第9回で俎上に載せるのは、デビューから2年が経つトレックのマドンである。安井がOCLV700のマドンRSLとOCLV600のマドン9.2という2台と数日間を共にし、見て考えたこと・乗って感じたことを子細にお届けする。全8回、計1万6000文字。渾身のマドン評論。vol.4。
OCLV700とOCLV600
マドンシリーズの豊富なラインナップ(トレックホームページより)
フレームの作りをざっとチェックしたところで、マドンのラインナップを確認しておく。新型マドンのモデル展開は少々ややこしいのだ。
まず、フレームが2種類。OCLV700を素材とするものと、OCLV600で作られるものだ。ストックモデルでOCLV700のマドンを手に入れようとすると、レースショップリミテッドという完成車を買うしかない。デュラエースDi2、ボントレガー・アイオロス5、専用ハンドルが付いてお値段140万円弱である(残念なことにOCLV700マドンのフレーム販売は設定されない)。
OCLV600マドンの販売形態は計4種類。フレームセット(49万円、ただし付属品はシートポスト、ブレーキセットのみで専用ハンドルは付かない)、9.9(約110万円、デュラエースDi2、ボントレガー・アイオロス5、専用ハンドルが付いた完成車)、9.5(84万円、アルテグラDi2、ボントレガー・アイオロスプロ3、専用ハンドルが付いた完成車)、9.0(約55万円、機械式アルテグラ、ボントレガー・アイオロスコンプ、ノーマルハンドルとノーマルステムが付いた完成車)である。
なお、全モデルにH1フィットとH2フィットがあるわけではなく、OCLV700フレームはH1フィットのみ、OCLV600フレームはH2フィットのみとなる。個人的にはここもやや疑問である。OCLV700でH2フィットが欲しい(またはその逆)という要望もあるはずだが。
なお、トレックにはプロジェクトワンというオーダープログラムが用意されている。マドンのプロジェクトワンは9.9、9.5、9.0という3種類の完成車しか選べないが(レースショップリミテッドはストックモデル扱いだがプロジェクトワンでの展開となる)、12万円のアップチャージでフレーム素材をOCLV700にすることができるフレームオプションが用意されている(ジオメトリは自動的にH1フィットとなる)。マドン9.0のOCLV700版も作れるのだ。
ワイヤ類はハンドル~ステムの中を通ってヘッドチューブに入るため、スペーサーがリング状だと脱着ができない。よってマドンのスペーサーは専用で左右分割式になっている。いちいち手間がかかっていてすごい
ベクターウィングはボルト一本で止まっているだけ。撮影のために外したらヘッドチューブにはこんなに大きな穴が開いていた。中をのぞくとフォークコラムの根本にスカルのイラストが。これは一体なんだろう?
ステム長と幅以外に選択肢のない専用ハンドル。トップはテーブルのように真っ平らなので、フラット部を握るクセのある人は要注意。しかし2018モデルからノーマルのステム&ハンドルも使えるようになった
ここまでハンドルを切るとベクターウィングはこのくらい開く。ロードバイクはバンクさせて曲がる乗り物なので、通常走行ではほとんど開かないはず。ベクターウィングが動くのは落車時か低速旋回時のみだろう
シートチューブが二重でベアリングが入りブレーキワイヤが通りシートポストが固定される、というシート集合部はかなり複雑な形状。空力と快適性と空間設計の三つ巴。設計者の苦労が顕著に表れている部分だろう
専用ブレーキのカバーを外したところ。ワイヤを引くとチドリが左右のアームを広げ、シューがリムに当たる仕組み。動きはシンプルだが、アルミのパーツが複雑に精密に組み合わさっている作りは惚れ惚れとする
リヤブレーキのアウターはトップチューブの中を通り、チューブ後端にあるアウター受けで止まり、そこからワイヤが出てブレーキを引く。ワイヤが外に出るのはアウター受けからリヤブレーキまでの数cmだけ
扁平形状のトップチューブはセンターで径を絞っている。上下方向に柔軟性を持たせるためだろう。ダウンチューブの大穴はDi2で組む場合のジャンクション入れであり、機械式で組む場合のアジャスター入れである
空力と剛性がせめぎ合うダウンチューブ。単なるカムテールではなく、ヘッド付近は長方形断面で、徐々にカムテールになっていくという複雑な形状。フォークやホイールからの空気の流れを考慮したものだろう
当連載名物のフレーム内部写真
トップチューブ内部ヘッド側。左上に見えているのはリヤブレーキのワイヤ
トップチューブのシートチューブ側には、接着剤がはみ出ているのが見える。複雑なシート集合部のチューブ接合部なのだろう
シートチューブ内部を上から見たところ。途中から急に細くなっているのが分かる。Isoスピードの芯である。内部はかなり複雑で、これ以上カメラが入らなかった。チューブを貫いているのはリヤブレーキのワイヤ
ダウンチューブ。ライトの光が届かず暗い写真になってしまった。トレックカーボンフレームの内部は相変わらずシワやブラダーの残りが全くなく、びっくりするほど綺麗だ。加圧に固形芯材を使っているのだろう
安井行生のロードバイク徹底評論第9回 TREK MADONE vol.5へ続く
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