安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.2
目次
大手スポーツ用品メーカー、ヨネックスがロードフレームを作り始めた。このロードバイク界に異業種参入型ブランドがまた一つ誕生したのである。第一弾は650gの超軽量カーボンフレーム、カーボネックス。設計担当者へのインタビューを交えつつ、この純国産フレームの真実に迫る。
他社フレームの分析で基本を構築
ヨネックスのホームページ、商品説明欄には「カーボネックスは『世界最軽量のロードバイク』を目指すため、素材を軽量化しても剛性強度を保てる『X-フラーレン』などのナノテクノロジーを利用した素材や、ゴムのような弾性と精密な復元性に優れたチタン合金『ゴムメタル』、『ボックス形状』、『真円形状』といったフレームの機能を最大限発揮させる形状を各々のフレームに採用。
また、弊社ラケット独自の形状理論『Oval Pressed Shaft(O.P.S.)理論』を用いたことで、剛性を保ちつつ振動に対して適度にしならせ路面追従性を高めました。これらの技術や新素材により、超軽量でありながら剛性、耐久性、快適性を併せ持つオールカーボンロードバイクフレームといたしました」とある。
その一つ一つを、技術者インタビューを交えながら眺望していくことにする。
ヨネックスのカーボンに関する技術が優れていることは、なんとなく知っている。ウィキペディアにだって「カーボン成形において世界トップレベルの技術力を誇り~」と書いてあるくらいだ。しかしラケットとロードフレームは別物だ。
カーボン製品に対する技術は蓄積されているのだろうが、自転車のフレーム設計に対するノウハウはどこで得たのだろうか。軽けりゃいいという時代でもないし、フレームの自社開発を試みたが挫折しOEMで妥協した某ブランドの例もある。ロードフレームとは、いきなり作れてしまうものなのか。
「カーボン製品を作っていると、他社のカーボン製品を分析する技術も培われるものです。それを用いて色々なカーボンフレームを調べ、開発の初期段階で基本的な作り方を構築しました。そこからさらに試行錯誤し、最善の成型方法を見つけました」
聞けば、軽量万能カーボンフレームとして名高い某モデルを購入し、隅々まで調べつくしたのだという。
X-フラーレンの正体
投入された様々な技術について聞いてみよう。
まず、フレームの構造から。
「前三角がモノコック。そこにシートステーとチェーンステーを一本ずつ接合しているので、4ピースモノコックですね。各パートの接合方法は接着です」
X-フラーレンとは?
「樹脂の強度を上げるための技術です。樹脂の強度を上げると、結果的に樹脂と繊維の密着度も上がるので、その余剰強度を軽量化にまわせるんです」
目的とその手段は、ピナレロ(東レ)のナノアロイやキャノンデールのバリステックカーボンと同じである。では、その具体的な方法は?樹脂に何かを混ぜているのか。
「そうです。粉状のものを混ぜて分子間力を上げています」
他社のアンダー700gのフレームは、トップチューブやダウンチューブを指で押すと明らかにたわんでどうにも頼りないが、カーボネックスのチューブに危うい感じはない。それこそがX-フラーレンの効果なのかと思ったら、どうやら違うらしい。
「X-フラーレンは剛性を上げるためではなく強度を上げるためのものですから。衝撃に対して強くなるということです。といってもそこはカーボンなので、限界はありますが」