ツアー・オブ・ジャパン2023 第7ステージ相模原 ランパーティが3勝目。山岳賞はキンテロの手に
目次
各チームの思惑が入り乱れるスタート前
東京オリンピックの一ロードレースの一部コースを走る第7ステージは、総合に向けて最後の争いとなる。神奈川県相模原市での107.5㎞は、橋本公園をスタートし、1周13.8㎞の鳥居原ふれあいの館前周回コースを7周する。獲得標高は1728mだ。
5月27日、昨年のこのステージでの大雨とは真逆の晴天が広がった。日差しも強くなった。
前日の富士山ステージを勝ち、総合ジャージを着るネイサン・アール擁するJCLチーム右京。清水裕輔監督は、総合優勝に向けて今日のステージでは逃げを行かせて構わないとレース前に話した。
ただトップ10に入る選手は全てマーク。逃げができてもタイム差は2分以内にとどめたいと言う。
「いなべや信州飯田のタイム差4分は長過ぎました」
タイム差が長すぎると協力するチームもいなくなってしまう。
しかし、「うちは5人全員回ればどんな逃げでもつかまえられるので」と自信をのぞかせた。
この日は総合だけでなく山岳賞がかかる最後の日。1位通過に5ポイント、2位通過に3ポイント、3位通過に1ポイントが与えられる山岳ポイント周回が、2周目、4周目、6周目に設定された。
スタート時点で山岳賞ジャージを着る兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)は、前日までのステージで、レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島)と僅か3ポイント差。
チームブリヂストンサイクリングの宮崎景涼監督は、作戦として、兒島がポイントを取りに行くというよりも、山岳ポイントに関係ないメンバーで逃げを行かせたいと話す。しかし、キンテロは徹底マーク。信州飯田ステージのときのような長い上りではないこの日の上りであれば、スプリントで勝てるはずと言っていた。
リアルスタートが切られ、周回コース0周目に入ると阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)らが飛び出すが吸収。1周目に入る頃、カーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)を逃げようと先頭を走るがそれも吸収。
トレンガヌが1人飛び出したが、1周目の最後、2周目に入るタイミングに設定された1回目の山岳ポイントに向け、集団はヴィクトワール広島がキンテロのために集団を牽引。キンテロの後ろにはピッタリと兒島がマークした。
しかし500mほどある上りの麓で一気に踏んだキンテロが先に最終コーナーに突入する。後ろには兒島のチームメイトの窪木一茂がついたが、兒島がつけず。窪木にラインを通過する前に待ってもらう形で、キンテロ、兒島の順で通過した。
その後も逃げに出ようと何人もがアタックを仕掛けるがなかなか決まらない。
2回目の山岳ポイントも近くなり、集団一つのまま、またしてもヴィクトワール広島が前で位置を取る。その後ろにはチームブリヂストンサイクリングが陣取る。
コントロールラインに向けて両チームが隊列を組むが、やはり最後のコーナーを最初に単独で抜けたのはキンテロ。兒島が二番手通過で、この時点でキンテロが兒島の山岳ポイントを1ポイント上回って逆転。最後の山岳ポイントにジャージ獲得の行方が託された。
4周目に入ると、集団はJCLチーム右京がコントロールをし始める。
5周目の山岳ポイントも全く同じく、ヴィクトワール広島とチームブリヂストンサイクリングの隊列ができ、またしてもキンテロが爆発力を見せてトップ通過。山岳賞ジャージはキンテロの手に渡った。
「トレイン組んでやりあったんですけど、500mの上りというのが耐えれなかったですね。やっぱりキンテロ選手すごく強くて、もう一発で突き放されちゃって、そこのダッシュ力も違って。厳しかったですね」
兒島は、ロードレース初日から山岳賞を狙い、レッドジャージを着続けたが、最終日に手放すこととなってしまった。
「悔しいですね、本当に」兒島は唇を噛み締めるが、レース後には兒島からキンテロに祝福を言いに行っていた。
山岳ジャージの行方も決定した残り1周半の下り、飛び出したのは、入部正太朗(シマノレーシング)、山本元喜(キナンレーシングチーム)、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)、織田聖(EFエデュケーション・NIPPO・デヴェロップメントチーム)の4人。
そこに、「もう山岳賞もなかったんで、2周切ってたんでもしかしたら逃げができるかもと思って、前の方いたら行った。それを追いかけて」と、兒島がジョイン。
5人の逃げグループとなり、集団コントロールするJCLチーム右京の中でリーダージャージのアールも牽引を止めたが、結局その逃げも集団へと吸収された。
逃げができないまま、最後の周へと入る前にケイラム・オーミストン(グローバル・シックス・サイクリング)が単独で先頭へと出た。しかし、集団は目視できる範囲でもはや泳がしている状況。
スプリントしたいマトリックスパワータグ、キナンレーシングチーム、トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチームなどが集団でペースを上げると吸収され、集団スプリントに向けた位置取りが始まる。
「短いとはいえ、富士山の疲れが残っていて、今日スタートしてみて、あまり良いコンディションではなかった」と話すこれまでステージ2勝を飾ってスプリント賞ジャージを着るルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)。
