JCL2023開幕戦 真岡芳賀ロードレース カーター・ベトルスの独走勝利
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雨の中行われたJCL2023開幕戦。約122㎞のレースの中盤にできた逃げから、さらにラスト10㎞付近で単独アタックをかけたカーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)が逃げ切り、JCL初出場で初優勝を果たした。
桜満開下での雨の開幕戦
3月25日、ジャパンサイクルリーグ(JCL)初戦の真岡芳賀ロードレースが行われた。
コースは、若干のアップダウンがありつつも主に平坦基調。直近2年と同じく栃木県真岡市と芳賀町の一般公道を使用した1周7.2㎞の特設コースを17周する総距離122.4㎞で争われた。
今回のレースには、JCLに加盟するチーム以外にも、群馬グリフィン、イナーメ信濃山形、EQADSが出場した。
また、JCLチーム右京からは、2月に一部のワールドチームも走ったサウジツアーやツアー・オブ・オマーン、ツール・ド・台湾などに参戦したメンバーも急遽参戦が決まった。
その一人である山本大喜(JCLチーム右京)は、「JCLのレースということで、自分たちが盛り上げるという意味でも走りたいなと思ってたので、オープン参加でも参加させてもらえると分かった時点で自分は参加したいと思っていました」と、参戦を自ら志望。連戦の疲れはあったものの観客の前に姿を見せた。
ちょうど桜が見頃を迎えた時季での開催となったものの、当日はあいにくの雨模様。雨脚が強まったり弱まったりすることはあったものの、雨が完全に止むことはなかった。
地元チームの宇都宮ブリッツェンやさいたま那須サンブレイブがスタートライン先頭に並び、12時半に53名の選手たちがスタートすると、しばらくは集団一つのまま周回数をこなしていった。雨により滑りやすくなった路面で集団内では落車も発生した。
逃げに徹した積極的なレース
7周目で、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、岡篤志(JCLチーム右京)、高梨万里王(レバンテフジ静岡)の逃げができ、少し集団と差が開くが、まだ後ろも追いつこうと動きがあり、タイム差はなかなか開かない。
気温も10度前後まで下がり、逃げに入った岡は「寒いので結構自分としてはもうずっと踏んでいたいなという気持ちはあったんですけど。結構コントロールされてたので、あんまりそういう雰囲気ではなく……」と振り返る。
集団にメンバーを残したヴィクトワール広島は、先週行われた西日本サイクルチャレンジロードレースで勝利を収めたばかりのカーター・ベトルスやジャパンカップやツアー・オブ・ジャパンなどを含むアジアツアーで好成績を収めてきているベンジャミン・ダイボールを中心としてプランを組んでいた。
チームメイトの中田拓也は、ダイボールから集団を引いて逃げグループをシャッフルしてくれと頼まれ、そのとおりに実行。3人との逃げの距離を縮めた。8周目には追いつき、逃げのメンバーがまるっと入れ替わった。
今度は山本大喜(JCLチーム右京)、ベトルス、本多晴飛(宇都宮ブリッツェン)、床井亮太(レバンテフジ静岡)が抜け出した。すると後方の集団は一気に横に広がりペースが下がる。タイム差はすぐに1分以上開いた。
「今日はとにかくレースの先頭を走りたかった」と語るベトルスだが、雨のコンディションによる落車回避のためにも逃げに入りたかったと話す。
逃げは4人の中で協調しながらも、山本から見るベトルスは「かなり踏めているなという感覚でローテーションを回していた」そうだ。
集団ではイナーメ信濃山形やスパークル大分が先頭を走る。タイム差は1分半以上開いたがそこから大きく開くことはなかった。
残り4周になると、タイム差は1分程度に縮まった。逃げにメンバーを乗せていないVC福岡、キナンレーシングチームなどが中心となって集団を引き始めたためだった。VC福岡は、先週の西日本チャレンジサイクルロードレースのU23クラスで優勝したばかりの渡邊諒馬にスプリントをさせるべく長い時間集団を牽引し続けた。
