安井行生のロードバイク徹底評論 第4回 LOOK 675 vol.3
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最初は誰もが異端児だと思ったルック・675。しかし同じスタイルをまとう795の登場によって、キワモノではなく次世代ルックのブランドアイデンティティーを背負う存在として見なければならなくなった。「なぜルックはこんなフレームを作ったのか?」をメインテーマに書く徹底評論第4回。発表されたばかりの795を見る目も変わる、渾身のルック論である。vol.3
ルックにとって「重要な要素」
納得がいかなかった筆者は、本社の技術者に聞いてほしいと依頼した。ただのインプレ記事ならば、乗ってどうだったかを正直に書くだけでいい。しかし、タイトルに「評論」を冠するこの連載でお茶を濁すことはしたくない。
新しいカタチや設計があれば、どうしてこの設計にしたのか、その理由を考える。考えて分からなければ、作り手に聞く。聞けなければ、もしくは聞いても分からなければ、乗って吟味し、その結果と設計とを結び付けて推測する。それがこの文章の使命である。
「なぜルックは、ポジションの制限という大きな欠点をかかえてまで、このような見た目重視のフレームを作ったのか」- この問いかけが、675評論における唯一にして最大のポイントであると筆者は考える。
2015モデル発表会のために渡仏するという代理店担当者に質問を託したところ、本社担当者に回答をもらうことができた。以下、ルック社のプロダクトマネージャー、フレデリック・キャロン氏との質疑応答である。
Q:トップチューブの形状にはどんな意味があるのでしょうか?
A:空気抵抗削減とオリジナリティを出すためです。我々は、スタイリッシュな外観は高級ロードバイクにとって重要な要素だと考えています。
ルックというブランドが変貌しつつあることがうかがえる、重要な内容がこの返答には含まれている。形状を見る限り、「空気抵抗の削減」より、「オリジナリティを出すため」という理由のほうが大きいだろう。ルックは、自社のロードフレームに、今までにない価値を付加しようとしているのだ。
吉とでるか凶とでるか
確かに見た目は大切だ。あのイタリアンブランドがいつの時代も一定の支持を得ているのも、あの新興ブランドが躍進したのも、モノはいいのに人気がイマイチなあの某ブランドも、その理由の大部分を占めているのはおそらく見た目(とブランドイメージ)である。いくらよく走るバイクでもカッコよくなければユーザーはお金を出してくれない。ルックのこの路線変更が吉とでるか凶とでるか。
なお、この675に続き、次期フラッグシップとなる795も一角獣スタイルを採用した。795をいきなりこの姿で出すとさすがに拒否反応が出るだろうから、795の市場調査先行モデルとして675を出した……というのはさすがに考えすぎか。
筆者は795の写真を見て正直ゲッと思ったが、675で見慣れたからか5分後にはカッコよく見えてきた。人の感覚は様々なものに影響を受けて猫の目のようにコロコロ変わるのだから、あながち的外れな推測ではないと思うのだが。