マウンテンバイク ジャンプの基本<後編>【MTBはじめよう! Vol.19】
目次
マウンテンバイク(MTB)のトレイルライド&エンデューロなどの下り系ライドの基本が分かるシリーズの19回目。ジャンプの基本中の基本について解説した前回の記事に続き、今回は実際にコース上のジャンプ台を安全に飛べるようにするためのステップを紹介しよう。前編をまだ読んでいない人はまず前編を読もう。
動画で見たい人はこちら
本格的なジャンプ台でも基本的な動作は同じ
今回もプロMTBライダーの板垣奏男(いたがき かなお)さんに教えてもらう。
「前回はパンプトラックと小さなジャンプ台を用いて基本中の基本を学習しましたが、本格的なジャンプ台になっても動作の基本は同じです。
ただ大きくなる分、空中にいる時間も長くなるので、いかにそれに慣れて克服していくかがポイントとなります。段階を踏んで、安全に練習していきましょう」と板垣さん。
STEP1 両輪同時でテーブルに安全に着地できるようにする
「ここから掲載する写真では分かりやすいように大きなジャンプ台を使っていますが、練習するジャンプ台はテーブルトップと呼ばれる種類で、小さめなものを選ぶと良いです。テーブルトップとは、宙に浮く区間が平らなテーブル上になっているタイプのジャンプ台です。各部の名称は上の図のとおりです」。
キッカー:「蹴り出すための場所」というような意味。ここをきっかけにしてジャンプする
テーブル:ジャンプ台中央に設けられた平な場所。ここでは自転車が宙に浮いている。
ランディング:着地する場所。安全に着地できるようになだらかになっている。
リップ:キッカーとテーブルとの境目となる角のこと。ここから車輪が宙に浮き出すことになる。
「まず一番最初に練習することは、ゆっくり目な速度でキッカーに侵入して、ちょっとだけジャンプして浮いてから、前後輪同時にテーブル上に着地できるようにすることです。
まずは空中に浮くことに慣れ、ニュートラル→レディの動作で自転車を“縦の動き”でコントロールできるように慣らしていくためです」。
STEP2 徐々に距離を伸ばしていき“ゲシる”
「ちょっとだけ浮いてテーブルに両輪同時で確実に着地できるようになってきたら、徐々に飛距離を伸ばしていきましょう。飛距離を伸ばすためには、ジャンプに侵入する速度を上げるようにします。あくまで速度で、キッカーで踏み切るような動作を加えなくて良いです。着地失敗と転倒の原因になります。
侵入速度を上げるためには、ジャンプに入るまでの距離を延ばしたり、ペダリングを多めに入れたり、ジャンプの手前にコブがある場合はそこでプッシュ・プルを入れるなどして加速してください。
だんだんと飛距離が伸ばせるようになってくると、“あと車輪一つ分だけ前に送れればジャンプを飛び切れるのに!”というポイントまで行き着くことがあります。これを俗に“ゲシる”と言います。英語では“case”と言われます。
ゲシれるところまで飛べるようになったら、今度は確実にゲシれるように練習してください。無理に飛び切ろうとしてはいけません!
というのも、どんな達人でも初めて飛ぶジャンプ台の場合、距離感が分からなかったりランディングの角度が分からないため、どうしてもゲシってしまうことが多々あります。そのとき、飛び過ぎてしまうよりはちょっと飛び足りなくてゲシる方が、危険度が低いです。
そうした意味で、どんなジャンプでも安全にゲシり、その衝撃をうまく体でいなせるようにする技術を先に身につけるべきなので、ここでゲシることを練習するのです」。
STEP3 最後まで飛び切れるようにする
「ここまでできるようになったら、あとは少しの勇気があれば達成できるはずです。
さらにジャンプ台への侵入速度を上げ、ランディングまで飛び切ってみましょう。もし勢いが足りなくて飛びきれなくても、ゲシって衝撃はいなせるようになっているので、そこは自信を持ってください。
ここで気をつけるべきことがあります。やはり無理に飛び切るような動作を入れたりするのではなく、あくまで侵入速度を上げて飛距離を伸ばすようにすることです。
速度を上げるためにはペダリングをより多めに入れたくなるところですが、もしペダリングを入れるならば、飛ぶ動作に入る手前で余裕を持って終わらせるようにしてください。これは特に注意してほしい点です。キッカーに入る直前までペダリングしてしまうと、ニュートラル→レディの重要な動作が崩れてしまう恐れがあるためです。コースにもよりますが、できるだけ助走距離を伸ばしたり、プッシュ・プル動作を増すことによって速度を上げるように心がけてください」。
【参考】技術が上がれば「エアトリック」も可能
「このように、徐々にステップを踏んでいき、とにかく安全に技術を習得していきましょう。
修練を積んでいくと、さらに大きなジャンプを飛べるようになることはもちろん、ジャンプ中に後輪を振るなどのエアトリックもできるようになります」。
うーん、何とかその領域までたどりつきたいところだ。みなさん、くどいですが、ご安全に!