シマノコネクトラボの使い方【ロードバイクペダリング改善塾】
目次
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ロードバイクのペダリング改善に役立つシマノのパワーメーター(FC-R9200-P、FC-R8100-P)。そのデータ解析ができるサービスが「SHIMANO CONNECT Lab(シマノ コネクトラボ)」だ。実にさまざまな機能があるが、使いこなすためのポイントを自転車コーチの福田昌弘さんに教えてもらおう。
シマノ コネクトラボって何?
シマノが提供する、走行データの管理・分析サービスだ。シマノIDを取得すれば、誰でも無料で使うことができる。もちろん、シマノIDの取得も無料だ。
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シマノ コネクトラボの仕組み。対応デバイスやアップロードについての詳細はこちらの公式サイトをチェックしよう
シマノのパワーメーターに対応するデバイスで記録した走行データをアップロードすることで、「ペダリンググラフ」「相関図」「フォースベクトル」など、独自の高度なデータ解析を行うことができるのが特徴だ。
なお、シマノのパワーメーター以外で記録した走行データでもアップロードすることができ、そのデータも管理・分析ができるのがうれしい(ただし、シマノのパワーメーターでないと取得できない情報は分析できない)。
【最重要】まずは「ペダリンググラフ」を見よう!
とにかくいろいろな機能があるシマノ コネクトラボ。「まずはどこを見たらいいの?」と思う人が多いだろう。福田コーチに聞いた。
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今回のアドバイザー:ハムスタースピン代表・福田昌弘さん。日本で唯一と言っていいペダリング研究家で、自転車コーチとして活躍する。一般のサイクリストはもちろん、プロロードレーサーへの指導を行っている。メディア出演も多数で、著書もある
「一番注目して見るべきなのは、ペダリンググラフのデータです。
これによって、クランクを1回転させるうち30°ごとにかかっている接線方向のトルクの推移を知ることができます」。
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ペダリンググラフのイメージ図。「フォース[N]」というのがトルクのこと。単位はニュートン(N)
※法線方向:法線方向とは、クランクを回すのに作用しない方向で、ここにトルクがかかっているほど無駄な力を入れていることになる
ここがチェックのポイント!
①90°にピークがきている→及第点
「クランクを回すとき、最も力をかけやすいのが90°(時計の針で言うと3時の位置)で、ここに接線方向のトルクのピークが来ていれば、ひとまずは及第点です」。
②90°にピークがきている+60°と120°に同じだけトルクがかかっている→良い
「90°に接線方向のグラフのピークが来ていて、かつ60°と120°が同じくらいにトルクがかかっていると(どちらも90°よりは低くて良い)、より理想的なペダリングに近いです。
ちなみに、プロ選手でも60°の方が120°よりもやや低くなっていることが多いです」。
③90°にピークがきている+60°と120°に同じだけトルクがかかっている+30°と150°で同じ程度のトルクがかけられている→かなり良い
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※グラフは実際のものではなく、イメージ画像として制作したものです
「ここまでくると、下死点付近で無駄な力があまり入っておらず、理想的なペダリングにかなり近いレベルです」。
④90°にピークがきている+60°と120°に同じだけトルクがかかっている+30°と150°で同じ程度のトルクがかけられている+180°でゼロトルク→理想的
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※グラフは実際のものではなく、イメージ画像として制作したものです
「この状態だと、クランクの高い位置からトルクがかかり始め、90°の最も力をかけやすい角度でトルクが最大になり、下死点(ここで力を入れてもクランクは回らない)で無駄な力が入っていないという、理想的なペダリングをしていると言えます。
なお、法線方向のグラフはあまり気にしなくても良いですが、理想的なのはグラフの山ができるだけ低くなっていることです。ただし、プロ選手でもある程度ここの山は出てしまいます」。
【BAD】ピークが90°より後ろへずれていると踏み遅れ→改善しよう!
