猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第27回
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![猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第27回](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/12/IMG_9479.jpg)
地元の三重は伊勢志摩で乗鞍前、最後の調整。そんなにコロナの後遺症は感じなかった。
今年もまた一年の終わりのコラムを書いている。
一年を振り返るこの時間は、その年が満たされていようがいまいが妙な充実感に包まれる。
ロングの年
2023年…私にとってこの年は「ロング」この一言といえよう。
RAA(ライドアラウンド青森)で自己最長距離を650kmまで伸ばした。脱水からくる脚つりや、ミスコースで平凡なタイムで終わったが、完走は果たした。
しかし私は坂バカ。
ヒルクライムはライフワークなのである。
そう!年に一度の大一番!
乗鞍ヒルクライムに向けてトレーニングをコツコツ積んできた。
そんな乗鞍ヒルクライムを1か月後に控えた7月21日。それは突然やってきた。
新型コロナウィルスに罹患してしまったのだ。
コロナの報道がされなくなり、ワクチンを打たず油断していたのだ。
トレーニング中に急に悪寒がして、これはコロナだと悟った。
幸い5日間で改善したが、後遺症で心肺機能はかなり落ちた。
乗鞍まで1か月……、筧 五郎監督に1か月で回復しますかね?と聞くと「厳しいね」と返ってきた。
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レース前 アップに励む坂バカ部の面々
やっぱり乗鞍
不安ばかりで現地入りすると、そこには初めて会う若々しい坂バカ部の面々がいた。
彼らも乗鞍に緊張気味だ。
たまたま側にいたロードレース男子部の岸本伊織氏、坂バカ部で女優の新井舞良氏と、休暇村まで試走をする事になった。
伊織が舞良ちゃんのフォームをチェックする。
すると「自転車って下手でも乗れてしまうんですよ!でも上手に乗らないと速くは走れない……」
調子に乗った私も「舞良ちゃん、伊織のお腹ぷっくり膨らんでるでしょ?体幹を使えるとああなるんだよ!」
伊織「いゃ、これは脂肪です」
ガハハハッ!若い女優の前で調子に乗った伊織と私は、翌日仲良くワーストタイムを叩き出した。
全身を使って自転車を上手く前に進ませる。
簡単なようだが、実はこれが自転車競技の醍醐味で難しい。
コロナ明けだろうがスタートは待ってくれない。
覚悟を決めて2023年乗鞍がスタートした!
ひたすらロングライドをやってきたからか、脚の感覚は良い。260Wで踏める。
しかし8分後…夜泣き峠あたりで体の奥底がキツく、酸素が体に入っていかない感覚を覚える。
やはりコンディションが悪い。
少しペースを落として三本滝を21分で通過。
悪くないタイムだが自己ベストは無理と悟る。
自転車を進ませる方法
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好成績を出したタマちゃんと…後遺症泣き笑いオジサン。
せっかく調子が悪いのだから兼ねてから試したかった走りを試してみる。
「落ち着いて自転車を上手に前に進める事にだけに集中する」
レースになると心拍が上がり過ぎてしまい、自転車へのアプローチが雑になる。
良い機会だ!冷静な走りで、どこまで出せるか試そうではないか!
8割ぐらいの心拍数で中間地点は36分で通過。
ん?そんなに悪くないぞ。
急勾配地点も少し抑えめにダンシング。
位ヶ原で55分、何とか80分は切ろうと少し頑張る。
ラスト1kmは全開で1時間18分でゴール。
昨年、死に物狂いでモガいて出したタイムから40秒遅いだけだ。
頑張るだけでは自転車は前に進まない事が証明された。
そしてコンディションの悪さはやはりコロナの影響?加齢?
そう!!一番恐ろしいのは加齢である。そして一番信憑性があるのも加齢である。
いても立ってもいられず乗鞍の1週間後20分走を測ってみた。
今まで、どんなにキツくても200Wを下回る事がなかったのに、170W出すのがやっとだ。
結果30W下がり、コロナの後遺症を確認した。
いろいろな要因は考えられるが、こればかりは来年の乗鞍にならないと分からない。
やはりコロナのせいだった!と言えるようにまた一年頑張ろうではないか。
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乗鞍恒例の下山後の馬刺し。この後、大渋滞に巻き込まれるまでが乗鞍なのだ。
上昇集団の坂バカ部は、ワンダーボーイ戸丸が62分という脅威のタイムを叩き出した。
来年は60分切り行けるのか?と問うと、
「僕はまだあの自転車を上手く乗りこなせてないので行けると思います!」と帰ってきた。
実は戸丸は自転車歴は長く過去にロードバイクにも乗っていた。
そんな男でもまだ自転車を上手く乗りこなせていないのだ。
今年はとにかく長い距離を乗ってきた。
しかし長い距離を乗れば上手くなるとも限らない。
そこには「センス」というものもある。
プロ選手はペダリングを教わらないと聞いた事がある。
最初からペダリングが出来てしまっている人達がプロになるのだと…
「センス」それは努力で得られるものなのだろうか?
きっと得る日が来る…
無理やりポジティブに年を越そうと抗う51歳。
年の瀬の落陽が少しだけ背中を後押しするのであった。