ヨネックスの新型カーボネックスを乗鞍女子王者 佐野歩&強豪レーサー 兼松大和がインプレッション
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2023年12月に発表されモデルチェンジを果たした、ヨネックスを代表するリムブレーキ仕様ロードバイク「CARBONEX(カーボネックス)」。前作を駆り見事乗鞍ヒルクライム女子2連覇を果たした佐野歩さんと、その師であり“フジヒル”元優勝者の兼松大和さんはその性能をどう見たか? 2人による試乗インプレッションをお届けしよう。
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インプレッションライダー&試乗バイクを紹介
佐野 歩さん
1994年生まれ。大阪府在住。兼松さんとは同じ職場で、彼は上司に当たる。自転車通勤をしていたことがきっかけでロードバイクのレースを開始し、兼松さんの指導でめきめきと実力をつけ、2022年・2023年の「乗鞍ヒルクライム」一般女子で2連覇を果たしたヒルクライマー。「Mt.富士ヒルクライム」(通称“富士ヒル”)主催者選抜クラス女子でも同年で連続優勝している。前作のカーボネックスを愛用する。
兼松大和さん
1980年生まれ。奈良県在住。2017年の“富士ヒル”主催者選抜クラスで優勝経験のあるベテラン強豪市民レーサー。現在はロードレースとシクロクロスで活動している。ふだんはディスクブレーキ仕様ロードバイクに乗る。佐野さんにとっては職場の上司であり、自転車の師匠でもある。
新型カーボネックス
Sサイズ・未塗装フレーム単体で590gと驚異的な軽さを誇る新型のリムブレーキロードバイク。「カーボネックスSLD」より新たに採用された新素材を用い、フレーム・フォーク合計で前作より90gの軽量化を果たしつつも、剛性を高めた。一方で快適性や前作譲りの癖のない乗り味はそのまま維持することに成功している。
佐野 歩×兼松大和 新型カーボネックス試乗インプレッション
サイクルスポーツ編集部(以下CS):佐野さん、まず本題に入る前に、現在愛用している前作のカーボネックスにはどんな印象を持っていますか?
佐野:とにかく軽いです。そして、硬さがしっかりとある印象です。“かけたい”(かける:自転車用語でパワーをかける、力をかけるといった意味)ところでしっかりとかかると感じています。勝負どころでしっかりと反応してくれる自転車です。
兼松:硬いバイクが好きだったんだっけ?
佐野:柔らかい、コンフォート寄りの自転車に比べて、私は硬い自転車の方が自分が“ここだ”と思ったときにしっかりとかかってくれるような感覚があって、(前作の)カーボネックスはそれにマッチするので、そこに惹かれて乗っています。あと、繰り返しになりますが軽さにも惹かれています。
CS:兼松さんは、今回がヨネックスの自転車に乗るのは初ですか?
兼松:そうなんですよ。すごく楽しみにしていました。
こぎ出しからスピードに乗せるまでがより軽い
CS:なるほど。さて佐野さん。今回はふだんトレーニング等で使っているタイヤ・ホイールを装着した新モデルに試乗してもらいました。これならフレーム・フォークそのものの性能の違いを感じ取りやすかったと思いますが、ずばり、新作と前作との違いは感じられましたか?
佐野:正直、90g軽量化したということは、分からないです。
兼松:正直やな(笑)。
佐野:ただ、こぎ始めてからスピードに乗せるまでが、前作よりもしやすくなっていることは感じられました。
兼松 & CS:ほぉ。
佐野:上り坂、特に激坂になったときにもかかりが良いので、上り始めからスピードを保ったまま上っていくことができて、最初から頑張って踏んでいかなくても慣性を活かして進んでいける感じがありました。
キビキビとした反応の良さが向上
兼松:なるほどな。それは前作にも乗っているからこそ分かることやな。ところで、ふだんはほとんどダンシングしないのに、今日はえらいダンシングしていたな?
