ツアー・オブ・ジャパン2023 第3ステージいなべ ヴィクトワールのベトルスがUCIレース初勝利
目次
少人数での逃げ切りレース
5月23日、ツアー・オブ・ジャパン2023(TOJ)第3ステージは三重県いなべ市でのいなべステージ。
三岐鉄道北勢線の終着点である阿下喜駅前をスタートし、いなべ市梅林公園周回コースの途中に入り、一度コントロールラインを通過してから1周14.8㎞の周回コースを8周する総距離127㎞。獲得標高は1650mだ。
今回は、2周回目、5周回目に山岳ポイントが設定され、3周回目、6周回目にスプリントポイントが設定された。
前日の夜に降り始めた雨は当日の朝までには一度止んだが、空にはどんよりと暗い雲が立ち込め、スタート前に一度強い雨が降った。しかし、9時30分のスタート時間にはそれも上がり、徐々に強い日が差し込み始めた。
前日に6人がDNFとなり、90人がスタート地点につく。
前日までの結果より、リーダージャージはゲオルギオス・バグラス(マトリックスパワータグ)、スプリント賞ジャージを岡篤志(JCLチーム右京)、山岳賞ジャージを兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)、新人賞ジャージをルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)が着用し、先頭へと並んだ。
リアルスタートが切られると、アタック合戦が始まる。しかし、長い間はかからずにケヴィン・マッカンブリッジ(トリニティ・レーシング)とカーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)が2人飛び出し、集団と間が開き始めた。
そのまま周回コースの途中へと入り、コントロールラインを過ぎると1周目に入った。その時点で、先頭2人と集団とのタイム差はまだ10秒ほど。
集団はまだ追おうとするメンバーが少し前に出るが、統率が取れない様子。リーダーチームであるマトリックスパワータグがコントロールし、集団を落ち着かせる形となり、1周目後半には集団とのタイム差は1分15秒まで開いた。
2周目に入り、1回目の山岳ポイントは特に争うことなくベトルス、マッカンブリッジと先頭の2人が通過し、その後、集団の中から山岳ジャージを着る兒島が一人飛び出して1ポイントを重ねた。
4周目に入る時にはタイム差は4分まで広がった。その頃までは集団を牽引していたマトリックスパワータグだったが、その後先頭を譲った。マトリックスの小林海はこう振り返る。
「僕たちはステージを狙いたかったので、リーダーチームですし、最初は落ち着かせてレースが秩序あるようにしたんですけど、なかなか他のチームが(牽引に)入ってこなかった。危機回避(の意味)もありましたね。
半分ぐらい行ったら、どこのチームも入らないならもう(集団コントロールを)止めちゃおうかっていう話になって。他のチームも終盤に入ってきたけど、もうちょっと差が開き過ぎちゃいましたね」
5周目に設定された2回目の山岳ポイントもベトルスが先頭通過し、次点がマッカンブリッジ。集団からは、チームメイトに引かれた兒島がまた1ポイントを獲得し、ベトルスに対して2ポイント差でこの日の山岳ジャージをキープした。
山岳ポイントが終わってからは集団牽引をトレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチームが代わる。さらに愛三工業レーシングチーム、シマノレーシングも牽引に加わり始める。
残り3周時点でまだ逃げ2人と集団とのタイム差は3分40秒。JCLチーム右京もポイント賞ジャージを着る岡を先頭に集団を牽引する。
残り2周でタイム差を3分20秒、残り1周半で2分45秒と、トレンガヌ、キナンレーシングチーム、JCLチーム右京がコントロールする集団が縮めていく。
最後の1周を前に、マトリックスパワータグが小林を先頭にしてホセ・ビセンテ、フランシスコ・マンセボの総合を守るために危機回避の集団牽引。ラスト1周で先頭との差は1分50秒ほどとなった。
先頭では、激坂区間を抜けた山岳ポイント付近でベトルスが一人飛び出し、速度を上げる。残り2.5kmで集団とのタイム差はまだ1分あった。逃げ切りは確定した。
JCLの初戦の真岡芳賀ロードレースでも逃げグループから最後に一人抜け出し、勝利を収めているベトルス。初出場のTOJで、オープニングラップから逃げ続けたベトルスが勝利を掴んだ。
ステージ優勝 ベトルス
チームメイトのベンジャミン・ダイボールとともに総合を狙うべくTOJに臨んだベトルス。コンディションはとてもいいと話す。しかし、前日のステージでの下りで落車し、タイムを失ったために、「今日は逃げを打とうと考えていた」。
2人という逃げグループの人数に対して、「本当はもう少し逃げのメンバーが欲しかった」と話すが、タイム差をキープしながら最後には独走へと持ち込んだ。
「残り1周の時点で集団とのタイム差は2分半ほどあったから、勝利のチャンスはあると思ったんだ。僕はただ一生懸命に坂を上って、もう一人のライダーが落ちてからは、僕はできる限りを尽くしてゴールを目指した。でも、最後の7kmは向かい風で、非常に難しかった。
