ロードバイクのメンテナンス どこまで自分でやってどこからショップに任せる?
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ロードバイクにメンテナンスは必須だ。ただ、どこまで自分自身でやればいいのだろう? どこからショップ(プロ)に任せればいいのか? それは悩むところ。自分でマニアックなところまでいじってしまう人もいるが、それってどうなんだろう? 専門家に教えてもらった。
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自分でいじる人はたいていできていない
今回話を聞いたのは、専門学校講師、プロメカニックとして活躍する、自転車コーキ屋店長の濱中康輝さんだ
ロードバイクのメンテナンスは最低限自分でやった方が良い点はあるのだろうか?
「もちろんそうです。全部ショップに任せるというのもアリですが、愛車を長持ちさせ、無用なメカトラブルを生まないためにも、最低限自分自身で日頃からやった方がいい、取り組むことができる点があります」と濱中さん。
なるほど。逆に、例えば変速調整やブレーキの調整など、マニアックな点まで自分でやろうとする人も見受けられるが、それってどうなんだろうか?
「厳しい数字を言うと、そうした本来はショップに任せるべきことまで自分でやってしまう人の99%が、その作業を適切にできていません。
“自分でやったんだけど、最後の仕上げだけやってくれます?”とショップに持ち込む人もいますが、ほとんどが“とっ散らかった状態”になっています。それで余計な費用がかかってしまったりだとか、部品をだめにしてしまう、なんてケースも決して少なくありません。
さて話を本題に戻しますが、ショップに任せるべきところとは、自転車の安全性に関わる部分、そして高い専門技術を要する部分です。こうした部分は生命にも直結する重大な事故にもつながりかねませんので、安易に捉えずショップに任せるのが大前提と考えてほしいですね」。
うーむなるほど……。では、自分でやるべきこと、そしてショップに任せるべきことの2つの観点で詳しいことについて教えていってもらおう。
自分でやるべきこと
①タイヤ空気圧の管理
「これは立派な、そして常日頃から自分でやるべき重要なメンテナンスの筆頭です。タイヤ空気圧が適正でないと、何一ついいことはありません。良い走行性能が得られないばかりか、最悪はパンク、転倒のリスクを高めます。また高すぎるのもよくありません(詳しくはこちらの記事も読もう)。
ライドするごとにできれば空気圧が適正かをチェックし、不足していたら入れてください。ライドごととなると、そのたびにショップでポンプを借りに行くのは難しいですから、ここは自分で・自宅でやるべきです。
なお、空気圧の管理を行っていると、タイヤにひび割れがないか、摩耗していないか確認することにもつながります。自転車との距離が近くなるのでいろいろなタイヤまわりの異常に気づきやすくなります。その意味でも重要なのです」。
②自転車を拭く(きれいにする)
「自転車を拭くってメンテナンスなの? と思うかもしれませんが、実はすごく重要でぜひ自分で取り組んでほしいことなんです。
拭くというのはフレームやホイール、タイヤなどの大きな部分についてです。水で濡らしたウエスで汚れを拭き取ったり、乾拭きしたりするのでOKです。要するに自転車をきれいにする、ということです。
これがなぜ重要かというと、もちろん汚れがひどくなることで自転車の劣化が早くなるのを防ぐ意味合いもありますが、フレームやパーツ類にキズや不具合がないかを発見しやすくする、という理由が大きいです。もし何か大きな問題点を見つけたら、ショップに持って行き、相談しましょう。自転車に愛着がわいて大切に扱うようになる、という意味合いも大きいですよ」。
洗車は住環境が許すなら取り組んでみてほしい
チェーン等の駆動系もきれいにした方がいいと思うが、洗車もやった方がいいのだろうか?
「もし自分の住環境が許すのであれば、ぜひ取り組んでみてほしいと思います。ただ、自宅で水を使って洗車ができる人はそうそう多くはないでしょう」。
「水を使わなくてもできることはあります。室内や玄関先などのスペースで洗浄液を使うのは可能な人なら、チェーンクリーナーキットやパーツクリーナーが各社から発売されていますので、そうしたものを使って駆動系をきれいにするのは有効です。その他の部分は、ウエスでの水拭き・乾拭きを行えばいいのです」。
駆動系は乾拭きするだけでも全然違ってくる!
しかし、自宅でチェーンクリーナーキットやパーツクリーナーすら使うことができない人もわりといるだろう。そうした人はどうすればいいのか?