「逆に90°より後ろ側へグラフのピークがきており、さらに0°、30°、60°よりも120°、150°、180°の方がグラフの数値が大きい場合は、いわゆる踏み遅れが生じています。効率の悪いペダリングをしていることを示しているので、このようなグラフになっている人は改善が必要だと分かります」。
【重要①】「相関図」で“動きのスレッショルド”を知ろう
「これは、出したパワーに対してどれくらいのペダリング効率だったかの推移を知ることができる機能です。
ペダリング効率=接線方向の力÷(接線方向の力+法線方向の力)
で計算されており、つまりあなたが出した力のうち、どれくらいがクランクの回転に使われているかを示しています。
基本的にだんだんとパワーが上がれば上がるほどペダリング効率は上がっていくものなのですが、あるパワーを境にペダリング効率が右肩上がりにならなくなったり、点のばらつきが出てくるようになります。これはプロ選手でも同じです」。
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相関図を見るポイント
「このペダリング効率が上がらなくなったり、点にばらつきが多く発生するようになるパワーのポイントを、“動きのスレッショルド(閾値/しきいきち)”と私は呼んでいます。上の相関図の例だと、270Wあたりを境にペダリング効率が上がらなくなっていますね。
つまり、この場合は270W以上になると無理矢理で効率の悪い動きでそのパワーを出していることが分かります。そのようなペダリングではパワーの損失が生まれ、無駄に疲れてしまいます。
ですので、動きのスレッショルドとなっているパワーが、あなたが効率良く出せるパワーの限界値であると分かります。よって、その効率良く出せるパワーの限界値を上げていくことがトレーニングでは重要となります」。
【重要②】「平均トルクエフェクティブネス」は対応していればシマノ以外のパワーメーターでも使える
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平均トルクエフェクティブネス
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平均トルクエフェクティブネスの表示方法。サマリー画面の「パラメータ」をクリックし、「平均トルクエフェクティブネス」(左右それぞれで出る)にチェックを入れるだけ
「これもけっこう役に立つ機能です。
平均トルクエフェクティブネスでは、踏み足側に対して反対側の足で逆方向の力(ネガティブトルク)がかかっている割合を調べることができます」。
「計算方法は単純で、例えば右足が90%であれば、10%分左足で逆方向の無駄な力が発生してしまっているということになります。
このデータは対応しているパワーメーターとサイクルコンピューターがあれば、シマノ以外のパワーメーターでも見ることができます。例えばガーミンのパワーメーターです」。
【重要③】時系列グラフ
「ライド中のさまざまなパラメーターの推移を知ることができる機能です。表示させる項目は切り替えることが可能です。
例えば後半になるにしたがってペダリング効率が下がっていっている場合は、後半で効率の悪い動きでペダリングしているなどが分かります。あるいは、どこか乱高下しているパラメーターがあれば、それも効率の悪い動きをしている可能性を示しています。
“最後まで同じ動きをし続けられる”というのは重要なことで、そうしたことをチェックするのに活用できます」。
【重要④】「平均トルク」はSFRをするときにぜひ確認したい
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平均トルクは「サマリー」から確認できる
「重いギヤにしてペダルを低ケイデンスで回し、良いペダリング動作を体に覚え込ませるトレーニングとして、SFRがあります。平均トルクの数値はこのときにぜひ確認したいデータです。
よく、脚の重さをペダルにうまく乗せよう、などと言われますが、これはそのとおりで、実際に脚の重さだけをペダルにうまく乗せられると、その重さだけで13N•m程度は出るはずなのです。これが、例えば腕をハンドルに乗せて肩をいからせ、突っ張るようにして“ロック”してしまうと、その時点で脚の重さがペダルに乗らなくなります。こういうペダリングをしていると、平均トルクが低く出ているはずです」。
【ある程度データが蓄積した人向け】統計データ/パワーカーブ
「ある程度データが蓄積してきた人はぜひチェックしてほしい機能です。過去の自分と比較してどれだけ強くなったかを知ることが大事だからです」。
統計データ
「走行時間、走行距離、獲得標高といった基本データをはじめ、ペダリング効率などの統計データを視覚的に分かりやすいグラフで表示してくれます。例えば、2022年に比較して2023年はサボり気味だなといったことが一目瞭然です。意外とこのように見やすく表示してくれる解析サービスは少なく、貴重な機能です。
シマノのパワーメーター以外でも、過去に使っていたパワーメーターのデータが残っていればアップロードして解析できます。すると、例えば2018年の自分と比較するなど、長いスパンでも比較が可能になります」。
パワーカーブ
「パワーカーブとは、自分がそのパワーをどのくらいの時間維持できるかを示したグラフです。
例えばロードレースなら、5分、10分、20分持つパワーをよく確認しておくといいです。集団についていくために求められる数値で、多くの人はまずは“集団からちぎれない”ということが目標になるからです。
これも長いスパンで過去の自分のデータと比較すると、例えば目指すレースに向けての準備がどのくらい進んでいるのかなどがチェックできます」。
「最後に、シマノ コネクトラボでは実にさまざまな、相当にマニアックなデータまで見ることができます。ですが、一般のサイクリストの皆さんは、まずはここで紹介した項目を、重要度の高いものからチェックしてもらえればOKだと思います」と福田さん。本記事を参考に、シマノ コネクトラボを大いに活用してみよう。