最終ラップのためにエネルギーを蓄えて、できる限りハードに走ったよ。集団と差を開いていられたのはとてもラッキーだったね。
今日は一日中、痛みに耐えながら、懸命にプッシュした。とてもハードだった。でも、最終コーナーを曲がって、200mほどでフィニッシュが見えたときに、やっと勝利を確信できた。とても幸せな気分だ」
翌日以降のステージ勝利もまた狙いたいと話す。
「絶対に挑戦し続けるよ。富士山ステージに行く前に、もう一つステージを勝ち取りたいところ。富士山の後は、かなり難しそうだから。エスケープでまた勝てる可能性があると思うし、僕もエスケープに挑戦するつもりだ。でも、今日は脚がかなり疲れているだろうから、明日は楽な一日になるかもしれないね」
総合首位 ランパーティ
終盤は常に集団の前の方に位置取っていたルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)。集団スプリントで頭を取って2位フィニッシュとなった。ボーナスタイム-6秒を獲得したことで、再び総合首位に返り咲いた。
今日のレースについてこう振り返る。
「ケヴィンが逃げに乗ったことで、チームが集団先頭を走る必要がなくなったのは、いい動きだったと思う。
今日は、誰かが逃げに入って、そのまま勝利に繋げるというのが最初のプランだったんだけど、ケヴィンが最後に千切れてしまったために自分が追い上げてスプリント勝負に行って、集団の中でいいポジションでフィニッシュすることができた」
リーダージャージをキープする意向は引き続き特にないと話す。
「やはりどんな選手にとってもそのリーダージャージをキープするということは素晴らしいことだと思う。総合優勝が僕の目標ではないけれど、リーダージャージを着られるというのはうれしいことだね」
明日の美濃ステージは9時15分からレーススタート。
中継はこちらから。
ツアー・オブ・ジャパン 第3ステージ いなべ リザルト
1位 カーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)3時間15分29秒
2位 ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)+18秒
3位 イエルン・メイヤス(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)+18秒
総合順位
1位 ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)6時間1分55秒
2位 ジャンバルジャムツ・セインベヤール(トレンガヌ・ポリンゴン・サイクリングチーム)+2秒
3位 ゲオルギオス・バグラス(マトリックスパワータグ)+4秒
スプリント賞
ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)42pts
山岳賞
兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)12pts
新人賞
ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)
TOJ2023ステージ詳細
8日間の総走行距離は、722.3㎞。総獲得標高1万232mとなる。
第1ステージ【堺】
5/21(日)13:35
大仙公園周回コース
2.6㎞(個人タイムトライアル)
獲得標高 = 10m
第2ステージ【京都】
5/22(月)9:45
普賢寺ふれいあいの駅→けいはんなプラザ周回コース
<パレード6.6㎞> + <2.8㎞ + 16.8㎞ × 6周 =103.6㎞>
獲得標高 = 1,836m
第3ステージ【いなべ】
5/23(火)9:30
阿下喜駅前→下野尻交差点→いなべ市梅林公園周回コース
<パレード3.1㎞> + <8.6㎞ + 14.8㎞ × 8周 =127.0㎞>
獲得標高 = 1,650m
第4ステージ【美濃】
5/24(水)9:15
旧今井家住宅前→横越→美濃和紙の里会館前周回コース
<パレード4.0㎞> + <11.3㎞ + 21.0㎞ × 6周 =137.3㎞>
獲得標高 = 1,218m
第5ステージ【信州飯田】
5/25(木)10:00
下久堅小学校グラウンド前→下久堅周回コース→下久堅小学校グラウンド前
<パレード1.7㎞> + <10.8㎞ + 12.2㎞ × 9周 + 0.3㎞=120.9㎞>
獲得標高 = 2,580m
第6ステージ【富士山】
5/26(金)11:00
道の駅すばしり→ふじあざみライン→富士山須走口5合目
11.4㎞(一斉スタートヒルクライム)
獲得標高 = 1,160m
第7ステージ【相模原】
5/27(土)8:50
橋本公園→旧小倉橋→串川橋→鳥居原ふれあいの館前周回コース
<パレード4.8㎞> + <10.9㎞ + 13.8㎞ × 7周 =107.5㎞>
獲得標高 = 1,728m
第8ステージ【東京】
5/28(日)11:00
大井埠頭周回コース
<パレード3.8㎞> + <7.0㎞ × 16周 =112.0㎞>
獲得標高 = 50m
■ツアー・オブ・ジャパン2023公式サイト
■サイスポ・トピックス:
2022TOJ総括 コロナ禍収束第一歩での現在地
2022TOJ総括 コロナ禍収束第一歩での現在地