ピナレロ新型ドグマF さらにスパルタンに磨かれた旗艦

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ピナレロドグマF2024

まもなく第111回ツール・ド・フランスが開幕する。レースの行方はもちろんだが、このビッグタイトルに向けて、各社が新型を発表する時期でもあり、機材マニアにとってはアンテナの感度が高まる。

そこに、さっそくピナレロからリリースが届いた。旗艦、ドグマFのモデルチェンジである。初代ドグマが発表されてから22年。最新のドグマとはどのようなバイクなのか。

ドグマF=最高峰

ピナレロドグマF2024

まずモデル名は「ドグマF」。そう、先代と同じだ。ここ10年ほどはドグマF+数字というモデル名を与えられており、その最初であるF8から、F10、F12、そして先代のFで数字が取れた。そして今回のモデルチェンジでも、その名を継承するのは「ピナレロのフラッグシップモデルの名前=”ドグマF”として定着させたい」という意図があるという。
モデル名の話だけで引っ張ってしまったが、肝心のフレームについて解説していこう。新作ドグマFには、速さに磨きをかけるために様々な細かい、しかし重要な改良が加えられている。
2022年のツール・ド・フランスにおけるゲラント・トーマス(イネオス グレナディアス)の走行データを元に、以下の項目について影響度を調べた。

マージナルゲインの追求

・バイク速度
・風速
・パワー
・トルク
・ケイデンス
・空気抵抗パワー
・転がり抵抗
・登坂パワー
・ドライブトレインの摩擦

上記のデータから、何が必要で何が不要なのかを探りながらバイク開発をしたという。

※下記のグラフ参照

ピナレロドグマF2024

長いグランツールの期間中に、空気抵抗係数の0.2%の改善はバイクを175g軽量化することに相当するとエンジニアは語る。イネオス グレナディアスのパフォーマンス解析チームが、ゲラント・トーマスの2022年ツール・ド・フランスの全ステージデータを測定し、平坦区間、上り、下りなどの異なる状況での潜在的なエネルギーの節約と平均エネルギー使用量を比較した結果、CdA(空気抵抗係数)の小さな改善と転がり抵抗の減少が、大きな重量削減よりも価値があると判断した。

ピナレロドグマF2024

グランツールでは長い上り、ハイスピードの下り、はたまた平坦路など様々。また大集団で起伏の激しい道を走る事もある。これらを客観的に見ると、空力的な利点は重量の削減よりも価値があると判断した。 このため、新しいドグマFの設計においては、バイクのCdAを0.2%減らす(異なるヨー角からの空気抵抗の平均値)ことに細心の注意を払って、真のマージナルゲインに重点を置いた開発が行われた。そして、重量削減は重視していないとしつつも前作より108g軽量化されている。

横から見たフレームのシルエットは、前作との違いを見つけるのが難しいが、正面から見るとその体積が減少していることに気がつくはずだ。ワイヤ内蔵ルートを変更しメンテナンス性が向上すると共に、幅が8mm狭くなることで空気抵抗も軽減されている。

ピナレロドグマF2024

ブレーキホースはフォークコラムの前側を通るため、コラムスペーサーとトップキャップで前後方向の寸法が異なる

ピナレロドグマF2024

右側が新しいヘッドトップキャップ。ワイヤを通すためのスペースが前側に位置している

ピナレロドグマF2024

ブレーキホースの内装ルートを変更したことで、ヘッドチューブの幅が狭くなり、それに伴ってダウンチューブもよりスリムになった

ステム一体型ハンドルの設計も刷新。軽量化され、トップ部よりもドロップ部が広くなっているフレア形状を採用。そのドロップ部のアールも前方に深く取られている。サイズ展開も6種類用意される。

ピナレロドグマF2024

ピナレロドグマFハンドル

新型ドグマF専用に設計されたステム一体型ハンドルバー

 

そしてBBは、まるでトラックバイクのような大きなボリューム。フレーム素材のカーボンには東レ製「M40X」というカーボンが使われている。この素材は、東レが第3世代の炭素繊維と謳う、硬さと強度という両立が難しい特性を備えた素材で、これをフレームに使うことで横剛性が向上している。これはBB周辺の設計改良に役立てられている。

ピナレロドグマF2024

ダウンチューブの角度が3.5度上向きになりBBエリアの空力を向上している。アワーレコードチャレンジのバイクデザインを応用した形状だという。

ピナレロドグマF2024

そのほか、ドライブトレイン側からバイクを見たときにスルーアクスルの取付穴が見えないようになっていたり、シートクランプの上部がフレームで覆われているなど、見た目をスマートにすることで高級感もアップしている。

ピナレロドグマF2024

フロントフォークの右側エンド部分。スルーアクスルの穴が塞がれてブランドロゴがあしらわれている

ピナレロドグマF2024

リヤエンド側も同様

ピナレロドグマF2024

シートクランプの上部も、固定小物が見えないようになっている

 

土井雪広氏が試乗

ピナレロドグマF2024土井雪広

今回、イタリアで行われた新型ドグマFの発表に、サイクルスポーツの記者として、元プロロード選手の土井雪広氏が参加した。

ピナレロドグマF2024ドロミテで発表会

ドロミテの山の中に設定された試乗コースで、ハードに加速したり、下りでハードにブレーキングしたりと試したその第一印象は

「非常に硬いフレームだということでした。イネオスの選手、ゲラント・トーマスやトーマス・ピドコックの意見が反映されているということですが、彼らの反射神経やパワーを受け止めることを考えるとこの硬さになってくるのかもしれません。組み合わせるホイールを慎重に選びたいですね。

ハンドル形状も新型になっています。これはすごく使いやすいです。ドロップ量自体は大きくないですが、カーブが前方に深くなっていて握りやすい。そのドロップ部はフレア形状になっているので、ドロップを握ってスプリントしても、手首がハンドルの肩の部分に当たらないのもいいですね」

ピナレロドグマF2024土井雪広

フレーム&ハンドルサイズ、カラーバリエーション

フレームセット価格/115万5000円
専用ハンドル、タロンウルトラファスト価格/19万3600円

・参考重量
スラム・レッドAXS+プリンストン・ピーク4550ホイール/6.63kg
シマノ・デュラエースDi2+プリンストン・ピーク4550ホイール/6.77kg
カンパニョーロ・スーパーレコードワイヤレス+同・ボーラWTO45ホイール/6.88kg

ピナレロドグマF2024カラーバリエーション

ピナレロドグマF2024ジオメトリ

ドグマFサイズ展開

日本でさらに距離を乗り込んだインプレ記事を今後掲載予定です。