2023全日本トラック2日目 レース種目 優勝者たちが見つめる先
目次
静岡県伊豆市・伊豆ベロドロームにて2023年5月12日～15日の日程で開催される第92回全日本自転車競技選手権大会トラック・レース。２日目は、短距離種目は男女スプリント、中距離種目は男子マディソン、女子オムニアム、男子スクラッチが行われた。
スプリント
２日目は、朝10時から男子スクラッチの予選を2組分やった後、男女ジュニアカテゴリー、男女エリートカテゴリーそれぞれのスプリントの予選、200mフライングタイムトライアルが行われた。
8人出走の女子エリートでトップタイムを出したのは佐藤水菜（チーム楽天Kドリームス）。10秒724で、大会新記録を更新した。
24人が出走した男子エリートでもまた、太田海也（チーム楽天Kドリームス）が大会記録を0.01秒上回る9秒617というタイムで走り、予選1位に。
200mTTでトップタイムを出した佐藤水菜は大会記録更新
同じく太田海也もTTで大会記録を更新した
その後、予選の結果から男子エリートは1/8決勝、1/4決勝、1/2決勝で絞られていき、1-2位＆3-4位決定戦へと進んだ。
女子エリートとジュニアカテゴリーでは、人数の関係により1/2決勝から、1-2位＆3-4位決定戦へと進んだ。なお、1/4決勝からは先に2勝した方が勝ちの最大3回戦ずつで争われた。
決勝は太田と中野の対戦
男子エリートで決勝へと勝ち進んだのは、太田と中野慎詞（チーム楽天Kドリームス）。1回目は太田が先行したまま勝利。2回目は、前を走る中野を太田がイン側から一気に抜き去り、大きな差を保ったままフィニッシュラインで優勝を確信。右手を大きく掲げ、初めてのスプリント種目での全日本チャンピオンに輝いた。
「去年スプリントで1回戦落ちをしてしまって、自分の中では帰ってYouTubeで先輩たちの走りを見るのも悔しくて、もう本当に絶対今回だけは取りたいという気持ちで走っていたので、とりあえず優勝をできてうれしく思います」と太田は語る。
また、競輪選手としては同期の中野との戦いについて、「公式戦でやるのは初めてで、ナショナルチームの中の練習でもやったことないぐらいなので、なんだか一番不安で、相手が何してくるかもわからなかった。本当に強かったし、もっともっとお互いに頑張って上を目指していければいいなと思いました」とは話す。
中野の動きを注視する太田
太田は、スプリント1戦目では落車もあり、精神的に追いつかない面もあったと話し、今回で課題も多く見つけたようだ。その中でつかんだ優勝についてこう語った。
「今日1日通して見てもらったらわかると思うんですけど、ナショナルチームはみんながすごい力を持っていて、誰が勝ってもおかしくないという中でレースをしていて、本当にチームの総合力が上がってるんじゃないかなと自分では思うので、その中でちゃんと勝ち切ることができて、自分の中ではすごい感情が出てきてうれしくなりました。この中で、来年のパリに向けてしっかり勝って勝って、枠を取れるように頑張っていきたいなという気持ちがありました」
1/2決勝では久米詩（JPCA）との対戦となった佐藤
女子の決勝は、佐藤対アジアチャンピオンジャージを着用する太田りゆ（チームブリヂストンサイクリング）となった。1戦目を先行した佐藤が取り、2戦目をフィニッシュライン間際で捲った太田が取り、3戦目へともつれ込んだ。
女子エリートの決勝は太田対佐藤
3戦目は、佐藤が先頭のままラスト1周に入り、太田を近づけないままフィニッシュラインを切り、佐藤がスプリントでのチャンピオンジャージを獲得した。
「まずアジアチャンプの太田りゆ選手を倒して日本一にならないと、（6月のアジア選手権で）アジアチャンプになれないなというふうに自分を奮い立たせました。本当に2本目は力負けしてしまったんで、3本目どうにか頑張ろうと思って、しっかり勝てたのですごく自信になりました」と佐藤は語る。