残り2周、キナンレーシングチームが集団でペースを上げるとタイム差は縮まっていき、一気に20秒ほどまで近づいた。直線区間では目視できるほどに迫る。そのタイミングで逃げグループからベトルスが単独アタックを仕掛けた。
「集団とのタイム差がどんどん小さくなっていって、集団が近づいてきたら、アタックして自分の力で行こうと思ってたんです。残り10kmくらいになったとき、逃げ集団の他の2人が躊躇していたので、そのときに思い切りアタックしました」
もともと逃げに乗った時点で「エネルギーを節約してから、残り2周か1周くらいでアタックしようと思っていた」と話すベトルスは、残り1周まであと1㎞の補給地点のちょっとした上り区間に単独で現れた。
山本と本多がベトルスを追うが、その後ろから迫るトマ・ルバ(キナンレーシングチーム)率いる集団の方が勢いが良い。ラスト1周に入り、ベトルスのみを先頭に残したまま、集団はそれ以外を吸収した。
ベトルスは踏み続け、勝利に向かって残り距離を縮めていく。
「勝つためのいいポジションにはいました。でも残り2㎞ほどで後ろの集団が見えなくなったときまでは勝てるという自信はなかったんです。それでも脚の感触は良かったので、逃げ切れる可能性は高いと判断しました」
後続に20秒のタイム差を保ったまま、ベトルスは独走でフィニッシュラインを切った。
集団でのスプリント勝負の展開を想定した岡だったが、思うようにベトルスには追いつかず、しびれを切らして単独で集団から勢い良く飛び出したが、先頭に追いつくまでには遅すぎた。
「集団が止まっちゃったので、自分で意を決して飛び出してみたものの届かなかった感じでした。でももうタイム差見てても、これは追いつかないかなっていう気はしてましたね。でもカーター選手があれだけ踏み直せると思ってなかったです。もう脚が違ったなという感じです」
岡は集団よりも少し前で2位フィニッシュ。その後ろの集団では渡邊が3位表彰台を獲得した。
次のUCIレースへ向け
今年ヴィクトワール広島に移籍してきたばかりのベトルスだが、その理由は「日本のレースやアジアのレースが好きだから」。3月中旬に行われたツール・ド・台湾でも積極的な走りを見せていた。
「台湾ではいい感じだったんですが、結果が出なかったのはちょっと不運でしたね。でも幸運なことに日本に戻ってきてから、先週末の西日本チャレンジロードレース、そして今回のこのレースで優勝することができました。コンディションはとてもいい感じです」
今後は、母国オーストラリアに帰り、1カ月少しツアー・オブ・ジャパンそしてツールド熊野に向けて準備を行うとのことだった。
JCLチーム右京は次のレースとして4月初めからのツアー・オブ・タイランドを予定しており、山本や岡も参戦する。その調整の意味もあったが、「適当に走りたくなかったんで、できる今のコンディションでできる限りの、攻める走りをしました。それで勝てなかったというのはちょっと悔しいですけど、でも先に繋がる走りがまたできたのかなとは思います」と山本は話す。
JCLチーム右京内でのセレクションも厳しくなってきていると話す岡は、今後に目標についてこう語った。
「しっかりUCIポイントを、外国人選手ももちろん強いんですけど、日本人選手としても取っていきたいなというのはあります。だから本当に力をつけてかないとアシストになってしまうんで。もちろんチームのために仕事するのもすごく大事で、強くないといけないんですけど。
やっぱりヨーロッパツアーでUCIポイントを取りたいというのが自分としては一番の目標ではあります。そこに向けてフィジカルを伸ばしていかないと点は取れないので、また初心に帰って頑張ります」
三菱地所JCLプロロードレースツアー2023
カンセキ真岡芳賀ロードレースリザルト
1位 カーター・ベトルス(ヴィクトワール広島) 2時間51分56秒
2位 岡 篤志(チーム右京) +20秒
3位 渡邊諒馬(VC福岡) +21秒
チーム賞もヴィクトワール広島が獲得。宇都宮ブリッツェン初期生の中山監督が、「ブリッツェンなくしてヴィクトワールはなかった」と感謝を語った
初戦を終えてのリーダーはカーター・ベトルスに
- ジャパンサイクルリーグ(JCL)
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