安井行生のロードバイク徹底評論 第3回 RIDLEY FENIX vol.5
目次
フレーム価格10万円台ながら、ロット・ベリソルのメンバーを乗せて過酷なパリ~ルーベを走るフェニックス。プロトンの中で最も安価なフレームとして有名なリドレーのミドルグレードモデルである。この不死鳥は40~50万円クラスを蹴散らすハイエンドキラーなのか、それとも値段相応の凡車なのか。歴代のリドレーミドルグレードを試乗してきた安井がシゴき倒す。
フェニックス×ボーラ
試乗車には当然ながらFFWDのF5Rが装着されているのだが(リドレーもFFWDもJPスポーツグループが代理店を務めている)、空力性能と引き換えに快適性も軽さも失い始めるリムハイト50mmクラスでは、フェニックスの剛性感と相性が悪いかもしれない。リムハイトの低い軽量ホイール(ハイペロン系やFFWDでいえばF2Rなど)にすると、フェニックスの芯のある剛性感とホイールの軽やかさがリンクしてバランスが一気によくなる。
しかし驚いたのがボーラとのマッチングである。G3スポーキングとフェニックスの剛性感がピタリとフィットするのか、50mmハイトながらもっさり感が見事に消え去り、重い革靴をスニーカーに履き替えたように軽やかになる。他のホイールでは乏しかった高速域での伸びも手に入る。実を言うと、これでフェニックスの印象が一気によくなった。バイク全体の剛性感が向上し、バランスもよくなり、軽快感も高まる。岩のような重厚感が隠し持つ欠点を、しなやかなG3スポーキングが穴埋めしてくれるのだ。
通常、インプレッション記事の試乗や撮影においては、フレームと同じ代理店のホイール(リドレー×FFWDなど)や、同じグループ(トレック×ボントレガーなど)のホイールを組み合わせる。業界暗黙のルールである。しかし読者のみなさんにはそんなことは全く関係ないので、あえて言っておこうと思う。フレームとホイールの価格バランスは大きく崩れてしまうが、フェニックス×ボーラ、お勧めである。
文句なしの秀作
限られたコストの中で、しなりや味や世界観など難しいことは考えず、軽量化もさほど重視せず、しっかりとした剛性を確保することをなによりも優先する。走りは、手持ちのリソース(ダモクレスやエクスカリバーなどで優位性が証明されている形状設計)を使って、無難に、しかしリドレーらしくまとめる。結果、どこもかしこもどっしり安定し、どんな踏み方をしてもがっしり受け止める剛性感を持つというフレームが、16万円台で出来上がる。エッジチュービング採用によって、ルックスもリドレーらしく魅力的なものになる。これが、フェニックスと共に過ごした一ヶ月間の結論だ。
「どう考えてもアルミを買ったほうがいい」という出来のものが多かった従来の低価格帯カーボンフレームのなかにあって、フェニックスは中~高価格帯と真面目に比較してもいいという気にさせる実力を持っている。もちろん提灯記事のように「トップモデルと変わらぬ性能」とまでは言えないにしても、この走りとこの存在感でこの価格は間違いなく安い。低価格帯カーボンロードフレームの秀作である。
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