第2回富士クリテリウムチャンピオンシップ VC横塚が不意をついた独走勝利
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開催2回目の富士クリテリウム
3月4日~5日、静岡県・富士市の富士市道臨港富士線、通称青葉通りを使用して、「第2回Jatco presents富士山サイクルロードレース2023 富士クリテリウムチャンピオンシップ」が開催された。
初回の大会となった前回同様、1周1.8㎞の富士市役所前特設コースでレースは行われた。
春らしい暖かな陽気となった3月4日は、3つの組に分けてそれぞれ20周、36㎞で予選が行われた。1組目と2組目はUCIコンチネンタルチームとクラブチームがシャッフルされた組み合わせで、3組目は日本学生自転車競技連盟に加盟する大学チーム間での争いとなり、各組上位25名が翌日の決勝へと駒を進めた。
3月5日は、朝こそ青空がのぞいていたが、強い風は天気予報どおりに徐々に厚い雲を引き寄せた。
まだ雨が降っていなかった12時45分、予選で26位以下だった選手たちによる交流戦がスタート。
各組の予選で起こった落車を回避した影響により、今回の優勝候補たちが数人、決勝よりも短い15周の27㎞の交流戦へと流れることになった。その一人である橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)は、最後の数周で単独で飛び出し、先日行われたトラックネイションズカップのエリミネーションを勝ったときと同じポーズで一番にフィニッシュし、交流戦を盛り上げた。
雨が降り注ぐ決勝レース
その後、いよいよ富士クリテリウムチャンピオンシップ決勝の面々がスタート地点へと並ぶ。13時45分のスタートを前に、小さな雨粒が見え始めた。レースはこれまでで最も長い30周、54㎞で争われた。
レースがスタートすると、逃げを作ろうと数人が動きを見せるが、なかなか決まらない。だんだんと雨脚も強くなり、選手たちの後輪からは水飛沫が上がり、コーナーが訪れる度にけたたましいディスクブレーキの音が鳴り響く。
ようやく逃げが決まったのは、半分を過ぎてからだった。
兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)、渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム)、孫崎大樹(キナンレーシングチーム)、今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)が抜け出すと、ブリヂストンから強力な2人が出たということもあり、集団から高本亮太(立命館大学)、入部正太朗(シマノレーシングチーム)、小泉響貴(明治大学)、五十嵐洸太(弱虫ペダルサイクリングチーム)、吉岡直哉(さいたま那須サンブレイブ)、谷順成(宇都宮ブリッツェン)がブリッジをかける。
さらに横塚浩平(VC福岡)が単騎で後追いをかけた。これが逃げへの最終便となった。
横塚はこう振り返る。
「うちのチームは乗り遅れたらもう終わってしまうので、かなり後ろからでしたけど1人で頑張って追いつきました。(逃げは)もう各チームほぼ乗っている感じで、あとはBS(ブリヂストン)の2人が乗っていたので決まるだろうなと思って。僕自身としても、後ろで待機してもあまり望みは薄かったので、行けるなら行こうということで」
トラックナショナルチームとして次の遠征を来週に控える今村と兒島だが、今回のクリテリウムは結果を残すのはもちろんのこと、それに向けたトレーニングという意味合いも強かった。また、ブリヂストンとしては予選で全員が勝ち上がれなかったこともあり、決勝ではスプリント要因として集団に河野翔輝を残し、今村と兒島の2人に関しては自由に走ることが許された。
他チームにとって、確実に脅威となった2人が逃げグループに揃ったことで、逃げ始めはローテーションに対して消極的な選手もいたが、周回を追うごとにローテーションはきれいに回るようになっていった。
20周完了時点で、集団と逃げグループとのタイム差は22秒ほど。集団は愛三工業レーシングチームを中心に追走をかけたが、差はなかなか縮まらない。
残り3周時点で逃げとのタイム差は40秒ほど。ほぼ前の逃げ切りが確定した。
残り2周で逃げグループから車間を空けた兒島が一気にアタックを仕掛ける。しかし、逃げ集団はそれをキャッチ。兒島が捕まったタイミングで今度は今村が飛び出すがそれもまた捕まった。今村はこう話す。
