安井行生のロードバイク徹底評論第5回 PINARELLO DOGMA F8 vol.3

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安井ドグマF8-3

ピナレロのフラッグシップが劇的な変化を遂げた。2015シーズンの主役たるドグマF8である。「20年に一度の革新的な素材」と呼ばれる東レ・T1100Gと、ジャガーと共同で行なったエアロロード化は、ピナレロの走りをどう変えたのか。新旧ドグマの比較を通して、進化の幅とその方向性を探る。東レ・T1100Gの正体に迫る技術解説も必読。vol.3

 

風洞実験の結果は非常に優秀

安井ドグマF8-3

そんな隅々にまでわたる空気抵抗削減の努力は、実際にどのような結果をもたらしたのか。メーカーが発表した風洞実験データによると、空気抵抗はドグマ65.1に比べてフレーム単体でマイナス45%、フォーク単体でマイナス54%、フレーム+フォークではマイナス47%と、約半分になっている。
 
しかし、自転車はフレームだけで走るわけではない。肝心なのは、完成車にしてライダーが乗った状態での空力性能である。ピナレロは、ちゃんとライダーを乗せてペダリングをした状態でも実験を行なっていた。完成車+ライダーの状態だと、空気抵抗はドグマ65.1比でマイナス4.9%。完成車のみだとマイナス17.5%だという。
 
これは決して小さな数字ではない。メーカーがカタログなどでうたう性能向上指数はどこまで信用できるかわからないが、ドグマF8のフレームをじっくり観察した印象は、後だしジャンケンだけあって空力に関してはいきなり煮詰めてきたというものである。

 

今でもロードバイクの心はイタリアの地に息づく

オンダフォークに次ぐピナレロのアイコンとなっている完全左右非対称設計だが、旧ドグマと比べるとややおとなしくなった印象。とはいえ、フロントフォークのブレードは右のほうが明らかに太いし、シートステー上部も左右で形状が大きく異なっている。ダウンチューブまで左右非対称形状となり、ドグマ65.1と比べて左右バランスが16%向上しているという。

安井ドグマF8-3

ジオメトリも見ておこう。S~XLの4種類でお茶を濁すメーカーも多いなか、ピナレロは13種類ものフレームサイズをラインナップする。この点において、やはりピナレロ、コルナゴ、デローザのイタリア御三家の姿勢はすばらしい。いくら褒めても褒めすぎにはならない。
 
治具での調整がきかないカーボンフレームにもかかわらず、ピナレロは13種類、デローザは9種類、コルナゴに至っては14種類もフレームサイズを用意する。イタリアンブランドの生産拠点の多くがアジアに移ってしまった今でも、ロードバイクの心はイタリアの地に息づいているのだ。