リエージュ~バストーニュ~リエージュ2023はエヴェネプールが連覇

  • photo ©Soudal Quick-Step / ©Luc Claessen / Getty Images / ©SprintCycling / A.S.O. Maxime Delobe

現存する最古のレースで、モニュメント・クラシックの1つである第109回リエージュ~バストーニュ~リエージュ(UCIワールドツアー)が、4月23日にベルギー南部ワロン地方で開催され、世界チャンピオンでディフェンディングチャンピオンのレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ/ベルギー)が独走で連覇を果たした。
 

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■アルカンシエルを着たエヴェネプールが連覇を果たした (photo : ©Soudal Quick-Step / ©Luc Claessen / Getty Images)

 
2位は1分6秒遅れで英国のトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアズ)、3位はコロンビアのサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)だった。
 

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■左から3位のブイトラゴ、連覇したエヴェネプール、2位のピドコック (photo : ©Soudal Quick-Step / ©Luc Claessen / Getty Images)

 

ポガチャルが落車で棄権

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■有名なサン・ロッシュの丘を上がる集団。この時すでにポガチャルは落車でレースを棄権していた (photo : A.S.O. /Maxime Delobe)

 
第109回大会は25チームの172選手がリエージュをスタート。ユンボ・ヴィスマのサム・オーメンとトッシュ・ヴァンデルサンデは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査で陽性になり、出走しなかった。

スタート前にはアムステル・ゴールド・レース(UCIワールドツアー)とフレッシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)で優勝し、3連覇を期待されていたスロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)と、昨年初優勝したエヴェネプールの対決が注目されていた。一昨年の勝者だったポガチャルは、昨年は身内に不幸があって大会直前にスロベニアへ帰国し、欠場していた。

ベルギーのスポーツTV局スポルザが行った大会前の優勝予想アンケートでも、選択肢が「エヴェネプール、ポガチャル、その他の選手」しかなく、今年はこの2人が絶対的な優勝候補と見なされていた(ちなみにアンケート結果はエヴェネプールとポガチャルに投票するファンがほぼ同数だった)。
 

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■スタート前のポガチャル。絶好調で3連勝を期待されていたのだが… (photo : A.S.O. /Maxime Delobe)

 
ところがその対決は、レースがバストーニュで折り返す手前の85km地点で発生した落車事故のせいで実現しなかった。南部ワロン地方の荒れた道路でミゲル・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト)が前輪のパンクに見舞われて落車し、彼を避けきれなかったポガチャルが巻き込まれてしまったのだ。

フレッシュ・ワロンヌでは、残り21kmの落車事故に巻き込まれるのをかろうじて避けることができたポガチャルだったが、この日は幸運の女神に見放されていた。UAEチーム・エミレーツは3選手が遅れたエースを待っていたが、ポガチャルは左手首に痛みを訴え、そのままレースを棄権した

UAEチーム・エミレーツにプランBはなく、逃げグループを追走する仕事はスーダル・クイックステップが請け負った。昨年は落車で今大会を棄権した元世界チャンピオンのジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)も、終盤は集団を引く仕事を担っていた。 


雨のルドゥトでエヴェネプールがアタック

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■ルドゥトの坂で先頭を引くヴァンウィルデル (©SprintCycling)

 
レース後半は雨が降り始めた。ルドゥトの丘が近づいた、ゴールまで残り36km地点で、昨年3位になった地元ベルギーのクインテン・ヘルマンス(アルペシン・ドゥクーニンク)が機材故障で自転車を交換しなければならず、集団から遅れてしまった。

1.6km続くルドゥトの丘のふもとで、最後まで逃げていた選手たちは吸収され、小さくなった集団は若手のイラン・ヴァンウィルデル(スーダル・クイックステップ)が引き続けた。ルドゥトの丘の路面には、昨年で引退した地元ワロンの英雄フィリップ・ジルベールを応援するペイントがまだ残っていた。

ルドゥトの丘の頂上まで残り200mで、世界チャンピオンのエヴェネプールが満を持してアタックし、ライバルたちにわずかな差を付けて頂上を通過した。すぐにピドコックが合流し、先頭は2人になった。しかし、新しくなったコースで『11カ所の丘』には数えられていなかったコルネモンの丘で、ピドコックはエヴェネプールのスピードに付いて行けなくなってしまった。

