パリ五輪日本代表・新城幸也インタビュー 前に残れば10位以内を狙う

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パリ五輪日本代表・新城幸也インタビュー

ロンドン五輪に似た展開になる

全日本選手権のために帰国し、レース後は石垣島での壮行会、そしてスポンサーや関係者を集めたチーム幸也主催の都内での壮行会と、筆者は新城幸也に何度か会うチャンスがあった。短時間ではあったが、パリ五輪に対する思いを聞くことができたので書いておこうと思う。

オリンピックは特別です」。ユキヤは何度もそう口にした。

日の丸はやっぱり特別な気持ちにさせてくれます。自転車を始めたときから、いや、中学時代、高校時代とハンドボールをやってきましたが、日本代表というのはいつも憧れの存在ですし、それを着られるのは特別なことです。世界中が日の丸をみてくれるので、そこでいい成績を収めたい。

チーム(バーレーン ヴィクトリアス)にいると、チームの一員としての働きになってしまうけれど、オリンピックは自分の成績を優先して走ることができる。メダルはと聞かれると、若い頃ならメダルに憧れていましたが、3大会走ってきてオリンピックに対しての注目度が上がり、その難しさというのもわかってきた。でも、悔いのないように全力を出し切るレースをしたい。メダルをたぐり寄せる展開にして、結果がついてきてくれれば最高です」。

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ユキヤは21年前の2003年4月1日、パリのシャルルドゴール空港に生まれて初めて降り立った。その日のことを鮮明に覚えているという。

僕の自転車選手としての始まりの地」。そこで行われるオリンピックに、特別な思いを抱かないはずがない。

オリンピックは難しいんですよ。世界選手権はオリンピックよりも出走人数が多いのですが(2023年の世界選は195人)、オリンピックは1カ国あたり最大4人、集団も90人しかいないので、各国がリーダー1人にアシスト2人で来るのか、全員リーダーで来るのか。コース自体もパリの周辺を走るんですが、アップダウンが続くトリッキーなコースです。長い上りはないんですが、その分難しい大会になると感じています。イメージとしてはロンドンオリンピックのようになるのではと感じています」。

ロンドン五輪の男子自転車ロードレースは距離250km、獲得標高2542mで争われた。出走は144人、完走は110人だった。それに比べてパリ五輪は273km、獲得標高は2800mとされている。パリでは五輪憲章による男女平等の原則から、ロードレースは男女とも90人の出走となり、男子は従来より大幅に減った。複数人数出走の国は20しかなく、日本を含む1人出走の国は35もある。

同じく日の丸を背負って走る世界選でいえば、昨年(ユキヤはDNF)の距離は271km、獲得標高は3385m、出走は195人。そのなかでユキヤは3番目に高齢であり、2007年から15回に渡って世界選に出場している点では世界トップだった。

また、ユキヤが2010年に9位となったジーロングでの世界選は距離262km、標高差2492mだ。おそらく、ユキヤが望む展開は、ロンドン五輪であり、ジーロング世界選なのだろう。

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コース図を見ながらユキヤに聞いてみた。パリの西部を大きく周回する区間(225km!)では、ユキヤの予想では大きな展開は起きない。

大きい周回の後半、山が連続する区間(166km付近から)で、まず動きがあると思いますが3人、4人いる国がうまく潰し合って、レースがフィニッシュ近くまで行くことを祈っています」とユキヤは話す。

レースは終盤、セーヌ川を渡ってルーヴル美術館を通過し、モンマルトルの丘の周回路、18.4kmを2周する区間での勝負となるはずだ。

ユキヤは「パリのサーキットに入ってくる集団は、僕の予想では30人くらい。この集団より後ろにいる選手はもう前に戻ってくることはない。そこに残り、最後に勝負する」。そう、ユキヤは日の丸を背負って勝負に出るのだ。

