ツアー・オブ・ジャパン2023 第4ステージ美濃 集団スプリントを制したランパーティが今大会2勝目
目次
美しい町並みをスタート
5月24日、ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)も折り返しの4日目。
岐阜県美濃市にて行われた第4ステージは、江戸時代初期の建造物が残る”うだつの上がる町並み”の中、美しい庭を持つ旧今井家住宅前をスタートし、美濃和紙の里会館前周回コースに途中から入り、コントロールラインから1周21㎞の周回コースを6周する全137.3㎞のコースで争われた。獲得標高は1218m。
今回は、2周目と4周目に山岳ポイント、同じく2周目と4周目のコントロールラインにてスプリントポイントが設けられた。なお、山岳ポイントは、周回コース中のコントロールラインまでラスト5㎞を切ったところの大矢田もみじトンネルを抜けた先に設定された。
この日は朝から雲一つない青空が広がり、気温は25度前後と高くないものの、真夏のような強い日差しが体感温度を上げた。
前日の結果より、ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)がリーダージャージ、ランパーティの繰り下げで前日の優勝者であるカーター・ペトルス(ヴィクトワール広島)がスプリント賞ジャージ、山岳賞ジャージを兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)、新人賞ジャージもランパーティの繰り下げでリアム・ジョンストン(トリニティ・レーシング)が着用して、多くの観客が詰めかけたスタートライン先頭へと並んだ。
リアルスタートが切られ、山岳ポイントを狙う兒島らを中心にアタック合戦が始まる。
1周目に入る前、山岳ポイント前のトンネルにて、メトケル・イヨブ(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)がアタックすると、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)と山岳賞を狙うと話していた中井唯晶(シマノレーシング)がつき、逃げグループを形成。その後、窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)が合流した。
そして、コントロールラインまで近くなってきた頃、集団から兒島が逃げへの最終便として飛び出した。
兒島はこう振り返る。
「最初に僕がアタックしてたんですけど、うまく逃げが決まらず集団で休んでいたら、中井選手を含む3人の逃げができてしまって、そこで窪木選手が前にジョインしてくれて。もう1人選手が一緒に行って5人になって、窪木選手が(逃げグループを)止めながら立ち回ってくれたので、僕も集団から抜け出してジョインすることができました。窪木選手は僕がジョインした段階で(集団に)下がった形でした」
一方で、先に逃げに出ていた中井は、「兒島くんが乗れなかったから、窪木さんが阻止しに来たのかなと思ったら、入れ替わっていて。あぁ、また今日も勝負だなと思って」と、兒島との勝負を覚悟した。
1周目に入るタイミングで、メイン集団のリーダーチーム、トリニティ・レーシングが意図的にペースを落とし、イヨブ、中井、ロレンツォ・ディカミッロ(ソフェロ・サヴィーニ・デュー・オムズ)、阿部、兒島の5人の逃げを容認する形で間を開いた。そこから半周でタイム差は1分に広がった。
2周目に入る前のタイミングでイヨブがメカトラブルで1人遅れ、逃げは一時4人となったが、その後、問題なく合流。1回目のスプリントポイントはディカミッロ、兒島、中井の順で通過した。
集団からは1人ルスラン・アワイエフ(アマルティ・アスタナ・モータース)が抜け出している状態がしばらく続いたが、逃げグループに追いつくことなく吸収された。
前5人の逃げと集団とのタイム差は2分半に広がった。
最初の山岳賞は、トンネル内での兒島と中井の争いとなったが、兒島が先にトンネルから姿をあらわし、小さくガッツポーズでトップ通過。
集団とのタイム差は3周目に入る時点で最大の4分半まで開いた。集団は、トリニティ・レーシングがコントロール。リーダーチームとして、というよりもこの日のステージ勝利のために牽引を続けた。
逃げ5人と集団の構図は変わらないまま、4周目に入るところでのスプリントポイントはディカミッロ、阿部、中井の順で通過。
トリニティ・レーシングが牽引する集団は、タイム差3分44秒と少し縮め始めた。スプリント勝負をしたいマトリックスパワータグとEFエデュケーション・NIPPO・ディベロップメントチームも集団牽引に加わる。
