブリヂストンサイクリングと山本のキナンレーシングチームは、先頭に総合逆転を可能にさせる選手がいる。そこが、タイムギャップがなかなか縮まらない要因でもあった。
先頭は激しいアタックの応酬を繰り返し、最後600mのひらふ坂の直線は、息も絶え絶えの選手たちが上ってくる。その中で、最後までペースでペダルを踏み続けた那須ブラーゼンの谷が、後ろを気にしつつも先頭のままゴール。前日は足が攣って遅れたと言うが、驚異的な粘りがこの国際レースでの勝利をもたらした。
増田は追走集団で今村、山本大喜らとゴール。なんとか総合7位に留まることができた。
ゴール後、多くの選手がその場で倒れこむ姿が見られたほどのこの過酷なステージで、増田らの直後に入ってきたのが小野寺だ。第1ステージは久しぶりにひどい疲労に襲われたと言うし、増田のトイレタイムの間に逃げができた際は、前を追うなどの対応で相当脚を使ったのだが、ここにいたのはまさに今年のチームのスローガン「Always Evolving(常に進化する)」を、走りで見せていると言える。
明日は最終日の第3ステージ。これまでと同様、山岳を含むアップダウンの多い173km。レースの”アヤ”なしに、実力者たちがどのような結果を残すか。総合順位の入れ替えも予想され、宇都宮ブリッツェンの次の進化にも期待したい。
【清水裕輔監督のレース後コメント】
「今日はフィニッシュのひらふ坂で勝負をするつもりだった。途中はアップダウンの多いコースだったので、レースコントロールをするブリヂストンが引き切れしたときに動くことも考えていた。最初の7人の逃げに阿部、堀の2人を入れられて、前待ちもできるし、とてもいい形でレースを進められていたと思う。結局は増田が用を足している間にアタックが掛かってしまい、気がついたときにはどうしようもならない形になってしまった。後味の悪いレースとなったが、最後は小野寺、阿部、堀が必死に増田を前に上げてくれ、UCIポイントのつく7位(10位までポイント付与)に増田を位置づけられたのは、チームとしては最後まで頑張った結果だ。明日も引き続き自分たちのレースをしていきたい。
▼第2ステージ 区間賞 リザルト
1位 谷順成(那須ブラーゼン)4:35:29
2位 門田祐輔(EF エデュケーション-NIPPO ディベロップメントチーム)+0:00
3位 トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)+0:05
22位 増田成幸 +4:57
25位 小野寺玲 +5:41
44位 阿部嵩之 +17:19
46位 堀孝明 +20:00
▼第2ステージ終了後 個人総合 リザルト
1位 谷順成(那須ブラーゼン)8:37:02
2位 トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)+0:05
3位 松田祥位(キナンレーシングチーム)+0:29
7位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)+4:25
21位 小野寺玲 +11:07
37位 阿部嵩之 +25:05
46位 堀孝明 +36:28
▼第2ステージ終了後 チーム総合 リザルト
1位 キナンレーシングチーム 25:56:45
2位 EF エデュケーション-NIPPO ディベロップメントチーム +6:15
3位 マトリックスパワータグ +10:44
8位 宇都宮ブリッツェン +35:07
▼リーダージャージ
個人総合 門田祐輔(EF エデュケーション-NIPPO ディベロップメントチーム)
ポイント賞 谷順成(那須ブラーゼン)
山岳賞 ホセ・トリビオ(マトリックスパワータグ)
第36回 ツール・ド・北海道2022(UCIアジアツアー2.2)
▼第2ステージ開催日
2022年9月10日(土)
▼スタート&フィニッシュ
倶知安町ニセコグラン・ヒラフスキー場前(北海道虻田郡倶知安町山田204)
▼出場選手
増田成幸、阿部嵩之、堀孝明、小野寺玲
▼競技概要
ニセコを中心に北は共和町、西は蘭越町、南は洞爺湖町を反時計回りで進む186km
出走:48人(13チーム)
天気:晴れ
スタート時間:9時30分