さらに、勝因については、「走り終わって思ったのは、日々のハロン練習で、上バンクも全力で頑張るっていう、本当に細かいところなんですけど、そういった練習をしているところが今日のレースに生きたのかなと思います」と話した。
勝利のガッツポーズを観客に見せる佐藤
前日、女子チームスプリントのエキシビジョンにて、3走のために750mを2本走り、「本番の海外のレースの実践練習みたいな感じ」と刺激が入ったと言う佐藤。
今後のアジア選手権、さらには世界選手権でスプリントを走る機会があるかどうかはまだ定かではないが、佐藤は、「出られるときはまた優勝狙って頑張りたいと思います」と語った。
男子スプリント リザルト
1位 太田海也（チーム楽天Kドリームス）
2位 中野慎詞（チーム楽天Kドリームス）
3位 寺崎浩平（チーム楽天Kドリームス）
女子スプリント リザルト
1位 佐藤水菜（チーム楽天Kドリームス）
2位 太田りゆ（チームブリヂストンサイクリング）
3位 梅川風子（チーム楽天Kドリームス）
男子ジュニアスプリント リザルト
1位 杉浦颯太（千歳高校）
2位 松岡勇斗（松山学院高等学校）
3位 大塚 城（静岡星稜高校）
女子ジュニアスプリント リザルト
1位 北岡マリア（内灘高等学校）
2位 室谷榎音（青森商業高校）
3位 松崎光優（松山学院高等学校）
女子オムニアム
女子オムニアムをスタートする梶原悠未
オムニアムは、インターバルを挟みながらスクラッチ、テンポ、エリミネイション、ポイントレースの4種目を一人で走り、最もポイントを獲得できた人が優勝となるレース。女子オムニアムには6名が出走した。
前日の単独のスクラッチで優勝した梶原悠未（TEAM Yumi）が、怪我明けながらも序盤からやはり強さを見せる。
着実にポイントを重ねる梶原
内野や池田、垣田真穂が飛び出すシーンも見られた
梶原は、スクラッチ、テンポ、エリミネイション全てでトップ通過し、迎えたポイントレース。
中盤以降に池田瑞紀（チーム楽天Kドリームス／早稲田大学）の独走や終盤の内野艶和（チーム楽天Kドリームス）の猛攻もあったが、梶原は全てのポイント周回で着実にポイントを獲得し、余裕を保ったままフィニッシュ。今大会での全日本チャンピオンジャージの2枚目を獲得した。
サポーターから花を受け取り、喜びを見せながら周回する梶原
直近では落車による負傷が続き、レースを途中で降りざるをえない場面が多かった梶原だが、ゴールすることが当たり前ではないと感じたという。
「たくさんの方に無事を祈ってもらって、勝つことを信じてもらって、サポートしてもらって、やっと最後までゴールできて、こうやって勝つことができるんだっていうことを、本大会で感じることができたので、一つ一つ感謝の気持ちを持って、わくわくした気持ちを忘れないように心がけて、ここから先は全ての大会で優勝できるように頑張りたいと思います」と話した。
現状の調子としては、「先月、4月下旬のカナダ・ミルトンのネイションズカップでも落車をしてしまって、そこから1週間はリハビリに努めていたので、本当にこの大会の1週間前にやっとトレーニングに戻ることができた状態でした」とのこと。
梶原が目指すのはパリオリンピックでのオムニアム金メダル。そのためにまずは6月のアジア選手権、そして8月の世界選手権での金メダルを狙う。
女子オムニアム リザルト
1位 梶原悠未（TEAM Yumi） 149pts
2位 内野艶和（チーム楽天Kドリームス） 139pts
3位 池田瑞紀（チーム楽天Kドリームス／早稲田大学） 126pts
男子マディソン
チームブリヂストンサイクリングの4組が同時にハンドスリングするシーンも
２日目の中距離種目の最後には、男子マディソンが行われた。マディソンは、2人の選手がハンドスリングと呼ばれる手をつないでの交代をしながら10周回ごとに訪れるポイント周回でポイント数を争う種目。男子マディソンは、120ラップ、30㎞で争われた。
合計6チームが出場し、そのうちの4組はチームブリヂストンサイクリングのメンバー。アジアチャンピオンジャージを着用する窪木一茂、今村駿介のチーム以外は、テストのために新しい組み合わせでのペアでの構成となった。
