新連載! 安井行生のロードバイク徹底評論 第1回 Cannondale SYNAPSE HI-MOD2 vol.3

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安井シナプスハイモッド2-3
  • text 安井行生
  • photo 我妻英次郎/安井行生/キャノンデール・ジャパン

2012年、名車スーパーシックスエボを完成させて、レーシングバイクカテゴリでライバルを置き去りにしたキャノンデールが、エンデュランスロードにも本気になった。イタリアで100km、日本で300kmを走り込んだ安井が、シナプスの本質とエンデュランスロードのあり方に迫る。技術者インタビューを交えた全10回、1万文字超の最新ロードバイク論。vol.3。

 

形は奇抜だが、意図はオーソドックス

安井シナプスハイモッド2-3

“ペダル入力に対して硬く”- それを実現するために、キャノンデールはシートチューブの根本を二股に分け、ペダル入力に対してハンガー部が構造的にねじれにくい作りとした。そのシートチューブは横から見るとかなり薄い。サドルに荷重したときにシートチューブ全体をしならせることで、振動吸収性を向上させているのだ。
 
勘違いしたまま書かれている文章も多いが、シートチューブの二股部分によって快適性を上げているわけではない。快適性を上げるためにシートチューブを前後に薄くしたため、根本を二股にして横剛性を確保したのである。人間が足を開いて立つと安定するのと同じ原理だ。一見奇抜なアイディアに思える二股シートチューブも、その意図は極々オーソドックスなのである。
 
“路面から衝撃を受けたときにはホイールが上下左右に動くように”- これには、チェーンステー、シートステー、フォークに設けられたセーブプラス・マイクロサスペンション(横方向に偏平された衝撃吸収ゾーン)が効いている。螺旋状にねじれたフォーク、チェーンステーの形状と、カーボン繊維の積層の工夫によって、三次元の複雑な動きを作りだしているのだろう。軽さを重視したフレームではないため、フレーム重量は950gと重くも軽くもない。

 

フレームの設計は料理のようなもの

安井シナプスハイモッド2-3

Q:フレームの剛性はどうやって煮詰めているんですか?具体的に設計プロセスを教えてください。
A:様々な方向からフレームの剛性を計測しながら設計を行なっています。どこにどれだけの剛性が必要かを判断し、カーボンの積層を決め、剛性値を計測し、剛性をチューニングしていきます。
 
Q:では、剛性のチューニングにおいて、フレームの形状とカーボンの積層はどちらが大きく性能に影響するんでしょう?
A:どちらとは言えませんね。その二つの要素のバランスです。これも料理のようなものなんです。ソースの味付けを変えれば肉の味付けも変わる。肉の味付けを変えればソースの味付けも変わります。螺旋状になっているシートステーは、カーボン繊維をパイプの実長より長く使うことで振動をより効率よく吸収させるというものですが、これは形状と積層の両方で工夫を行った好例です。
 
Q:フレームサイズごとに剛性を最適化しているとのことですが、それはどうやって決めているんでしょうか?剛性を測っているのか、テストライダーが乗って決めているのか。
A:サイズごとにチューブ形状とカーボンの積層を変えているんですが、全てのサイズの剛性値を計測し、どのフレームサイズでも最適な剛性感になるように設計しています。
 
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