2回目の山岳ポイントに向けて上り区間に入ると、兒島の後ろに中井がぴったりとマーク。兒島は振り切ろうとするが、トンネルを抜けた先は兒島と中井の横並びのスプリントで、兒島が2回目の山岳ポイントも1位通過。
「今日も昨日ほど勾配もきつくなかったので、スピードがある僕が有利だったのかなと思います」と兒島は話したが、一方の中井は「やっぱり(兒島は)もがけますよね。上りも上れるし、スプリントになったら勝てないし、どうしようかな、みたいな。でも逃げないことには始まらないんで、毎日チャレンジしていきます」と舌を巻く。
4日間の山岳ジャージ着用を決めた兒島は、明日の厳しい上りが続くステージでもポイント獲得に意欲を示す。
「去年、一度走ったコースでもあるので、どのぐらいのキツさ、というのもわかっているので、その中で取れるだけポイントを加算できればいいなと思っています」
チーム力を覆したスプリント
5周目後半、タイム差は2分に縮まり、さらに最終周に入ると、一気に50秒まで縮まった。
最終周に入ってからすぐに兒島、阿部、中井は踏みやめたが、イヨブとディカミッロは諦めずに先頭を走る。
しかし、タイム差は40秒、30秒とどんどん縮まっていく。ラスト9㎞のところで、1周目から逃げ続けた2人は集団につかまった。
集団は横いっぱいに広がって、位置取りを始める。先頭には危険回避のためかJCLチーム右京、キナンレーシングチームなども上がってきた。
残り3㎞手前でトレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチームの選手がアタックしたが、すぐに集団がキャッチ。
残り2㎞のL字コーナーをチームブリヂストンサイクリング4人が先頭で通過。スピードが上がり、縦一列棒状になったまま集団は板取川にかかる睦橋を渡って、最終コーナーへ。
フィニッシュラインへと続くストレートに入ると、先頭からチームブリヂストンサイクリング3人の後ろに黒枝咲哉(スパークルおおいた)、そして愛三工業レーシングチームの3人の並びでラスト1㎞を通過。
今回のレースでホームチームであった愛三工業レーシングチームは、岡本隼での集団スプリント勝負一本に絞っていた。
「追い風だったので、そこからスピードを落とさないよう當原選手に思いっきり行ってもらって。僕の前には、草場(啓吾)もまだ1枚残ってたんで、これ以上ない形だったんですけど」と岡本は振り返る。
愛三工業レーシングチームの先頭を走っていた當原が先頭へと並びかけるが、今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)が張り合い、前に出させなかった。
窪木のスプリント勝利を目論んだチームブリヂストンサイクリングとしても最高の形だったと窪木は言う。
「(L字コーナーを)左に曲がるところの前で、4人全員で前。最終コーナーも3人で前。最高のシチュエーションだった。もう作戦通りで全部行って。僕も最高のかかりで、絶対いけると思ったんですけど……」
一列棒状だった集団はラスト300m、横に広がった。ブリヂストン隊列からは今村から発射された窪木、愛三工業レーシングチーム隊列からは草場から発射された岡本、京都ステージを勝っているゲオルギオス・バグラス(マトリックスパワータグ)やロードレース3日間全てで3位以内でフィニッシュしているイエルン・メイヤス(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)もスプリントを開始。
一足遅く、メイヤスの後ろからラスト150mを過ぎて飛び出してきたランパーティが一気にたたみかけ、先頭で先にハンドルを投げた窪木を捕らえ、1位でフィニッシュラインを切った。
フィニッシュラインを切ってからガッツポーズをした窪木だったが、結果は2位。悔しさが溢れた。
「最後抜けちゃったかな。でもそんな早く行ってないと思うんですけど、垂れちゃったのかな……悔しい……ランパーティ、強かったですね」
岡本は5位に沈んだ。
「これ以上ない形で、そこまで脚も使ってチームとしてまとまって行けて、その中で出した結果なので、ここで満足することはできないですけど、最終ステージまで戦う一つのステージとしてはかなり良い形で終えられたんじゃないかなと思います。あとは細かいところをもう一回整理して、できる修正があると思うんで、最終まで戦いたいと思います」と話した。
優勝したランパーティは、スプリントの距離が長くなるこのレイアウトから、「早く出過ぎないようにということで、少し待った」という。