それでも集団スプリントに参戦。ジョセフ・ピドコック(トリニティ・レーシング)がリードアウトをする予定だったが、最後の上りで位置を落とした。ランパーティは、少し待つ形となったが、「最初にコーナーを通過したかった」と、スピードアップさせて、最終コーナーを1番手で通過。そのままスプリントを開始した。
コーナーで並びかける岡篤志とベンジャミ・プラデスのJCLチーム右京の2人だが、直線で徐々にランパーティとの差が開いていった。
ランパーティが余裕を持って両手を掲げ、ステージ3勝目を飾った。これは、同一TOJで最もステージ優勝をしたマルコ・カノラの記録と並んだ。
山岳賞を確定させたキンテロは、「今日は”やるかやらないか”という日だった」と話す。
「今日のステージはとても複雑なステージだった。とにかく山岳賞狙いで行った。(スタート時点で)山岳賞の1位の選手と3ポイント差がついていて、3つの山岳ポイントを取るか、2つ取ってその後逃げるかという選択だったけど、かなり動きがあったレースで、逃げがとても難しい状況だった。でも自分としては、力を出すことができて、山岳賞を獲得することができた」
最初は山岳賞を取ることは頭になかったと話すキンテロ。
「2日前(信州飯田ステージ)で、3回トップ通過ができたときに、山岳賞を意識し始めた。前日の富士山でも1ポイントを取れたので、ジャージを獲得するなら今日やるしかないと思って頑張った」
富士山ステージも上位で終え、かなり調子の良さそうなキンテロだが、シーズン序盤には怪我もあったという。
「シーズン序盤は、転倒で脚を痛めたこともあり、複雑な日々を過ごしていたが、毎日トレーニングを続け、ヴィクトワール広島のチームも監督も僕をサポートしてくれた。彼らが自分を信じてくれたおかげで、自信を取り戻し、良い状態でツアーオブジャパンに臨むことができた」
ネイサン・アールは危なげなくリーダージャージをキープ。
「今日はちょっとクレイジーだった。でもとても楽しかった。天気も良かったし、このコースはとても速いので、ちょっとエキサイティングなコースになった。しかし、今日は危険な逃げをコントロールしなければならなかったし、多くのチームが山岳ジャージを獲得するためにモチベーションを上げ、自ら動いていたので、結局、逃げはなく、とても速いステージになった。
そして、私のチームは私を安全に保つためにとても良いコントロールをしてくれた。このステージでもあと少しで勝利を手に入れられそうだったが、ステージ2位と3位というのも素晴らしいことだ。もう1日戦おうと思う」
最終、東京ステージは、11時スタート。
中継はこちらから。
ツアー・オブ・ジャパン 第7ステージ 相模原 リザルト
1位 ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)2時間23分26秒
2位 ベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)+0秒
3位 岡 篤志(JCLチーム右京)+0秒
総合順位
1位 ネイサン・アール(JCLチーム右京)15時間22分31秒
2位 ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)+45秒
3位 岡 篤志(JCLチーム右京)+55秒
スプリント賞
ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング) 100pts
山岳賞
レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島)41pts
新人賞
リアム・ジョンストン(トリニティ・レーシング)
TOJ2023ステージ詳細
8日間の総走行距離は、722.3㎞。総獲得標高1万232mとなる。
第1ステージ【堺】
5/21(日)13:35
大仙公園周回コース
2.6㎞(個人タイムトライアル)
獲得標高 = 10m
第2ステージ【京都】
5/22(月)9:45
普賢寺ふれいあいの駅→けいはんなプラザ周回コース
<パレード6.6㎞> + <2.8㎞ + 16.8㎞ × 6周 =103.6㎞>
獲得標高 = 1,836m
第3ステージ【いなべ】
5/23(火)9:30
阿下喜駅前→下野尻交差点→いなべ市梅林公園周回コース
<パレード3.1㎞> + <8.6㎞ + 14.8㎞ × 8周 =127.0㎞>
獲得標高 = 1,650m
第4ステージ【美濃】
5/24(水)9:15
旧今井家住宅前→横越→美濃和紙の里会館前周回コース
<パレード4.0㎞> + <11.3㎞ + 21.0㎞ × 6周 =137.3㎞>
獲得標高 = 1,218m
第5ステージ【信州飯田】
5/25(木)10:00
下久堅小学校グラウンド前→下久堅周回コース→下久堅小学校グラウンド前
<パレード1.7㎞> + <10.8㎞ + 12.2㎞ × 9周 + 0.3㎞=120.9㎞>
獲得標高 = 2,580m
第6ステージ【富士山】
5/26(金)11:00
道の駅すばしり→ふじあざみライン→富士山須走口5合目
11.4㎞(一斉スタートヒルクライム)
獲得標高 = 1,160m
第7ステージ【相模原】
5/27(土)8:50
橋本公園→旧小倉橋→串川橋→鳥居原ふれあいの館前周回コース
<パレード4.8㎞> + <10.9㎞ + 13.8㎞ × 7周 =107.5㎞>
獲得標高 = 1,728m
第8ステージ【東京】
5/28(日)11:00
大井埠頭周回コース
<パレード3.8㎞> + <7.0㎞ × 16周 =112.0㎞>
獲得標高 = 50m
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