新連載! 安井行生のロードバイク徹底評論 第1回 Cannondale SYNAPSE HI-MOD2 vol.8

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安井シナプスハイモッド2-8
  • text 安井行生
  • photo 我妻英次郎/キャノンデール・ジャパン

2012年、名車スーパーシックスエボを完成させて、レーシングバイクカテゴリでライバルを置き去りにしたキャノンデールが、エンデュランスロードにも本気になった。イタリアで100km、日本で300kmを走り込んだ安井が、シナプスの本質とエンデュランスロードのあり方に迫る。技術者インタビューを交えた全10回、1万文字超の最新ロードバイク論。vol.8。

 

振動の大小がもたらす乗車感の差

安井シナプスハイモッド2-8

瑕疵が全くないとは言えない。アスファルトの細かい凹凸のような高周波振動はカーボンの積層の工夫で吸収し、大きなギャップを越えたときの大入力にはフレーム形状の工夫で対応するという作りになっている新型シナプス(この事実はエンジニアに確認済み)。ただ、「細かい凹凸」と「大きなギャップ」の中間に、若干ではあるが振動吸収が苦手になるゾーンがあるように思う。
 
低速域では入力が大きくなることもなく、カーボンの素材特性で快適性は担保される。高速域になって入力が速く大きくなってくると、フレーム形状の工夫が効いて大入力を飲み込むようになる。そのちょうど中間、フレームが積極的に動くようになる直前に、振動吸収性がわずかに低下するゾーンがあるように感じられるのだ。ただ、これは体重や常用速度域で印象が大きく変わってくる部分。それに、欧米人の平均的な体重を基に開発しているであろう製品に対して文句を言うべきところではないのかもしれない。


対スーパーシックスエボ、対ルーベ&ドマーネ

肝心なスーパーシックスエボとの違いだが、インプレ後に代理店担当者私物のエボを借りて乗ってみたものの、同条件では比べられていないため、正確な性能比較は叶わなかった。ただ、感覚としては、やはり切れ味はエボの方が一枚上手。性格はやや異なるが、絶対的な初期加速はほぼ互角で、両車の性格は近い。どちらもしなりを上手く活かすタイプで方向性が似ているのである。少なくとも、スペシャライズドのように正反対の乗り物(キンキンのターマック、ソフトでしなやかなルーベ)にはなっていない。
 
そのルーベやドマーネとの比較だが、新型シナプスとS-ワークスルーベSL4は性能的にかなり近い。シナプスより1年前にデビューしたルーベだが、先日2度目の試乗をして、あまりのよさにびっくりし直したばかりだ(ディスク仕様は剛性バランスがイマイチだったが)。両車とも、振動吸収性は非常に高いが快適性一辺倒ではなくバランス型。しなやかさを生かしてヒュンヒュンと進むタイプのフレームだ。ドマーネは、もっとどっしりとしていて安定感が高く、大トルクにも対応する。いかにもカンチェッラーラが好みそうな剛性感である。
 
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