ゴールまではまだ30km残っていたが、エヴェネプールは昨年もルドゥトの丘でアタックし、29kmを独走で逃げ切っていた。チームのパトリック・ルフェーブルGMはレース後のインタビューで、ルドゥトの丘でアタックしたのは計画どおりだったと言っていた。
 

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■ルドゥトの丘を先頭で越えたエヴェネプール。すぐ後方にピドコックが続いていたのだが… (photo : A.S.O. /Maxime Delobe)

 
エヴェネプールは残り19kmで、追走グループに1分以上の差を付けていた。追走グループでは最後に越えたロッシュ・オー・フォコンの丘で、絶好調のベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックし、ピドコック、ブイトラゴと共に表彰台争いのグループを形成した。

雨の中、エヴェネプールはそのまま30kmを独走で逃げ切り、両手を広げてリエージュのフィニッシュラインを通過した。ラ・ドワイヨンヌ(長老)の愛称を持つリエージュ~バストーニュ~リエージュでは、これまでゼッケン1を付けて参加した世界チャンピオンは負けた事がなく、エヴェネプールは1972年にエディ・メルクス(ベルギー)がやってのけたその快挙を見事に受け継いでみせた。

追走の3人は表彰台争いのゴールスプリントを競い、ピドコックが2位になって初めてモニュメント・クラシックの表彰台に上がった。3位はブイトラゴで、スプリントを得意としないヒーリーは4位に終わった。

■連覇を果たしたエヴェネプールのコメント
「今日は非常に厳しいコンディションで、物凄くタフなレースだった。リエージュで2戦2勝は素晴らしい。最初のリエージュはサプライズだったが、この2回目は目標だった。とりわけこのジャージを着て、こんな風にレースで勝つのは常に特別だ。額に入れて自宅にかけるために、この写真が欲しかった。

チームはとても強く、最初からUAEと一緒に(レースを)コントロールしていたが、ポガチャルがクラッシュした後は我々でコントロールしなければならなかった。我々は完璧な仕事をして、ボクはそれを仕上げなければならなかった。

我々のプランAはルドゥトとコルネモンでアタックする事で、プランBはロッシュ・オー・フォコンの頂上で差を作る事だった。ルドゥトではヴァンウィルデルが非常に速いペースで引いた。後ろを見たら、たった5人しか自分の後ろにはいなかった。それでペースが非常に速いのだと理解し、アタックできれば逃げられるだろうと思った。そこからゴールまで、全力で走る事が全てだった」
 

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■リエージュでゼッケン1を付けた世界チャンピオンは必ず勝つ (photo : ©Soudal Quick-Step / ©Luc Claessen / Getty Images)


■第109回リエージュ~バストーニュ~リエージュ 結果

[4月23日/ベルギー/UCIワールドツアー/258.1km]
1. REMCO EVENEPOEL (SOUDAL QUICK-STEP / BEL) 06h 15′ 49”
2. THOMAS PIDCOCK (INEOS GRENADIERS / GBR) + 01′ 06”
3. SANTIAGO BUITRAGO SANCHEZ (BAHRAIN VICTORIOUS / COL) + 01′ 06”
4. BEN HEALY (EF EDUCATION – EASYPOST / IRL) + 01′ 08”
5. VALENTIN MADOUAS (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 01′ 24”
6. GUILLAUME MARTIN (COFIDIS / FRA) + 01′ 25”
7. TIESJ BENOOT (JUMBO-VISMA / BEL) + 01′ 37”
8. PATRICK KONRAD (BORA – HANSGROHE / AUT) + 01′ 48”
9. SKJELMOSE MATTIAS JENSEN (TREK – SEGAFREDO / DEN) + 01′ 48”
10. MARC HIRSCHI (UAE TEAM EMIRATES / SUI) + 01′ 48”
 

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(photo : A.S.O. /Maxime Delobe)

 

リエージュ~バストーニュ~リエージュ公式サイト

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