日本代表がパリ五輪で使用するトラックバイク「V-Izu TCM-2」発表
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パリ2024オリンピックで金メダルを狙うトラックバイク《V-Izu TCM2》
パリ2024オリンピックで日本ナショナルチームが使用するトラックバイクが発表された。バイクの名称は《V-Izu(ブイ・イズ)・TCM-2》。開発したのは東レ・カーボンマジック社。現在もレーシングカーを開発する企業である。
「東レカーボンマジックが培ってきたレースカーの開発技術、東レの最先端カーボン技術、HPCJCの高い目標への気持ち、これら3つをひとつとして、日本初のイノベーションを巻き起こして世界を席巻していきたいと思っています」(東レ・カーボンマジック社 代表取締役 奥 明栄氏)
フォークの後ろにリヤステーが隠れる形状
開発の中で最も大きく気を払ったのが、空力性能の改善だという。「TCM-2の特徴は前から見た形に凝縮されています」(同)。
幅の広いフロントフォークとシートステー幅の広さ。そこが今回のバイクの大きな点だ。前面から見ると、フロントフォークの後ろにシートステーが隠れる形になっている。フォークの幅を大きく広げたのは、フォークの後ろに発生する空気の渦を利用して人の体が起こす空気抵抗を軽減するという考え方。
ドライブトレインが左側にあるのは、トラックの周回方向が左回りであり、その際に発生する空気抵抗を、左側にドライブトレインを置くことによって軽減させられるという実験結果から。フレーム素材には東レの最先端のカーボン素材であるT1100G、M40X、M46Xを使用して、主に軽量化を図っている。
「慣性で加速し続ける」「下りでの加速がすごい」
JCF の選手強化スーパーバイザーである中野浩一氏は、次のように語る。
「選手の感想は『スピードに乗ったら、落ちづらい』というもの。慣性に乗ると、本人が感じるよりもスピードが出ていると言います。ゆっくり走ると重たく感じるけれども、スピードが上がるだけ速さを感じられる。レベルの高い大会で使用するほど、その効果を感じられます」
窪木一茂は「50〜60kmほどにスピードが乗ると、その慣性で加速し続ける感覚がある」。佐藤水菜は「バンクの上から降りるときに、下りでの加速がすごい」とその乗り味を語っている。
すばやい開発のレスポンス
開発に携わった、HPCJCのテクニカルディレクター、ブノワ・ベトゥ氏は次のように述べた。
「最もこだわった点は、バイクにマネキンを乗せて空力の研究開発を行ったこと。それが全てを変えたと言っても過言ではありません。そして彼らがしてくれたのは、とてもレスポンスの良い対応です。
最初に作ったバイクは剛性もなく、ほとんど使い物になりませんでした。それを彼らは2カ月で改善しました。改善のスピードが毎回、とても速い。
彼らはすぐに私たちが何を望んでいるかを理解し、いつも解決策を見つけ出してきました。とてもプロフェッショナルです。それに彼らはいつもここ(伊豆ベロドローム)に来てくれ、話し合い、乗っての開発を進めました。これが本当の協力と呼ぶのだと思います。
また一緒に開発できたことを、本当に嬉しく思っています。私にとっては、とても素晴らしい冒険でした。サイクリストにとって、最も嬉しいのは、自分が開発に携われることだからです(笑)」
V-Izuの意味は? 重量は? 価格は?
V-Izuという名称は『ビクトリー』と『ベロドローム』のVと、伊豆で開発されたという意味を込めているという。カラーは、現在の日本ナショナルジャージのカラーリングと合わせたもの。リヤハブ周辺の日の丸が、日本を金メダルに誘うという気持ちを高めている。
全体重量は、ハンドル周りのパーツやサイズによって異なるが、最小重量規定である6.8kgより15%ほど重くなっているという。このTCM-2は市販されており、その価格は1985万円(税抜)。
【参考URL】
V-Izu TCM-2販売ページ
https://www.synergy-planning.com/v-izu
東レ・カーボンマジック
https://www.carbonmagic.com/
JCF公式HP
https://jcf.or.jp/
HPCJC HP
https://japanhpc.com/