Jプロツアー2023第4戦 袋井・掛川ロードレース 雨の中の逃げ切り勝利、今村が2連勝
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静岡県袋井市にて行われたJプロツアー2023 第3、4戦。そこで2連勝を飾ったのは今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)だった。レース展開を振り返るとともに活躍選手の今後の目標を聞いた。
桜雨の中での新レース
3月25日~26日、静岡県袋井市にて全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)によるJプロツアーの第3戦、4戦が行われた。初開催となる小笠山総合運動公園エコパ特設コースでのレースは、小笠山総合運動公園内をぐるっと回る1周6㎞のコースを使用。
コース中のちょっとした坂道の頂上付近では、桜並木が満開に近く見頃を迎えていたが、残念ながら二日間とも雨が止むことはなかった。
初日は10周60㎞の短いレースで、最後に逃げを吸収し、集団スプリント。チームブリヂストンサイクリングの今村駿介と窪木一茂でワンツーフィニッシュを飾った。
二日目は初日よりも強い雨が地面を叩きつける。気温は10度を下回ることはなかったが、風も強く吹きつけた。この日は22周する総距離132㎞。12時47分、多くの選手がレインウェアを着用したままスタートラインを切った。
「今日は逃げを決めたいなと思って」と、1周目の終わり頃から先頭で入部正太朗(シマノレーシング)が集団を抜け出そうと動きを見せる。
公園敷地内のレースということで、道幅が狭いところも多く、舗装や天候の関係上、路面状況が悪い箇所もあったため、前日のレースや他カテゴリーのレースでもパンクや落車が多く発生してしていた。
そのため、少しでもトラブルのリスクを減らせるようにと、集団前方にいた小林海(マトリックスパワータグ)は、「人数が少なくなればと思って踏んでいったら、今村がちょうどいいタイミングでアタックしたので、それで逃げが決まって。作戦的にも僕が逃げる予定ではなかったんですけど。でもこれだったら落車しないだろうし」と、逃げグループに入った。
前日優勝者の今村もまた逃げるつもりはなかったと話す。
「前々で踏んで、どんどんメンバーを絞っていけば、ブリヂストンのメンバーだったら残っているだろうし、そこからが勝負かなと思っていました」と、レース序盤から動いた。
逃げに挑戦していこうと思っていたと話す五十嵐洸太(弱虫ペダルサイクリングチーム)は、「1周目の上りでいいメンバーが行ってるなと思って、自分もチェック入っておこうと思ったらそのまま逃げに入れました」と語る。
結果、2周目には、入部、天野壮悠(シマノレーシング)、今村、小林、五十嵐、新城雄大(キナンレーシングチーム)、小山貴大(群馬グリフィリンレーシングチーム)、伊藤舜紀(シエルブルー鹿屋)、横矢峻(アヴニールサイクリング山梨)の9人が逃げグループが形成された。
集団は、逃げに最も人数を乗せたシマノレーシングがコントロールし、タイム差を開いていく。
5周目には新城がパンクにより逃げグループから離脱し、集団へと戻った。
逃げと集団とのタイム差が2分を超えた頃、集団コントロールは、チームブリヂストンサイクリングとキナンレーシングチームが担う。
8人の逃げと集団とのタイム差が1分を切った13周目、逃げグループから天野が単独アタック。しかしそれはすぐに吸収され、逃げグループはもう一度まとまってペースを上げ、タイム差を開きにいった。その後、入部も1人飛び出すシーンが見られたがそれもすぐに逃げグループに吸収された。
14周目には横矢が、15周目には伊藤が逃げからドロップ。先頭は6人に数を減らしたが、集団とのタイム差は1分10秒にまた開いた。
逃げ切りの展開
18周目の途中では入部が逃げグループから再度アタック。独走態勢に持ち込んだ。それにはいくつか理由があった。
「ラスト5周ぐらいから独走チャレンジしようかなと考えていました。人数が6人まで減っていた状態で、(小林)マリノ選手も脚があるかなと思っていて、後半で2周とかだけで攻めても、結局まとまる可能性が高いかなと思ったのと、一歩早い段階でしばらく独走できれば天野も(脚を)溜められるかなと思ったので。あとは、最後に今村によーいドンでスプリントされたら分が悪いと思ったので、早めから仕掛けました」
入部はこう振り返る。
追走グループに対して20秒ほどのタイム差はつけたものの、ほぼ常に追走から目視できる範囲。特に桜並木の部分では止まりそうになるほどの強い向かい風が吹いた。追走は今村と小林が中心に入部を追う。
19周目完了時点で集団と追走グループのタイム差は1分40秒ほどと再び広がり、逃げ切りは濃厚となった。あとは先頭での順位争い。入部を追った今村はこう話す。
「もう2位争いかなと思ったんですけど、2位、3位を取っても仕方ないなと思って。脚を使って、これで最後、誰かにそのままアタックされたら仕方ないなと思っていました。距離も短いし、残り2周ぐらいだったらどうにかもつかなと思って。でも結構いいペースで走ってたし、折り返しとかでも見えるんで、苦しかったです」