佐野:そうですね。ふだんはめったにしないんですけど、やってみたらパリパリ、キビキビと反応してくれる感じがあって、気づいたら多用していました。
兼松:それは俺も思っててん。パリパリ、キビキビしているなって。カーボネックスというと、“しなって反発して戻る力”が特徴で魅力と言われているから、結構コンフォート寄りかなと思ってた。けど、実際に乗ってみると、パリパリ、キビキビ感がある。特にそれがダンシングに出るな。
CS:なるほど。今作から採用された新素材「2G-Namd™ Speed(ツージーエヌアムドスピード)」による、しなり・戻り速度の向上が寄与しているのだと思われます。兼松さんは初見でしたが、それが第一印象ですか?
兼松:そうですね。特に勾配がきついときにかかりが良いと感じられました。思っていたよりも剛性が高い自転車だなと。
CS:今、剛性という話が出ましたが、佐野さん、剛性の観点ではどう感じられましたか?
佐野:より硬くなっている印象でした。私はシッティングでかなりケイデンスを高めて走るタイプなんですが、そうした走り方をしたときにしっかり跳ね返ってくる感じが強くなっていると感じられました。
兼松:それは脚に来るってこと?
佐野:どんな自転車でも、頑張って走れば脚にはきますよ。
兼松:まあそらそうやな(笑)。ということは、ケイデンス高めで走るのに合う自転車ってこと?
佐野:そうですね。ケイデンス高めでよく進み、かつ力をかけられるという印象です。勝負どころでしっかり踏むと反応してくれる。テンポが遅れない。その感覚が前作より増しています。
CS:乗り心地の点は?
佐野:前よりも硬くなって反応も良くなってるけど、そこは今乗っている(前作の)カーボネックスと変わっていないですね。乗り心地は良いです。
CS:兼松さん、ふだんはバリバリディスクブレーキ仕様のロードバイクに乗られていますが、それと比べて感覚の違いはありましたか?
兼松:もちろん、ブレーキフィーリングの違いはありますよ。ただ走行感に関しては、リムブレーキだからという違いは感じられませんでした。ふだんディスクブレーキに乗り慣れている人からしても、そうした違和感はないと思います。
CS:乗り味の面ではどうでした?
兼松:ハンドリングが癖がなくて優しいなと思いましたね。剛性がすごく高い一方で、こうした点はコンフォート寄りにしているなという印象です。下りなんか特に、安心して走れますよ。
CS:佐野さん、もしこちらの新型に乗り換えるとしたら、どういうパーツで自転車を組みますか?
佐野:やはり、今使っている超軽量なライトウェイトのホイールを履かせて組みますね。コンポーネントもそのまんま載せ替えます。そこがリムブレーキのいいところだと思います。今かなり高級でそうそう買い替えられないパーツを使っているので、それがそのまんま使えるのはとてもうれしいです。気に入っているパーツでもあるし。
レースだけじゃない、上りが楽な“究極のサイクリング用”にも
CS:なるほど。この新型ですが、どういう人におすすめできると思いますか?
佐野:この自転車のコンセプトどおり、レース、特にヒルクライムで上位を狙いたい人にベストだと思います。あとは、上りをもっと楽に上りたい人ですね。よくいろんな人に聞かれるんです、「どうやったらそんなに上りが楽に上れるようになるんですか?」って。
兼松:ああ、それよく聞かれるよね。
佐野:もちろん体力と体重の軽さも重要ですけど、私は自転車の軽さもとても大事だと思うんです。そうした、レースには出ないけど、上りをもっと楽に上りたいという人にもこの自転車はうってつけだと思います。
CS:兼松さんはいかがですか?
兼松:私も同感で、やはりこの上りにおける軽さが強力な武器になるので、ヒルクライムレースに挑戦するシリアスレーサーにおすすめしたいですね。ただ、佐野も言ってましたが、レースだけじゃなくて、ファンライドで楽に上りたい人にも向くと私も思います。最初に思ったより硬いバイクだなと説明しましたが、それは上り坂などでしっかりと踏んだときなんですよね。サイクリングレベルでペダルを回している分には脚にくるとか硬いなという印象はなく、ハンドリングに癖もないので、ファンライドをする人でも安心して乗れます。
佐野:そう。そうした方ってリムブレーキを愛用し続けていることが多いと思います。そして、ディスクブレーキになかなか手を出せないなって思っている人も多いんです。そうした方が“最強のサイクリングの相棒”のように、抵抗感なく移行できるのも魅力だと思います。幅広い層の方が乗れるバイクです。
CS:ありがとうございました。