ツール・ド・フランス2023 アルプス山岳の第14ステージはロドリゲスが区間初優勝
第110回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月15日にアヌマスからモルズィヌ・レ・ポルテ・デュ・ソレイユまでの151.8kmで、アルプス山岳区間の第14ステージを競い、スペインのカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアズ)が22歳で区間初優勝を果たした。
区間2位は5秒遅れでマイヨ・ブランを着たスロベニアチャンピオンのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)、3位は同タイムでマイヨ・ジョーヌを着たデンマークのヨーナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ)だった。
大落車で一時中断
165選手が出走したアルプス山岳初日の第14ステージは、スタートして6.5kmで発生した大落車でレースが30分近く中断した。この事故でアントニオ・ペドレロ(モビスターチーム)、ルイ・メインティス(アンテルマルシェ・シルキュス・ワンティ)、エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト)がレースを棄権した。
再スタート後、最初に越えたカテゴリー3の峠の下り坂でも落車があり、ロマン・バルデ(チームDSM・フィルメニッヒ)とジェイムズ・ショー(EFエデュケーション・イージーポスト)がリタイアした。
アタックが続いた後、21人の逃げ集団が形成され、山岳賞のマイヨ・アポワを守り続けていたニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)が加わっていた。しかし、彼は35.5kmのカテゴリー1のクー峠山頂で、ジューリオ・チッコーネ(リドル・トレック)に負けて1位通過できなかった。
続くカテゴリー1のフー峠もチッコーネが先頭で通過した。彼はこの日4カ所目のラマズ峠を単独で逃げ続けたが、山頂まで残り7.5kmでユンボ・ヴィスマが引く30人ほどのメイン集団に吸収された。チッコーネはこの前半の走りで敢闘賞を獲得している。
ラマズ峠はウァウト・ヴァンアールト(ユンボ・ヴィスマ)が引き続け、前日に区間5位でゴールしていたトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアズ)が遅れてしまった。ゴールまで残り50kmの山頂で山岳賞のポイント争いはなく、ヴァンアールトが先頭で通過した。
この日最後の峠で、頂上通過にボーナスタイムがかけられていたカテゴリー超級のジュー・プラーヌ峠の登坂が、ゴールまで残り23.6kmで始まり、ラファウ・マイカ(UAEチーム・エミレーツ)が先頭を引き始めた。ところが一度後方に下がっていたヴァンアールトが集団の先頭まで上がり、マイカを押しのけて再び先頭を引き始めた。後方ではダヴィド・ゴデュ(グルパマ・FDJ)やサイモン・イェーツ(チームジェイコ・アルウラー)が遅れていた。
山頂まで8kmで集団の先頭はセップ・クース(ユンボ・ヴィスマ)に代わり、前日まで総合3位だったジャイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグローエ)が付いていけなくなってしまった。山頂まで4.7kmでアダム・イェーツ(UAEチーム・エミレーツ)がアタックし、ポカチャルとヴィンゲゴーだけが彼の後方に付いていった。この時、ロドリゲスは置き去りにされていた。
ジュー・プラーヌ峠でポガチャルがアタック
ジュー・プラーヌ峠の山頂まで残り3.7kmでポカチャルがアタックし、すぐヴィンゲゴーに3秒ほどのタイム差を付けた。しかし、この日はヴィンゲゴーも粘り、山頂まで残り1.6kmで先頭のポガチャルに追いつく事ができた。総合争いは一時休戦となり、マイヨ・ジョーヌのヴィンゲゴーが先頭を走って山頂を目指した。2人は後続のロドリゲスに53秒差、ヒンドリーに2分差を付けていた。
信じられないアクシデントが発生したのは、山頂まで残り540mだった。狭い山道でポガチャルがアタックをかけたのだが、すぐ前方を走っていた2台のオートバイが邪魔をして、そのまま飛び出す事ができなかったのだ。その直後には、観客の生け垣が待ち構えていた。結局ゴールまで残り12kmの山頂ではヴィンゲゴーがアタックし、8秒のボーナスタイムを獲得。ポガチャルは2位通過で5秒しか稼げなかった。
