シクロクロス東京 5年ぶりに戻ってきた砂の地獄での熱戦
目次
2月11日~12日、東京都港区・お台場海浜公園にて5年ぶりに「チャンピオンシステム×弱虫ペダル シクロクロス東京」が開催された。
2日前に寒波が訪れたとは思えないような、暖かくすっかり晴れ上がった大会2日目には、キッズレース、エンデューロ、マスターズ、男女エリートカテゴリーのレースが行われた。男女エリートカテゴリーのレースを中心にレポート。
5年ぶりの都内でのシクロクロス
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快晴の2日目、キッズレースでスタート
海越しにレインボーブリッジが見渡せるお台場海浜公園に「チャンピオンシステム×弱虫ペダル シクロクロス東京」が戻ってきた。本会場は、東京2020オリンピックのトライアスロンの会場となっていたため、しばらく使用することが叶わず、2018年以来の開催となった。
今回は、エリートカテゴリーではJCXシリーズの最終戦とも位置付けられたこの大会には、海外招待選手こそいなかったものの、1月の全日本選手権を争った国内トップの選手たちが参戦。
また、この会場はアクセスも良く、多くの観客が訪れて、普段のレース以上に声援が送られる特別な機会であるため、選手たちのモチベーションも高い。今回も会場のあちこちで多くの声援、そしてカウベルの音が鳴り響いていた。
男子エリートや女子エリートのレースが予定された大会2日目の2月12日は、雲一つなく快晴で温暖な気候に恵まれた。
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思い思いの走り方、格好でスタートした90分のエンデューロ
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渡辺先生は1人で90分を走り切っていた
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エンデューロの表彰式
午前9時、キッズのレースからスケジュールがスタートすると、徐々に会場を訪れる人数も増えてきた。
9時45分からは90分間のエンデューロも行われ、レース派からコスプレをして走るエンジョイ派まで、シクロクロス東京名物の砂浜の地獄に飲まれながらも参加者の多くは笑顔を見せていた。
ここに参戦していた弱虫ペダルの作者、渡辺航先生は、「渡辺航」と「東堂尽八」という二人一役でエントリー。途中でジャージを変えながら一人で走り切り、最後は作中にも登場する東堂の指差しポーズで華麗にフィニッシュしていた。
マスターズカテゴリーでは、生田目修(イナーメ信濃山形&大幸ハーネス)が逃げ切って優勝を飾った。
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マスターズは生田目が優勝
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走り切ったマスターズの選手たちが労い合いながら大きな笑顔を見せた
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男女エリートの招待選手の紹介もステージで行われた
エンデューロの最中、舞台上では、男女エリートそれぞれに出走する招待選手や、シクロクロス世界選手権に出場したメンバーのトークショーなども行われていた。
女子エリート「チャンピオンらしい走り」
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スタートラップで砂区間に入る小林、小川、石田
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シケインを超える小川
女子エリートカテゴリーは13時にスタート。世界選手権にも出場したメンバーが序盤からホールショット争いを繰り広げる。小川咲絵(AXシクロクロスチーム)、小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)、石田唯(早稲田大学)がほぼ横並びの状態で一番最初の砂浜区間に突入すると、長い砂浜区間で全日本チャンピオンジャージを着る小川が頭ひとつ飛び抜けた。
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砂区間で差を広げる小川
砂区間は「正直得意ではない」と話した小川。試走の段階であまりうまく走れず、自信をなくしていたそうだが、レースになればその印象は消え去った。海の水際ギリギリを乗車したままスピードをつけて後続と差を離していった。
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固まってまだ走りやすい水際を走る小川
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「このジャージを着て負けるわけにいかないと思って」と小川は意気込んでいたそうだ
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小林が先頭の小川を追う
