安井×ナカジが熱く語る! 9000系デュラエース対談 Part3
目次
本誌(2012年11月号)の9000系デュラエース特集で行ったライター安井と編集長ナカジの対談(というかほとんど自転車バカ同士の雑談)は、実は一時間以上にも及ぶものだった。最終回のパート3ではホイールや7900系Di2との比較に話はおよぶ。 2人のデュラエース愛用者が贈る、愛の9000系評論。
スプロケットは11スピード化へ
中島:スプロケが11枚になったことについてはどうでしょう?
安井:個人的には「あっても困らない」という程度。11sカンパで組んだバイクから10sシマノのバイクに乗り換えても「あーあ、今日は10速かぁ……」とガッカリすることはないでしょう。でもあったら間違いなく使うし、いつの間にか恩恵は受けているんだろうけど。そのぶん変速調整はシビアになったかも。
中島:巡航してるときに「この間のギアが欲しい」と思うことはよくあるので、多段化には賛成ですけどね。
安井:まぁ……脚のパワーバンドの狭い広いもあるからね。
中島:僕超狭いっす。
安井:ロー側にエマージェンシーギアを入れる人にもいい。10sの12-25に、27Tが加わったと考えれば。まぁ、シマノが11s化一番乗りじゃないからね。カンパが11sになったときに、シマノvsカンパで延々とされてきた議論だから。
中島:エンドは広がりませんでしたね。
安井:発表当初は「ホイールの剛性バランスを犠牲にするくらいならエンド広げちまえよ」と思ったけど、ホイールの出来がかなりいいから結果オーライ。135mmにしたらしたで、ユーザーとフレームメーカーから総スカン喰らってただろうしね。あ、フレームメーカーは売れるようになるから嬉しいのか。
ホイール(C50-TU&C24-CL)編
中島:11s化に伴ってホイールも変わってきましたが、どうでした?
安井:おちょこ量が増えて、ホイールの剛性バランスが難しくなって、みんなに「じゃあエンド広げれば?」って言われてきたけど、ホイールがここまでいいんだったらこれでOK!って納得してしまった。
中島:今回借りたのはC24クリンチャーとC50チューブラーですが、どっちのホイールもよかったですねぇ。
安井:79世代のC24とC50より明らかにいい。高速伸びるし、嫌な硬さもないし。
中島:C50はバカみたいに伸びていきますね。「俺速くなった!」と思いました(笑)
安井:10速と互換性なくしたことで叩かれることは、シマノは十分に予測していたと思う。ジャーナリストからは「エンド広げないなんて意気地なし!」と言われ、ユーザーからは「また互換性ないのか!」と言われ。これでホイールの走りがダメになってたら、さらにボコボコにされてましたよ、たぶん。だからホイール開発部隊の人たちは死ぬ気で頑張ったんだと思う。「9000系を完成させるのは俺たちだ」って。結果、胸を張って「さぁどうだ、これで文句あるか?」と言える出来になっている。個人的にはC24の完璧すぎる万能性にクラッときてる。欲しい。
中島:新しいグラフィックはどうですか。
安井:その「欲しい!」にブレーキかけるのが見た目だよね……これは主観だから、僕等がどうこう言えることじゃないんだけど。ステッカーじゃないからはがせないし。でも性能は文句なしにいいです。
中島:フォローしましたね。
対Di2編
安井:フロントもDi2の方が速いかな。機械式の感覚で「クランク位置がこのくらいのときにシフト操作すれば、踏み込むタイミングまでに変速が完了するだろうな」ってところで変速ボタンを押すと、予想していたより早いタイミングで変速が完了してしまう。それでDi2の凄さをいつも実感する。
中島:ブラケットはDi2より太めですよね。
安井:9000系のほうが5mmほど太い。
中島:僕はDi2の細身ブラケットが好きで買ったんですよ。
安井:でも9000系も慣れるといいよ。ブラケットにネガはそれほど感じないかな。Di2から乗り換えるとシフトストロークの大きさは意識させられるけど。
中島:下ハンを持った状態でのシフトのしやすさは勝負にならないですね。Di2の圧勝。
安井:それはあるね。手が小っちゃいから余計に。ボタン押すだけのDi2に対して、機械式は手首をクッと返さないと変速できない。
中島:確実に負けているのは下ハン握ったときの操作ですかね。機械式の方がミスタッチは少ないですが。
安井:ときどきあるもんね、Di2のミスシフト。スイッチの位置が近くて段差も少ないから。
中島:そこはDi2唯一の欠点ですかね。
中島:9000系の試乗会では操作感がスカスカして安っぽいと思ったんですが、変わりましたね。
安井:僕も最初はそう思った。でも自分のバイクに組み込むと安っぽさは微塵もなくて、デュラエースらしい精密機械感があった。「明確なクリック感」と「操作する快感」が欲しい人は機械式。
中島:下ハンをよく握る人ならDi2ですか。
安井:電動が出てきたことで、機械式は「ただただ軽く」じゃなくて官能性能も煮詰めてきたのかも……なんて考えたくなる。
中島:カンパのEPSはそこらへん考えてるっぽいですよね。ただのスイッチでいいはずなのに、あえてストロークを確保して深く押させるようにしている。
安井:操作感をわざと機械寄りにしているよね。電動と機械式は、操作感・フィーリングの違いで選んでもいいんじゃないかという気はする。「操作する快感」が欲しい人は機械式。
中島:そういう意味では、「機械動作を極めしコンポ」って感じがしますね。9000系は。
総括
安井:79はライダーとの親和性に欠けていて、個人的にはネガばかりが目立つコンポだった。9000系は、78のときにあった「シマノ機械式の最高峰」感が戻ってきた感じがして嬉しい。
中島:9000系って誰が触っても絶対によくなったってわかると思うんですよ。変速にしてもブレーキにしても。どんな人でも変化を感じることができる。そこまで進化させてきたのはすごいですね。
安井:STIの見た目とかリアディレーラーのワイヤーの向きとか、気になるところはあるけど、「デュラエースが帰ってきた!」と言いたくなる。買うだろうな、たぶん。
中島:ここまで進化すると、9000系のDi2がどうなってくるのか、興味がありますね。
安井:一気変速できるようになるだけだと、ちょっとガッカリしちゃうね。機械式9000系がここまでいいと。
安井行生 7700系時代からデュラエースを愛用しているライター。しかし7900系は気に入らず、今でも7800系を愛用中。7800系のSTIは10個以上買ったとか。変速操作感とブラケット形状を重視する。
編集長・ナカジ 7800系機械式、7900系Di2と乗り継いできた。都内でメッセンジャーの経験もあり。そのときの市街地での使用から、俺チャレのような超ロングライド、JCRCのレースまで幅広いシーンでデュラエースシリーズを使用してきた。
9000系デュラエース対談 Part1はこちら!、 Part2はこちら!