「他のチームが人数を揃えていたから大変だったんだけど、最後の1㎞ぐらいで脚を使ってスピード上げた。最後にスプリントをかけたのはちょっと遅いタイミングになったけども、それがうまくいった。
でも、最終的には本当に接戦で、ゴールしたときには誰が勝ったのかさえわからなかったよ。もう一人の選手もガッツポーズをしていたので、よくわからなかったんだ。
今日、チームは一日中、集団をコントロールし、スプリントのために完璧な走りをしてくれた」と話す。
京都ステージのスプリントではバグラスに先手を取られ、「本当のスプリント勝負ができなかった」と話したランパーティだが、今回で自身の集団でのスプリント能力を披露した形だ。しかし、それでも全力というわけではないようだ。
「今日のスプリントは、僕にとって完璧なものではなかったと思う。普段はもっとハードなスプリントが好きだし、今日のスプリント勝負も速かったことは速かったけど、自分にとっては速すぎるということもなく、速さ以上に技術とポジション取りが良かったと思う」
取材を終えたランパーティは「また明日会おう」と言って会見場を去った。
明日の第5ステージ信州飯田は、10時からスタート。
中継はこちらから。
ツアー・オブ・ジャパン 第4ステージ 美濃 リザルト
1位 ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)3時間8分1秒
2位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)+0秒
3位 イエルン・メイヤス(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)+0秒
総合順位
1位 ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)9時間9分46秒
2位 ジャンバルジャムツ・セインベヤール(トレンガヌ・ポリンゴン・サイクリングチーム)+12秒
3位 ゲオルギオス・バグラス(マトリックスパワータグ)+14秒
スプリント賞
ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)67pts
山岳賞
兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)22pts
新人賞
ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)
TOJ2023ステージ詳細
8日間の総走行距離は、722.3㎞。総獲得標高1万232mとなる。
第1ステージ【堺】
5/21(日)13:35
大仙公園周回コース
2.6㎞(個人タイムトライアル)
獲得標高 = 10m
第2ステージ【京都】
5/22(月)9:45
普賢寺ふれいあいの駅→けいはんなプラザ周回コース
<パレード6.6㎞> + <2.8㎞ + 16.8㎞ × 6周 =103.6㎞>
獲得標高 = 1,836m
第3ステージ【いなべ】
5/23(火)9:30
阿下喜駅前→下野尻交差点→いなべ市梅林公園周回コース
<パレード3.1㎞> + <8.6㎞ + 14.8㎞ × 8周 =127.0㎞>
獲得標高 = 1,650m
第4ステージ【美濃】
5/24(水)9:15
旧今井家住宅前→横越→美濃和紙の里会館前周回コース
<パレード4.0㎞> + <11.3㎞ + 21.0㎞ × 6周 =137.3㎞>
獲得標高 = 1,218m
第5ステージ【信州飯田】
5/25(木)10:00
下久堅小学校グラウンド前→下久堅周回コース→下久堅小学校グラウンド前
<パレード1.7㎞> + <10.8㎞ + 12.2㎞ × 9周 + 0.3㎞=120.9㎞>
獲得標高 = 2,580m
第6ステージ【富士山】
5/26(金)11:00
道の駅すばしり→ふじあざみライン→富士山須走口5合目
11.4㎞(一斉スタートヒルクライム)
獲得標高 = 1,160m
第7ステージ【相模原】
5/27(土)8:50
橋本公園→旧小倉橋→串川橋→鳥居原ふれあいの館前周回コース
<パレード4.8㎞> + <10.9㎞ + 13.8㎞ × 7周 =107.5㎞>
獲得標高 = 1,728m
第8ステージ【東京】
5/28(日)11:00
大井埠頭周回コース
<パレード3.8㎞> + <7.0㎞ × 16周 =112.0㎞>
獲得標高 = 50m
■ツアー・オブ・ジャパン2023公式サイト
■サイスポ・トピックス:
2022TOJ総括 コロナ禍収束第一歩での現在地
2022TOJ総括 コロナ禍収束第一歩での現在地