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小林と抜きつ抜かれつしながら石田も前を追う
1周あたりおよそ2㎞のコースで、小川はラップタイムをおよそ6分4秒~11秒の間でペースを保った。
「砂区間は手こずった部分はあったんですけど、後半になればなるほどフィジカル勝負になるかなと。砂のテクニックよりも体力勝負になってからは優位だったかなと思います」と言うように自身のペースを守ったまま冷静に走り切り、優勝を飾った。
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フィニッシュした小川はバイクを高々と掲げた
また、小川は今回がシリーズ最終戦となったJCXシリーズの年間総合優勝にも輝いた。
「今年の目標がJCXの総合とJCFの総合と全日本チャンピオンと世界選手権完走で、全部を達成できました。チャンピオンらしい走りをして最後にシーズンを締めくくりたいと思っていたのでそのとおりの走りができたかなと思います」と、喜びを語った。
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女子エリートカテゴリーを走った選手たちが笑顔で健闘を称え合った
女子エリート(CL1) リザルト
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1位 小川咲絵(AXシクロクロスチーム)34分22秒
2位 小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)+17秒
3位 石田 唯(早稲田大学)+59秒
女子エリート JCXシリーズ総合
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1位 小川咲絵(AXシクロクロスチーム)
2位 渡部春雅(明治大学)
3位 石田 唯(早稲田大学)
男子エリート 砂巧者が魅せた勝利
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多くの観客が詰めかけた状態で最終レースがスタート
最終レースの男子エリートカテゴリーは13時55分にスタートを切った。この頃になると、多くの観客がコースの周囲を埋めた。
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ホールショットをとり、砂浜区間に一番に飛び込んだ沢田
「かなりタイトなコースということで、第1コーナーも危ないし、後ろにいていいことは何もないので今日は絶対スタートをとる予定で」と、沢田時(宇都宮ブリッツェン)がホールショットを取ると、同チームの小坂光、竹之内悠(チネリ・ヴィジョン)が続く。
小川らと同様に世界選手権に前週出場したばかりの織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は砂区間で少し詰まってしまい、溝をあけられた。
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沢田、竹之内、織田はシケインをバニーホップ(乗車のまま自転車でジャンプ)で超えていた
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ブリッツェンの2人が先行
次の周には沢田、小坂の宇都宮ブリッツェン2人がパックで先行。少し後ろからは砂を得意とする竹之内が迫る。
竹之内は序盤の様子をこう語った。
「こういうコースでは初めはあまり焦ってもしょうがないので。落ち着いて自分のエンジンがかかるタイミングと、(前と)あまり離れすぎないように。はじめ、ブリッツェンの2人がすごくいいペースで走っていたので、必死について行って。森林区間が僕はみんなに比べて絶対遅かったので。そこは冷静にパンクしないように走って、砂区間でしっかり勝負っていう形で」
多くの選手が苦戦する中、まるで滑るように砂区間を進める竹之内は、途中で小坂をパスすると、先頭は竹之内と沢田の2人となった。周回数は11周回に決まった。
前半戦はそのまま先頭2人が淡々と周回をこなしていく。後ろは竹内遼(ギザロレーシング)、織田、小坂がそれぞれ単独で前を追う。
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森林区間を走る沢田の後ろには竹之内
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前半は竹之内と沢田がスピードを上げながら周回をこなす
中盤に差し掛かると、先頭の沢田と竹之内は抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げる。しかし沢田は、砂区間で竹之内との差を感じていた。
「自分の方が踏んで差を詰めていた感じだったので、ちょっとずつ終盤で脚がなくて。林区間でも結構悠さんは上げてきていて、調子いいなってちょっと弱気になったところで行かれちゃって。詰めきれなくて、体力的にもきつくて、ちょっと気持ちも切れてしまって」
