安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.6

目次

安井カーボネックス6

大手スポーツ用品メーカー、ヨネックスがロードフレームを作り始めた。このロードバイク界に異業種参入型ブランドがまた一つ誕生したのである。第一弾は650gの超軽量カーボンフレーム、カーボネックス。設計担当者へのインタビューを交えつつ、この純国産フレームの真実に迫る。

 

実に気持ちいい

安井カーボネックス6

では実走に移ろう。試乗車はXSサイズのアルテグラ完成車である。面白そうなフレームだと思いつつも、どこかで心配していた部分はあった。第一作目にして軽さに振っちゃって……と。
 
超軽量性と走行性能を両立させることのできるメーカーは限られているのが現状だ。しかしカーボネックスはいい意味で予想を裏切った。軽快感は高いが嫌な硬さは全くなく、しなりを活かしながらスイスイと進むのである。ハンガー回りはしなるが、そのウィップをうまく推進力に変換しているという印象。これは実に気持ちいいフレームだ。
 
発売直後の試乗会でチョイ乗りしたときは、とにかくしなやかさ・ソフトさが印象的だったのだが、パーツを自分仕様に組み替え、色々なホイールでしっかり乗り込んでみると、フレーム剛性感の中心にはしっかりとした芯があることが分かる。表面には優しさが残してあるが、踏み込んで「優しさゾーン」を乗り越えたところにあるのは、強靭な芯なのだ。いくら乱暴に踏んでもフレームは顎を出さない。しなやかなハンガーに対してフロント周りはしっかりしているため、高負荷コーナリングでもスタッと安定している。

 

手を取り合って走っていける

安井カーボネックス6

快適性も非常に高い。あのチェーンステーがいい仕事をしているのか、シートステー上部に入っているゴムメタルが効いているのか、推進力を削ぐことなく微振動を上手く消し、路面追従性を高めることに成功している。しかし、快適性と動力伝達性を完全に切り離したような、人工的な感じはない。ここがカーボネックス最大の魅力である。近年の高性能ロードフレームにありがちな「バイクが乗り手を置いてきぼりにする感じ」がなく、共に手を取り合って走っていけるのだ。ハンドリングも至極ニュートラル。体にバイクが吸い付くように自由自在に動いてくれる。
 
南多摩尾根幹線道路の地上1mを滑空するように進み、東京西部の上りセクションに入る。するとカーボネックスは、さらにいきいきと輝き出した。
 
重量からもわかるように、分かりやすいパリパリの剛性を武器に走るフレームではない。登坂でもしなやかでソフトでマイルドでスムーズだが、やはり芯が強い。とくにダンシング時の剛性感は絶品だ。ペダルに荷重が乗り、ダウンチューブがクッとねばり、次の瞬間ピュンと戻ってバイクをポーンと弾き出す、そんなイメージだ。ダウンチューブの丸断面がいい仕事をしている気がする。こうなれば「世界最軽量クラスのフレーム」といういささか時代遅れに思えるコンセプトにも説得力が出てくるというものだ。ヒルクライム専業としても最適な一台である。
 
 
 
 
■安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.5へ戻る
 
■安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.7へ続く