「兒島と1回ずつ踏んで、兒島も見られて多分僕も見られていて、よっぽど(後続を)千切りきるほどの脚がなくて」
いよいよラスト1周に突入すると、最初のUターンで横塚が先頭に出る。
「僕自身、後ろ待機でつまらない終わり方はしたくなかったので、脚がなくなってでも前々で行って、最後逃げ切れたらいいかなと思っていて。コーナーを先頭で入って減速して、立ち上がりで一気に差つけて。独走に持ち込めたら自信もあったし、チーム的にもやっぱり後ろは追いたがらないだろうなと思って」
横塚は牽制を利用した。
一方で逃げグループにとどまった兒島は、「(兒島も今村も)二人とも捕まったので集団でラスト一周に向けて待機してたんですけど、そこにうまいタイミングでVCの選手が行ったんで、ちょっと牽制みたいな感じで出遅れちゃって」と話す。
そのままの状態でフィニッシュラインの直線に最初に見えたのは横塚だった。少し間を空けて後ろからは10人の集団が迫る。
若干の上り基調でのフィニッシュとなるため、最後に垂れて追いつかれることも横塚は考えたというが、ラスト50mで後ろを振り返ると勝利を確信。
「自分でも保つどうか微妙な距離と時間を踏んでたんで。でも最後はやっぱり勝てるかもって思ったら最後、踏み切れた感じでした」
逃げ切った横塚は、雄叫びをあげながらフィニッシュラインを切り、クリテリウムチャンピオンの座をつかみ取った。
それぞれの今季の目標
横塚はレース後、「久しぶりの感覚」と語った。聞くと、勝利は2018年のジャパンカップ・オープンレースまで遡るという。
「最近、チーム的にはあんまり結果を求めていなくて、積極的なレースしようとか、目立とうみたいな感じが多かったんで、僕自身今年は結構結果を求めていきたいっていうのがあったので良かったです。久しぶりだったんでうれしいですね」
大学1年生の小泉は、実業団の選手たちと走るのは今回が初めてだったというが、逃げ切りグループに入って2位という結果。学連のクリテリウムなどのレースでは既に結果を出し、今年からさいたま那須サンブレイブに所属する(今回は明治大学でエントリー)。
「あの逃げに乗ったからには、最後はゴール勝負で自分の持ち味出して勝ちたかったんですけど、1人逃げが最後決まってしまって。集団では頭を取ろうと思って走りました。今日はしっかり優勝を目指して走ろうと思っていて、2位という結果になってしまったんですけど、しっかり走れる証明はできたのかなと思ってます」
3位の今村は「せっかくだから勝ちたかった」と漏らす。レーススタートから終始動き続けていた今村や兒島。
パリ五輪に向けてトラック競技に注力する今、クリテリウムやロードレースは絶好のトレーニング機会となり得る。何せトラックで戦うのは、ワールドツアーを走るようなロード選手たちだ。
そんな今村、兒島、橋本などを含むチームブリヂストンサイクリング勢は、3月14日から始まるエジプト・カイロでのトラックネーションズカップ第2戦へと臨む。
3月25日~26日は、静岡県袋井市ではJBCFのレースが、栃木県真岡市と宇都宮市ではJCLのレースが開催される。いよいよ2023年シーズンも本格的にスタートしていく。
第2回 富士クリテリウムチャンピオンシップ リザルト
1位 横塚浩平(VC福岡) 1時間17分37秒
2位 小泉響貴(明治大学) +1秒
3位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) +1秒
周回賞は、小山貴大(群馬グリフィンレーシングチーム)、兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が獲得。敢闘賞は、今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)が受賞した
富士山サイクルロードレース2023 富士クリテリウムチャンピオンシップ
開催日:2023年3月4日(土)・5日(日)
開催地:静岡県・富士市道臨港富士線(通称:青葉通り)富士市役所前特設周回コース(1.8km)
https://fcrr.fujicity.jp/2023/
開催日:2023年3月4日(土)・5日(日)
開催地:静岡県・富士市道臨港富士線(通称:青葉通り)富士市役所前特設周回コース(1.8km)
https://fcrr.fujicity.jp/2023/