7周目の砂区間で竹之内は沢田を切り離した。
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単独で走る竹之内。砂浜区間のスピードは随一
竹之内はしっかりとタイミングと離す場所を見極めていた。
「中盤、時と2人になってから、時はすごくいいペースでついてきていました。早めに仕掛けないともう1人、竹内遼選手もついてきそうだったので、ちょっと早めに仕掛けましたね。
僕が(沢田と)何周か一緒に走っていて、砂区間でアドバンテージがある場所が分かっていたので、そこで一気にペースを上げました。元からちょっとエンジンがかかっていなかったので、始めぐらいのペースで前半からいけるかなと思ってたんですけど。でも後半は思ったとおりのペースで刻めました」
エンジンがかかったと話すように竹之内はラップタイムを前半よりも上げていく。
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後ろから猛追をかけた竹内
後ろからは、竹内が沢田も抜き、2位の位置に。8周目完了時点で先頭の竹之内までおよそ10秒と迫るが、9周目のシケイン区間で転倒。チェーン落ちを直している間に、沢田にもパスされた。竹内はこう振り返る。
「スタートラップの砂浜でラインチョイスをミスして、スタートで結構遅れてしまって。
中盤、先頭パックの様子と、僕の今日の調子から、スムーズに行ってギリギリ届くか届かないぐらいかなと思っていました。いい感じにタイム差も詰まってたので、いけるかなと思ったんですけど、シケインでミスして転けて。そこでもう先頭に追いつくという意味では今日はもうレースが終わってしまったという感じでした。その後は、2番手争いをしてたんですけど、そういうミスがあったりとかで、もったいないことしちゃったなと思います。
でもこれだけお客さんがいて、カッコ悪いところ見せられないので。たくさん応援してもらえたので、ここで勝ちたいですね、やっぱり」
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独走する竹之内
ラスト3周は竹之内の独壇場。後続とのタイム差をむしろ離していき、そのまま単独でフィニッシュラインへと飛び込んだ。
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2位の沢田は、狙っていたレースだけに悔しさが溢れた。
「今日は、ここをこうすればっていうのはないですかね。今振り返っても理想の展開ではありましたけど、悠さんが強かったです。力負けだからこそ悔しいですね。
今シーズン、(シクロクロスで)10レースして、2位に8回になってるんです。悔しいシーズンでした。今日は世界選後ということもあって、(織田)聖もたぶん疲れてるだろうなと思ってたんで、今日チャンスだいぶあるなと思って狙ってたんすけど。悔しいですね」
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一方で、久しぶりの勝利を飾った竹之内だが、これまでも「あんまり負けていた気もしない」と笑う。
「自分のやりたいことをずっとできていて、今日はしっかり勝ちたいなというのもあって、結果も出てすごいうれしいです」
34歳となる竹之内だが、来シーズンは再び世界を目指したいと話す。
「やっぱりまた海外に行きたいっていう思いはめっちゃあって、正直お金の問題だけですね。今はチームを離れちゃって、1人なんで。ちょっとそういうところも含めて今日やっぱり勝ちたかったので」
今シーズンのJCXシリーズでは、勝利を量産した織田が総合優勝を決めた。世界選手権など世界トップとの戦いと国内での戦いに大きな差を感じ、自身の現状の立ち位置を測りかねている様子であった織田。表彰式後には、来シーズンもシクロクロスは弱虫ペダルサイクリングチームで走ることも発表された。
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表彰式後には弱虫ペダルサイクリングチームの今シーズンのメンバーが紹介された
男子エリート(C1 TOP35)リザルト
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1位 竹之内 悠(チネリ・ヴィジョン)51分34秒
2位 沢田 時(宇都宮ブリッツェン)+52秒
3位 竹内 遼(ギザロレーシング)+1分17秒
男子エリート JCXシリーズ総合
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1位 織田 聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
2位 沢田 時(宇都宮ブリッツェン)
3位 小坂 光(宇都宮ブリッツェン)
Champion System×弱虫ペダル シクロクロス東京
開催日:2023年2月11日(土)〜12日(日)
開催地:東京都港区お台場海浜公園特設コース(東京都港区台場1丁目)1周/約2km
大会ホームページ
https://cyclocrosstokyo.com