「そういう場合は、チェーンとスプロケットなどの駆動系をウエスで乾拭きすることをおすすめします。
乾拭きすると、表面についた大きな汚れをたいてい落とせますので、これだけでも相当に状態を良く保つことができます。もう、やるとやらないとでは全然違ってくるほどです。
この方式で、自宅で水もクリーナー類も使わずにある程度自転車の状態をよく保つことは可能です。これは誰でも取り組むことができるでしょう」。
定期的にプロに洗浄を依頼しよう
「ここまで説明した拭き掃除を日頃は行っておき、2〜3か月に1回程度、プロに自転車の洗浄を依頼すれば完璧です。
近年は洗車専門サービスを展開する業者が登場してきていて、そうしたサービスを使える人はぜひ利用してみてください。また、スポーツ自転車専門店の中にも洗車サービスを展開していたり、あるいはクリーニングサービスを展開しているところは多いです」。
③注油
「自分で洗車なり駆動系の洗浄(乾拭きも含めて)を行った方は、ぜひ注油にも取り組んでみてほしいと思います。
どんなオイルを使ったらいいか、どう差したらいいかについては、ショップに相談してみましょう」。
④タイヤ交換
「できるならば挑戦してみてほしいことです。特に、タイヤの中にチューブを入れる方式(チューブドと呼ばれる)についてはぜひできるようになっておいてほしいですね。
というのも、ロードバイクでライドへ出かけて出先でパンクした場合、タイヤを外してチューブを交換できないと対処しようがないためです(他にも方法はあるが、これが一番オーソドックスな対処法だ)。自宅で定期的に脱着の練習をしておいてほしいところです。結果として、これができれば自分でタイヤ・チューブ交換ができます。
ただし、注意点もあります。近年はシーラントを使うチューブレスレディの方式が増えてきており、またカーボンホイールを使う人も増えてきました。その場合、タイヤの脱着にコツが必要となりますので、どうしてもできなかったり、不安が残る場合は無理をせずにショップへ作業を依頼してください。最悪カーボンホイールを壊してしまうことは避けたいですね」。
実は不具合を見つけてショップへ持ち込むことが自分でやるべき最強のメンテナンス!?
「ここまでの話ともつながりますが、自転車に不具合がないかを自分で発見して、もしそうだったらショップへ持っていって整備を依頼すること。実はこれこそ、自分でやるべき最も重要なメンテナンスと言えるのです!」。
緩みチェックに取り組んでみて
「まずやってみてほしく、ほとんどの人がやらない傾向にあるのが緩みチェックです。勘違いしないでほしいのは、ショップで行ってもらうべき“締め付けトルクの管理ではない”ということです。
ロードバイクはそのほとんどの構成部品がネジで止まっています。多くのサイクリストが6角レンチのセットくらいは持っていると思いますが、それを使って各ネジ部分に軽く当ててみて、明らかにスルっと回ってしまうほど緩んでいないかを発見すればいいのです」。
「分かりやすい例で言うと、ボトルケージのネジなんかは、意外と緩んでいることに気づきにくいところです。もし走行中にここがポロッと取れたら……怖いですよね。
明らかな緩みがあればショップへ持ち込み、適切な締め付けトルクまで締め込んでもらう作業を依頼しましょう」。
なるほど! 目からウロコだ。たしかに、こうした不具合がないかを自分で発見し、あればショップへ持ち込んで整備を依頼する。それこそ自分でやるべき最重要なメンテナンスと言える。しかも、何か問題が起きてからでは遅いし、他でもない自分自身じゃないとすぐ気がつくことができない点だ。
「そのとおり! 緩みチェックだけでなく、きちんと変速するか、ブレーキタッチがおかしくないか、各部で異音やがたつきがないかもよく確認しましょう。
また、そうした不調がないかは、例えば日曜日にライドへ出かけるならその前の月曜のうちにチェックして、もし問題があれば平日のうちにショップへ持ち込んでおく、という心構えも大事です。
自分でやるべきメンテナンスとは、トラブルの前の予防という側面を多く含んでいます。“かぜを引かないように日常生活に気をつけるのは自分自身、もしかぜを引いてしまったらお医者さん(ショップ)へ”と言うと分かりやすいでしょうか」。
ショップへ任せるべきところ
では、具体的にショップに任せるべきところとは?
①駆動系
「まずは変速調整なども含めた、ドライブトレインとも言われる部分です。ここは専門技術が入りますし、繰り返しますが不具合を起こすと部品の破損や最悪転倒につながるところですので、必ずショップへ任せてください」。
②ブレーキまわり
「命に直結する重要な部分ですので、ここもショップへ任せてください。特に近年はディスクブレーキ仕様のロードバイクが増えてきていて、より注意してほしいところです」。
③ホイールまわり
「振れ取りなどの調整や組み立てについてです。ここも必ずショップへ任せましょう」。
④ハンドル/ステム/シートポストなどの部品
「こうした部品は自分で簡単にいじれるように思われがちですが、取り付け方を誤ると重大な事故につながりかねませんので、ショップへ任せてください」。
「特に近年はフレームも含めてカーボン製のハンドル、ステム、シートポストがかなり増えてきていて、先ほど話が出たように締め付けトルクの管理が非常に重要となります。トルクレンチを使って適切に締め付けないと部品の破損につながります。また、部品ごとメーカーごとで締め付けトルクが異なってきて見極めが必要になってきます。それはやはりプロに任せるのが早くて確実です」。
⑤ヘッドパーツ/BB/ハブの回転部分は絶対に開けないで!
「マニアックな話となりますが、ヘッドパーツ、BB、ハブの回転部分について、自分でメンテナンスしてみたいとか、より回転を良くしたいと中を開けていじろうとする人が一定数います。
が、ここは絶対に開けないでください。ここはそれぞれのメーカーで開け方や作業方法が異なってくるうえ、精度が比較的追求される部分となります。特にヘッドパーツなんかがそうですが、壊してしまうとフレームごとダメになってしまうという別の大問題に発展してしまいますので」。
自分でチャレンジしてみてどうしようもないような失敗に見舞われるぐらいだったら、しっかりとプロに依頼する方が結局時間もお金も損をしないということだ。
みなさんもぜひ参考にし、愛車を良い状態に保ってほしい。