追走がラスト1周の途中で入部を捕らえると、スプリントに持ち込みたい今村を中心に一気に牽制がかかった。五十嵐は一時逃げグループから離れかけたが、牽制がかかる間になんとか追いついた。
一方、スプリントでは勝ち目がない小林は牽制が入っている間、笑ってしまったと話した。
「どう考えても今日は今村が一番強かった。今村も強かったし、入部さんも強かったし。そもそも僕よりこのコース的には今村の方がそもそも強いし仕上がってるし、試してはみるけど、詰んでるよなと思って。そもそも入部さんを捕まえるときにも一番脚があったのもやっぱり今村だったんですよ。なので今日は厳しいなと思って。まあ、できることは全部やろうと思ったんですけど」
5人のグループはペースが落ちたまま、最後のコーナーを曲がると入部が最初に抜け出した。
「入部さんのアタックで最後のスプリントが始まって、まずい!と思ったんですけど、ちょうど2番手を確保できたので、あとはかわすだけっていうように。余裕はなかったですけど、あの中でスプリントあるのは僕かなと自信はありました」と今村は振り返る。
フィニッシュラインでは速度差を十分にもって、今村がトップでフィニッシュラインを切った。
それぞれの目標
トラック競技でオリンピックを目指すチームブリヂストンサイクリングのメンバーだが、既に海外での連戦が続いている状態。
「遠征続きでなかなか練習できてなかったのもありますけど、トレーニングだと思って気持ちは気楽でした。昨日も勝っているので」と今村は話す。また、今回の会場には、トラック中距離コーチのダニエル・ギジゲルも訪れていた。
次戦は4月20日からのカナダ・ミルトンでのトラックネーションズカップ第3戦となる。その後は8日間のステージレースへと戻るツアー・オブ・ジャパン(TOJ)にもおそらく参戦するとのことだった。
チーム全体で調子が上がっている様子だ。競技は違えど、世界を経験してきたばかりの選手たちが国内レースに及ぼす刺激や影響は決して小さくはない。トラック競技への集中強化の成果を、今後のUCIレースでも結果として示すことを期待したいところだ。
今回、ブリヂストン勢に対抗すべく、さまざま展開のきっかけを作った入部だが、今年からシマノレーシングに戻る形で移籍。オリンピックを目指したいという動機から、まだ出場規定も定かではないもののUCIポイントを取る機会があるUCIコンチネンタルチームに入っておく必要があった。また、長年所属したシマノレーシングに戻りたいという思いもあった。
一方でシマノレーシング側としても入部を戻したい理由があった。野寺秀徳監督はこう語る。
「まさに今日やってもらったような、ああいう走りができるスペシャルな人間の1人だからですね。例えば昨日、今日連覇した今村選手もやっぱりスペシャルな選手ですけど、入部も同じようにあのレベルにいる選手だと思います。どこにでもいるただ頑張ってる選手じゃない、一つ上のレベルにいる選手。
シマノレーシングのメンバーももちろんみんな努力をして、強くなっているけど、自分たちの中で成長している、というところで満足をしてしまいがちで。そこでいろんな意味で厳しさを持っている入部に戻ってきてもらって、自分たちの足りないところをさらけ出してもらおうというのが入部を戻した理由です。
今日、入部の走りを賞賛してもらいましたし、僕も素晴らしかったと思ってますけど、ある意味あれはチームが入部に期待する最低ラインですね。今日、天野も決して弱くなかったけど、ちゃんとレースの勝ち負けを対応できる力があれば天野も絶対勝てるような展開であったし、天野の立場になれなかった選手も悔しい思いをしてるでしょうから。入部にはチームの中で感情の起伏というのをもっともっと煽ってきてもらうために戻ってきてもらいました」
近年では若手選手を中心としてきたシマノレーシング。一度チームを離れたベテラン選手が起爆剤となってさらなる成長、そして今年はしっかりと結果を求めていきたいところだ。
昨年Jプロツアーで勝利を量産した小林だが、今シーズンはチームとしてもUCIレースにフォーカスを定めたいと話した。
「まずは一番はTOJを狙ってます。去年よりもきついですし、メンバーも濃いはずなので、去年よりも厳しい戦いになると思うので。そこにコンディショニングもしっかりメリハリつけて今年は上げたいです。
チームが序盤は、アジアツアーに中止になっちゃったりとかでうまく行けなくて。でもシーズン後半にも大事なUCIレースも多いじゃないですか。なので後半、アジアツアーもそうですけど、ヨーロッパにも行ければっていう話を今チームとしています。チームの今の一番の優先順位はUCIレースということにしているので、それにコンディションを合わせていって、大きい成績出したいですね」
各々がそれぞれの目標を定める中で、今シーズンは国内レース、国内UCIレース、そして海外のレースでどのような戦いが見られるだろうか。
JBCF Jプロツアー2023 第4戦 袋井・掛川ロードレースDay2 リザルト
1位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 3時間21分41秒
2位 入部正太朗(シマノレーシング) +0秒
3位 小林 海(マトリックスパワータグ) +0秒
参考サイト:全日本実業団自転車競技連盟(JBCF Jプロツアー)