安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.5
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大手スポーツ用品メーカー、ヨネックスがロードフレームを作り始めた。このロードバイク界に異業種参入型ブランドがまた一つ誕生したのである。第一弾は650gの超軽量カーボンフレーム、カーボネックス。設計担当者へのインタビューを交えつつ、この純国産フレームの真実に迫る。
最大の欠点
じつに手の込んだフレームである。いかにも日本の技術者が真面目に取り組んだという印象だ。ゴムメタル、X-フラーレン、OPS理論、650g…機材好きとしてテンションが上がる単語がズラリと並ぶ。
しかし、その盛り上がった気分を急冷するのがジオメトリである。フレームサイズが少ないのだ。40万円のフレームがXS、S、Mのたった3サイズしか展開しないというのはいかがなものか。ジオメトリはフレームの命である。これでは目の肥えた日本のロード乗りを納得させることはできない。
ジオメトリについても担当者につっこんでみたが、答えは「やはりコストが…」ということだった。
いちおうジオメトリ表を確認しよう。トップチューブ長(水平換算)は520mm、535mm、550mmm。ヘッド角もシート角も3サイズ全てで変えられており、XSサイズでもフロントセンターがしっかりと確保されている。だがリーチは377mm、385mm、389mmと、最少サイズと最大サイズで12mmしか変わらないので注意だ。ヘッドチューブ長は115~140mmと適度に短く、ここは好印象である。
今後に期待
しかし、このサイズバリエーションの貧弱さは、BBハイトやフォークオフセットやチェーンステー長が共通だと指摘する以前の問題である。
コストのハードルがあるのは分かる。日本人の体型であればこの3サイズでほぼカバーできてしまうのかもしれない。しかし、サイズの重要度はスポーツシューズと同じ。ピナレロ、コルナゴ、デローザが今でも無条件に一定レベルの尊敬を集めるのは、カーボン時代になってからも必ず10種類前後のフレームサイズを用意するからである。
ここは設計担当者も問題だと考えているらしく、「サイズ展開は今後考えていかなければならないところだと思っています」と言っていた。フレームサイズを倍にしたら販売価格も倍になってしまいましたでは誰も買わなくなるから、バランスが難しいところなのだろうが、今後に期待したい。
気を取り直して、設計についての質問を続ける。フレームサイズによって設計は変えているのだろうか。
「もちろん剛性がどのフレームサイズでも同じになるように、設計を変えています」
その方法は?剛性を計測しているのか、テストライドによって決めているのか。
「主に計算によってフレームサイズごとに設計を変えています」
そういえばエアロロードは候補に挙がらなかったのだろうか。
「今後は検討していかなければならないカテゴリーだと思っています。しかし今回は軽さと走行性能を重視したモデルということで、空力は無視しました」