山頂でのアクシデントの影響で、先頭の2人のスピードは落ちていて、ゴールまで残り9kmでロドリゲスとアダム・イェーツが追いついた。ロドリゲスはそのまま下りでアタックし、数秒差を守ってモルズィヌへとたどり着き、スペイン人として最年少のツール区間優勝者になった。彼は総合成績でもヒンドリーにたった1秒差で3位になった。
後方では、2位争いのスプリントをポガチャルが競り勝ち、6秒のボーナスタイムを獲得。ヴィンゲゴーは4秒獲得した。この日のボーナスタイームはヴィンゲゴーが合計12秒、ポガチャルが11秒で、ヴィンゲゴーは総合成績でのタイム差を1秒だけ広げる事ができた。
■区間優勝したロドリゲスのコメント
「信じられない。言葉にならないよ。ここに居る事が夢だった。世界最高のレースで勝ちを得るのは信じられない事だ。これをいつも夢見ていた。チームの全ての努力にとても感謝し、彼らがボクに注いでくれた信念に感謝している。
ジュー・プラーヌ峠で脱落した時には、これが可能だとは思わなかった。後でできる限り早く下れるように、自分のペースで上るように努力した。ボクは下りが得意だから、それを活かしたかった。何度か落車しそうになったが、ある程度のリスクは負っていた」
■第14ステージ結果
[7月15日/アヌマス~モルズィヌ・レ・ポルテ・デュ・ソレイユ/152 km ]
1. C. RODRIGUEZ CANO (INEOS GRENADIERS / ESP) 03h 58′ 45”
2. T. POGAČAR (UAE TEAM EMIRATES /SLO) + 00′ 05”
3. J. VINGEGAARD (JUMBO-VISMA / DEN) + 00′ 05”
4. A. YATES (UAE TEAM EMIRATES / GBR) + 00′ 10”
5. S. KUSS (JUMBO-VISMA / USA) + 00′ 57”
6. J. HINDLEY (BORA – HANSGROHE / AUS) + 01′ 46”
7. F. GALL (AG2R CITROEN TEAM / AUT) + 01′ 46”
8. P. BILBAO LOPEZ (BAHRAIN VICTORIOUS / ESP) + 03′ 19”
9. S. YATES (TEAM JAYCO ALULA / GBR) + 03′ 21”
10. G. MARTIN (COFIDIS / FRA) + 05′ 57”
■第14ステージ後の総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. J. VINGEGAARD (JUMBO-VISMA / DEN) 57h 47′ 28”
2. T. POGAČAR (UAE TEAM EMIRATES /SLO) + 00′ 10”
3. C. RODRIGUEZ CANO (INEOS GRENADIERS / ESP) + 04′ 43”
4. J. HINDLEY (BORA – HANSGROHE / AUS) + 04′ 44”
5. A. YATES (UAE TEAM EMIRATES / GBR) + 05′ 20”
6. S. KUSS (JUMBO-VISMA / USA) + 08′ 15”
7. S. YATES (TEAM JAYCO ALULA / GBR) + 08′ 32”
8. P. BILBAO LOPEZ (BAHRAIN VICTORIOUS / ESP) + 08′ 51”
9. F. GALL (AG2R CITROEN TEAM / AUT) + 12′ 26”
10. D. GAUDU (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 12′ 56”
[各賞]
■ポイント賞:J. PHILIPSEN (ALPECIN-DECEUNINCK / BEL)
■山岳賞 : J. VINGEGAARD (JUMBO-VISMA / DEN)
(※第15ステージは N. POWLESS (EF EDUCATION – EASYPOST / USA) が着用)
■新人賞 :T. POGAČAR (UAE TEAM EMIRATES /SLO)
■チーム成績:INEOS GRENADIERS (GBR)
■敢闘賞 : G. CICCONE (LIDL – TREK / ITA)
第15ステージはモン・ブラン頂上ゴール
2週目最終日となる7月16日は、レ・ジェ・レ・ポルテ・デュ・ソレイユから標高1372mでカテゴリー1のサン・ジェルヴェ・モン・ブラン頂上にゴールする179 kmでアルプス山岳区間の第15ステージが行われる。