パリ~ルーベ2023でオランダのファンデルプールが初優勝
北フランスの石畳の道が舞台となる第120回パリ~ルーベ(UCIワールドツアー)が、4月9日にコンピエーニュからルーベまでの256.6kmで競われ、オランダのマテュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)が独走で初優勝を果たした。
28歳のファンデルプールは今年3月にイタリアのミラノ〜サンレモ(UCIワールドツアー)でも初優勝し、ベルギーのロンド・バン・ブラーンデレン(ツール・デ・フランドル/UCIワールドツアー)は既に2回勝っているため、モニュメントと呼ばれる5大クラシックのうちの3つを制した選手になった。
ファンデルプールの祖父はフランスの名選手レイモン・プリドールで、祖父にも勝てなかった ”クラシックの女王” の石畳トロフィーを家族にもたらすことができた。パリ~ルーベは昨年ディラン・ファンバールレ(ユンボ・ヴィスマ)が優勝しており、2年連続でオランダ人が勝利した。
サガンが落車で棄権
第120回大会は175選手がコンピエーニュをスタート。後半には29カ所の石畳セクターが待ち受けていた。スタートから高速レースになり、82km地点で4人が逃げ出すことに成功した。ゴールまでまだ残り151kmあった2カ所目の石畳で、集団で大きな落車事故が発生し、ペテル・サガン(トタルエナジーズ)が棄権した。彼は今季で引退すると表明していて、これが最後のパリ〜ルーベだった。
ユンボ・ヴィスマがアタック
レースが動いたのはゴールまで残り101kmのセクター20の石畳区間だった。ここでユンボ・ヴィスマのウァウト・ヴァンアールトがクリストフ・ラポルトと共にアタックし、ジョン・デゲンコルプ(チームDSM)、ファンデルプール、シュテファン・キュンク(グルパマ・FDJ)、マディス・ミケルス(アンテルマルシェ・シルキュス・ワンティ)が加わり、アランベールの石畳の出口で逃げグループを捕まえて先頭に立った。
集団ではアランベールの石畳で大きな落車事故があり、ディフェンディングチャンピオンのファンバールレやカスパー・アスグレーン(スーダル・クイックステップ)がレースを棄権した。その混乱の中、マス・ピーダースン(トレック・セガフレード)が集団からアタックし、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアズ)、ヤスペル・フィリプセンとジャンニ・ヴェルメールシュ(アルペシン・ドゥクーニンク)らが合流して先頭グループを追走した。
先頭グループではアランベール通過後にラポルトがパンクで遅れてしまった。次のセクター18の石畳でガンナのグループが追いつき、先頭集団は13人に膨らんだ。そこにアルペシン・ドゥクーニンクは3人加わっていたが、ラポルトを失ったユンボ・ヴィスマはヴァンアールト1人だった。
先頭集団はグラベル世界チャンピオンのヴェルメールシュが引き、序盤から逃げていた選手たちは次々と脱落していった。集団からはナタン・ヴァンホーイドンク(ユンボ・ヴィスマ)がアタックし、ラポルト、フロリアン・ヴェルメールシュ(ロット・デスティニー)と共に先頭集団を追ったが、追いつく事はできなかった。
ファンデルプールの攻撃にデゲンコルプが応戦
ゴールまで残り51.5kmのセクター12の石畳でファンデルプールが攻撃を開始。しかし、すぐにデゲンコルプが付いていった。ファンデルプールはアスファルトの道路でも攻撃を続け、先頭はファンデルプール、フィリプセン、デゲンコルプ、ヴァンアールト、キュンクの5人になった。しかし、ピーダスンとガンナも粘り、ゴールまで残り43kmで先頭グループに追いつく事ができた。
ゴールまで残り28kmでフィリプセンは機材故障に見舞われて自転車を交換したが、すぐ先頭グループに戻り、先頭を引く仕事を続けた。好調なデゲンコルプはアタックのチャンスを伺っていたが、アルペシン・ドゥクーニンクを出し抜く事はできなかった。