窪木・今村ペアは全てのポイント周回で着に絡んだ
ポイント周回に合わせてスプリントに向け、しっかりと窪木・今村ペアは交代を行なっていく。フィニッシュ以外のポイント周回で1位を逃したのはたった1回のみだった（それでも2位）。
橋本英也、山下虎ノ亮ペアなども食らいつこうとするが、なかなか噛み合わないようなシーンも見られた。
2位となった橋本、山下ペア
3位となった松田祥位、河野翔輝ペア
4位の兒島直樹、岡本勝哉ペア
窪木・今村ペアは2位以下に大きな差をつけて勝利を飾った。今回の勝利については、「最低限の結果」と今村は話す。さらにこう続ける。
「今まで毎試合走るたびに課題と、できたこと、できなかったことを毎回ちゃんとすごく見つめていて、こういった国内でのちょっとレース形態が違う場面でもしっかりと、これをやろうねというのをちゃんと意識を持ってやれているというのが、少しずつ得られているものがあるのかなと思います」
優勝した窪木と今村が集まった観客に手を振る
一方で、チームパシュートのとき同様窪木は、今回の全日本でのレースをテストの場と考えていたそうだ。
「もちろん世界で勝負することが、僕たちに求められてることなので、今回の勝利は絶対だったと思うんですけど、どちらかというと自分は日本で走るマディソンをすごく楽しみながら、挑戦だったり、もちろん失敗もしてもいいかなという感じで、楽しみながら走りました」
また、窪木は、「マディソンを走れないと、オムニアムも走れないと思うので、やっぱりマディソンにもっと注目してもらえるように結果を出していきたいですね」と話す。
窪木、今村共に今後の目標として挙げたのは「世界選手権でのメダル」。オリンピック前年の世界選手権というのは例年、とんでもなくレベルが上がる。そこでメダルが取れたとしたらそれはこれまででは考えられないような計り知れない快挙であり、世界と戦えるという何よりの証拠となる。
ネイションズカップでのメダルを機に期待が掛かっている男子マディソン。今からでも注目しておいて損はないはずだ。
男子マディソン リザルト
1位 チームブリヂストンサイクリングA（窪木一茂、今村駿介） 57pts
2位 チームブリヂストンサイクリングB（橋本英也、山下虎ノ亮） 30pts
3位 チームブリヂストンサイクリングD（松田祥位、河野翔輝） 25pts
男子スクラッチ
フィニッシュは集団スプリントに持ち込み、そのまま橋本が優勝
15㎞で争われた男子エリートのスクラッチ。河野翔輝（チームブリヂストンサイクリング）がラスト2kmを切って単独で飛び出したが、ラスト2周で吸収。スピードに乗った集団のまま、先頭でスピードを上げた橋本英也（チームブリヂストンサイクリング）がそのままフィニッシュラインを切った。
橋本の優勝を祝福する選手たち
「日本チャンプはやはり日本で一番の称号なので、やはり世界で戦う上で、日本でトップになる必要はあるなと思いますので、今回無事に優勝することができてよかったです」と橋本はコメントした。
男子スクラッチ（15㎞）リザルト
1位 橋本英也（チームブリヂストンサイクリング） 17分4秒50
2位 窪木一茂（チームブリヂストンサイクリング） ＋0秒
3位 今村駿介（チームブリヂストンサイクリング） ＋0秒
男子ジュニアスクラッチ（10㎞）リザルト
1位 丸山留依（静岡北高校） 11分57秒48
2位 森田叶夢（京都産業大学） ＋0秒
3位 児玉誠虎（六甲アイランド高校） ＋0秒
【レースの模様はこちらから】
第92回全日本自転車競技選手権大会トラックレース
開催日時：2023年5月12日（金）〜15日（月）
開催場所：伊豆ベロドローム（静岡県伊豆市）
出場選手：日本代表メンバー、パラサイクリング日本代表メンバーなど
実施種目：オリンピック採用全種目（6種）を含むトラック競技の全種目
有観客：有料チケット制
当日券：1200円
18歳までは無料（高校生は無料）
ライブ配信：
楽天Kドリームス公式 にじいろ競輪TV