ユキヤのこれまでの五輪のリザルトはロンドンが48位、リオが27位、東京が35位だ。リオや東京のような強烈な山岳レースでもあの順位だったのだから、パリはいけるんじゃないかと水を向けると「とは思いますけどね」とユキヤは答えた。

前に残れば10位以内、途中でちぎられたら(これまでの最高位の)27位以上を狙います」。世界選に比べたら上位に入る可能性はある、ユキヤの目は強くそう語っていた。

しっかり前に残りたい」。

 

使用機材とトレーニングメニュー

使うバイクはメリダ・スクルトゥーラ、五輪仕様のスペシャルカラーという噂はないようだ。ホイールは、60mmのディープリム?「かな〜、と思っています」。

そしてタイヤはコンチネンタル5000のTT、28Cなのだそうだ。「全日本もこれです。軽いし、速いです。全然違います。雨でのグリップと耐久性のことを言われるけれど、全然問題ないです」。全日本での空気圧は完全レインのため前4.5、後ろ4.7。そしてギヤは54×40、11〜34だ。「それしか使ってないです」とユキヤは微笑んだ。

ナショナルチームのウエアはパールイズミ、ヘルメットはオージーケーカブト(R2もしくはフレックスエアー)、シューズはスポンサードされているシマノだ。

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日本から向かう五輪選手団はチャーター機などがありそうだが、ユキヤはアンドラからバルセロナへ移動し、パリへ飛ぶことになるだろう。8月1日にはコースの試走があるので、その前までにパリに入り、本番に挑むという。

リオやロンドンのときは今のようなデータはなかった。今はコースのデータがあるから、作戦は立てやすいです」とユキヤは言う。

やろうと思えばストリートビューで道の幅やコーナーを見ることができるだろうし、上り坂区間のベストタイムをチェックすることもできそうだ。五輪のコースなのだから、レースが近づくに従っていろんなサイトにそんな情報がアップされることも期待できるだろう。

パリ五輪日本代表・新城幸也インタビュー

6月に行われた2024全日本選手権。ロードレースでは7位、個人TTで3位・銅メダルを獲得した

 

作戦といえば、ユキヤのトレーニングメニューを作っているのは元選手のミケーレ・バルトリだ。バルトリは例えば全日本のTTに対しても、お世辞にも上等とはいえないコースプロフィールを見て作戦を提示してくれていた。「上り区間は勾配が5%程度なら○ワット、それ以下なら○ワット。下り区間は○ワットでリカバリーを試みる。下りでは心拍を少しでも下げるためにこうする」という具合である。

バルトリのメニューについてユキヤに聞いてみた。
調子の上がりがわかりやすいです。こんなのでいいのかと思うけれど、レースには帳尻が合う。(トレーニングを)もっとやっていいんじゃないかと思うけれど、それは計算されているみたいです。シーズンを通して見てくれているから、無理するところが違っているんだと思います」。

ペイバスクに向けて準備するのと全日本に準備するのとはメニューが違います。それに合わせて週ごとにトレーニングメニューが出てくる。20分のメニューが多い週もあれば、10分のメニューが多い週もある。それはたぶん基本ですよ、昔からそうです。100%がワット指定じゃなくて、今も心拍で指定されるメニューもあります。それが面白いですね。何か意図があるんだと思いますが、勉強していないからわからないですけれど(笑)」。

今度のオリンピックはそれぞれの上りが2km以内なので、頑張る時間なども違います。そういうトレーニングになる。これからキツいメニューが入ってくるんだと思います」とユキヤ。残り1カ月、アンドラでのユキヤのトレーニングは熾烈を極めそうだ。

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1年前から準備してきた、8月3日。全日本選手権前後のどのインタビューでも、ユキヤは「8月3日」という日付を口にした。その日付は、なんとお父さんの誕生日だという。

父の70歳の誕生日なんです」。

古希を迎える父、貞美さんの誕生日に日の丸を背負うユキヤ。特別な地パリで走る、おそらく最後の五輪ロード。ユキヤの集大成、ぜひこの目で見たいと思っている。