安井行生のロードバイク徹底評論 第2回 GURU Photon SL vol.7

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安井フォトンSL7

670gの超軽量フレームを作る技術を持ちながら、フルオーダーが基本という姿勢を貫くカナディアンブランド、グル。いかにも北米らしいスッキリとした雰囲気をまとうこのブランドは、何を考え、どこを目指して自転車を作るのか。カナダ自社工場の製造工程とフォトンSLのインプレッションを通じて、先鋭と人間臭さが複雑に混じりあうグルの製品哲学に迫る。全8回。

 

挙動は軽やかで走りに破綻はない

安井フォトンSL7

さて、試乗車が到着したら、いつものように容赦なくバラしていく。ハンドル、ステム、サドル、ホイール、場合によってはクランクを外し、各パーツを自分のものに付け替えてポジションを完璧に合わせ、ついでにブレーキを右リアに組み替える。試乗車をバラバラにしても怒らない代理店の皆さんにはいつも感謝している。そうして試乗車を一時的に「自分の愛車」状態にして、いつものコースに連れ出し、いつもの場所にバイクを立て掛け、少し離れて眺めてみる。形状にもグラフィックにも飾り気は一切ないが、直線基調のフレームがミリタリー調のエグザリットリムをビシッと履きこなしている様子はサマになっている。
 
走り出してすぐに感じられるのは、クセのなさ。刺々しさや軽薄な硬さやオーバーな動きを見せることなく、ライダーをスルスルと運んでくれるタイプの素直な走りだ。加速は淀みなく、挙動は基本的に軽やかで、走りに破綻はない。典型的な軽量チューブtoチューブカーボンフレームの走りだ。あくまで古典的な設計・製法をベースに敷いているが、それを「現代の技術」と「丁寧な作り方」で磨き上げたフレームだという感じがする。
 

どんなホイールも受け入れる

振動はしっかりと伝えてくるが、減衰が速く衝撃の角を丸めてくれるという上質なカーボンフレームの乗り心地。高い安心感の一端を担っているのがこの振動感で、路面の状況がきっちりと伝わってくる。今回も様々なホイールで試乗を行なったが、ホイールの好き嫌いをうるさく主張するフレームではない。どんなホイールを履かせても、ホイールの性能差をそのまま素直に現出させる。自然なハンドリングも長所だろう。タイトターンから高負荷コーナリングまで自然な操縦性で扱いやすい。既製フォークだが、フレームとのマッチングは良好だ。
 
代理店担当者の私物であるフォトンR(剛性重視タイプ)にもチョイ乗りさせてもらったが、こちらは分かりやすくカチカチで、目の覚めるような加速が楽しめるバイクだった。タメやしなりはほとんどなく、踏んだ瞬間にカキンと反応する。剛性重視のレーシングフレームとして完成度が高い。これがフレーム800gとはなかなか凄い。最軽量のフォトンHLは、おそらく超軽量チューブtoチューブらしいしなやかさによって、ボッテキア・エメ695のように登坂で素晴らしい一体感を味わわせてくれるのだろう。フォトンシリーズ、バランスのいいラインナップである。
 
 
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