スラムが新型レッドAXSを発表 試乗短評あり
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モデルチェンジが、うわさになっていたスラムのロード用最高級コンポーネント、レッドAXSがついに姿を現した。短い時間だが試乗する機会を得たので、その短評をお届けする。
エフォートレス(努力を必要としない)なライドを可能にする。そんなコンセプトを掲げて新世代のスラム・レッドAXS(以下、新型レッド)が登場した。そろそろ新製品が出そうだと言われていたが、スパイショットらしきものも少なく、突然、モデルチェンジした。最初に言い訳しておくと、本稿を執筆段階で仕様の詳細は分からない。詳しい資料もないが、サイクルスポーツは新型レッドに試乗できる機会を得た。そこで、現段階で入手した資料をもとに、期待の新作を紹介しよう。
スラムがロードコンポを作り始めたのは2006年の“フォース”が最初だ。翌年、軽量な上位モデルとしてレッドがデビューする。その後、2013年に11速化、2015年にワイヤレス変速システムのeタップを、2019年に12速化とAXSアプリの導入と進化を重ねてきた。今回紹介する新型レッドは、eタップとしては3世代目となる。
レッドAXS、電動ロード用コンポーネントとして磨きをかけた
最高級ロードバイクのコンポでトップシェアを走るのは、シマノ・デュラエースである。しかし、この10年を振り返って、機能面からリードしてきたのはレッドだったのも事実だ。手元の資料にある“エフォートレスなライドを可能にする”とはナニか? 次世代ロードバイクにどのような提案をするのか興味は尽きない。
端的に言えば、新型レッドはより使いやすく、より軽くなっているという。全面刷新となったコントロールレバーは、ブレーキ用油圧シリンダーの位置を、ブラケット先端からブラケットの中心部に移設。全体の設計を見直すことで、圧倒的とも言える軽い操作感を手にしている。また、ブレーキレバーのストローク調整幅も大きくなり、手の大小を問わずフィット感が向上している。
変速性能に目を向けると、フロントディレーラーはプレート間のクリアランスを狭くして変速性能を向上させている。また、リヤディレーラーはビッグプーリーを採用するなど、高性能化を図ると同時にトレンドを上手に取り入れている。
軽量化については、ワイヤレスコンポとしては最軽量をうたっているが、スペックの詳細が明らかにされていない。ただ、大胆な肉抜き工作を施したブレーキキャリパー、そしてレバーは大幅な軽量化に成功しており、チェーンも13gほど軽くなっているという。どちらも絶対重量を考えれば、かなり軽くなっていると言える。現在、スラムはコンポだけでなく、ホイール&ハンドルメーカーの“ジップ”、サイクルコンピュータの“ハンマーヘッド”を傘下に抱えており、それらグループ企業と連携した製品作りをしているという。
ホイールに関してはライバルもラインナップを持っているが、サイクルコンピュータも視野に入れているとなると、かなり面白そうなことも考えられる。今回はハンマーヘッドがなく、詳細も明らかにされていないが、発売が楽しみである。
派手というよりは、落ち着いたモデルチェンジのように見えるが、こういうときこそ完成度の高い製品であることが多いので、期待が高まる。
レバー形状を大幅にアップデート
レッドAXSグループセット価格/50万4600円(コントロールレバー&ブレーキキャリパー左右セット、フロントディレーラー、リヤディレーラー、チェーン、ブレーキローター160mm前後セット、バッテリー2個、充電器、ハンマーヘッド・カルー)※クランクセット、スプロケット別売り
【試乗短評】コントロールレバーが進化し、誰にでも扱いやすく、高いレベルの快適性を手に入れた。
流行から始まって、スタンダードになるまで、おおよそ10年かかる。電動変速システムにしても、ディスクブレーキにしても、同じような時間をかけて標準化されてきた。コンポーネントパーツの選択方法として「コントロールレバーのフィット感で決めればいい」と言われるようになって、そろそろ10年がたつ。実際に買うとなると、価格やアフターサービスなども重要になるが、新作のレッドは多くの人に魅力的な選択肢なのは間違いない。ブレーキレバーを引くときの軽さは、絶品だ。間違いなくライバルを置き去りにしている。レバーやブラケットの形状の評価は好みが分かれるだろうが、ベストチョイスの一つである。
コンポの性能評価をするときに変速性能を気にする人は多い。比較すれば、当然差はある。しかしスラム、シマノ、カンパニョーロを比較して、ストレスに感じることなどない。それよりも、選択できるギヤレシオやブレーキの制動感を気にした方がいい。試乗期間も短く、制動力は現在も向上中といった感じなので、最終的な評価は次回にしたいが、絶対的な制動力よりも、そこに至るまでのコントロール性の向上がモデルチェンジで得たアドバンテージだ。そして、キャリーオーバーに見えるクランクまで手を抜かず、しっかりと軽量化を進めたのも美点である。
スペシャライズド・ターマックSL8×新型レッド
完成車価格/179万3000円
問 スペシャライズド・ジャパン
スペシャライズドは最上級モデルSワークス ターマック SL8にレッドAXSをアッセンブルした完成車を設定した。それが今回の試乗車だ。重量はフレームサイズ54cmで6.8kg(実測)。元々、エアロと軽量性を兼ね備えたターマックだが、ペイント済みの重量だと考えると、レッドeタップAXSの貢献も小さくないだろう。
コンポが変われば、当然のように完成車の印象も変わる。フロント変速は応答性が良くなったし、ブレーキもブラケットポジションでは80%もレバーが軽く引けるようになったので、軽快にハードブレーキングができる。また、ブラケットのリーチが長くなったので、1cm程度ハンドルが遠くなる。ヘッドまわりの剛性が増し、ハンドリングに優れるフレームだが、ブレーキ性能が上がることで、旧型よりもシャープでコントロール性が向上している。