デゲンコルプが接触転倒
ゴールまで残り16.4kmの、セクター4のカルフール・ド・ラルブルで運命の瞬間は待ち受けていた。先頭を引いていたフィリップセンが右に動いた瞬間に、すぐ後ろを走っていたファンデルプールとデゲンコルプが接触し、デゲンコルプが転倒してしまったのだ。幸い大きな怪我はなく、デゲンコルプは自転車を交換してレースを続ける事ができたが、2015年に続く2度目の勝利のチャンスを失ってしまった。
その混乱の中、ヴァンアールトがアタックしたが、転倒を免れたファンデルプールがすぐに追いついた。遂に永遠のライバルの一騎打ちになったかと思われた瞬間に、ヴァンアールトは後輪のパンクに見舞われてしまい、カルフール・ド・ラルブルの出口でファンデルプールは単独で先頭に立った。
ルーベのヴェロドロームまではまだ15kmあったが、ファンデルプールには勝利の女神が寄り添っていた。ヘムの石畳で彼はコーナーで障害物にぶつかりそうになったが、今年のパリ〜ルーベにはもう番狂わせはなかった。ファンデルプールは後続に46秒差を付けてヴェロドロームに到着し、3つ目のモニュメント・タイトルを手中に収めた。
パンクでチャンスを失ったヴァンアールトは5人のグループで虚しい追走をした後、ゴールまで残り4kmでアタックしたが、同郷のフィリプセンがそれを許さなかった。ヴェロドロームのトラックで、ファンデルプールのゴールを奇しくもすぐ後方で見届けた2人はゴールスプリントを競い、フィリプセンが2位の座を獲得した。
■初優勝したファンデルプールのコメント
「フィリプセンが2位でレースを終えて、今日我々がチームとしてどう走ったかは信じられないほどだ。これ以上は不可能だ。ルーベでワンツーなんて、我々には二度と起こらないだろう。だからこれを最大限に楽しまなければならないね。
今までで最高のクラシック・キャンペーンができた。これが最後のレースで、こんな風に仕上げられるのは夢みたいだ。トレーニングとプログラムをいくらか変更して、改善したと感じている。自分が走る全てのレースで100%を出すために、レース数を減らすよう自分に言い聞かせた。
自転車に乗って今までで最高の1日だったと思う。自分が本当に強いと感じていて、何度か早めにアタックした。けれど他の選手たちを蹴落とすのは難しかった。カルフール・ド・ラルブルでは、デゲンコルプのクラッシュとヴァンアールトのパンクの後、自分が1人でリードしている事に気づき、フィニッシュラインまで可能な限り全力で走った」
第120回パリ~ルーベ 結果
[4月9日/コンピエーニュ〜ルーベ(フランス)/UCIワールドツアー/256.6km]
1. MATHIEU VAN DER POEL (ALPECIN-DECEUNINCK / NED) 05h 28′ 41”
2. JASPER PHILIPSEN (ALPECIN-DECEUNINCK / BEL) + 00′ 46”
3. WOUT VAN AERT (JUMBO-VISMA / BEL) + 00′ 46”
4. MADS PEDERSEN (TREK – SEGAFREDO / DEN) + 00′ 50”
5. STEFAN KÜNG (GROUPAMA – FDJ / SUI) + 00′ 50”
6. FILIPPO GANNA (INEOS GRENADIERS / ITA) + 00′ 50”
7. JOHN DEGENKOLB (TEAM DSM / GER) + 02′ 35”
8. MAXIMILIAN RICHARD WALSCHEID (COFIDIS / GER) + 03′ 31”
9. LAURENZ REX (INTERMARCHÉ – CIRCUS – WANTY / BEL) + 03′ 35”
10. CHRISTOPHE LAPORTE (JUMBO-VISMA / FRA) + 04′ 11”