フジ・ルーベ1.5 軽量アルミフレームでキレのある走り アサノ試乗します!その26
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アメリカンブランド・フジのロングセラーとして15年も販売され続けている「ルーベ」シリーズ。アルミフレームという基本は変わらないが、時代のトレンドを反映させてきた。最新のエントリーグレード・ルーベ1.5は、クラスを越える圧倒的なポテンシャルを秘めていた——。
フレーム重量およそ1080g、ジオメトリーは軽量カーボンロードSLと同じ
フジで最古参のアルミフレームのピュアロードレーサーとして15年にわたって販売され続けている「ルーベ」シリーズ。開発コンセプトは時代のトレンドを反映させた形で変遷している。2017年のモデルチェンジで“究極のアルミロード”を目標に、プラットフォームを一新。プロチームへの機材供給から得たフィードバックを生かし、軽量化をさらに進めたことが最大のトピックだ。
フレームは、AL6061より30%剛性が高いAL6066-T6ベースのA6-SLを素材として使用。フラッグシップの軽量カーボンロードレーサー・SLシリーズと同じジオメトリーを採用し、BB規格もプレスフィット30に変更。チューブの形状や肉厚も見直し、ひとつのチューブでも場所によって扁平の加工の仕方を変える3Dチュービングフレームにより、高い振動吸収性と耐久性を両立しながら、単体重量約1080g(56サイズ、未塗装)を実現している。
これに組み合わされるフォークは、C10ハイモジュラスカーボンのフルカーボンフォーク。上下異径のテーパーコラムを採用し、高い制動力に加え、安定感と切れ味を兼ね備えたステアリング性能を獲得している。
ラインナップは、今回紹介するシマノ・ティアグラ仕様の完成車1.5(税別価格14万5000円)のほか、日本限定パッケージとしてシマノ・105仕様の完成車1.3(税別価格15万9000円)も用意される。また、カラーオーダー「FUJI REMIX」限定でフレーム単体での購入も可能(税別価格11万円〜)。サイズ展開は全5サイズで、多くのサイクリストをカバーする。
軽さを前面に押し出した走り。並のカーボンロードを食う実力
ロードバイクのフレーム素材は今やカーボンが中心になっている。カーボンフレームの持つ振動吸収性の高さは、アルミをはじめとする金属製フレームを圧倒しているし、走行性能に直結する重量の軽さやフレーム剛性を高い次元で両立するとなると、やはりカーボンという素材にしか到達できない領域があるのは否めないところだ。また、カーボンフレームの低価格化が進んでいることも、カーボンフレーム躍進の要因と言えるだろう。
しかし、アルミをメイン素材としたアルミ合金もフレーム素材として根強く残っている。安い価格で高性能なバイクを作るとなると、アルミという素材はやはり優秀で、近年はフレーム製造技術の向上もあって、カーボンフレームに性能面で肉薄するようなアルミフレームも増えている。
フジのルーベシリーズは、アルミフレームのレーシングロードとして15年という長いモデルライフを誇るロングセラーだ。2017年モデルでプラットフォームを一新して軽量化を進め、フレーム重量約1080gというアルミフレームではかなりの軽量フレームに仕上がっているのが特徴だ。これは、軽量アルミフレームのレーシングロードとして高い人気を誇るこのモデルの最大のライバル“カーボンキラー”ことキャノンデールCAAD12シリーズとほぼ同じだ。
フレームの素性の良さは、サドルにまたがって数十m進んだだけで分かるほどだった。今回の試乗車は、シマノのエントリーグレードの10スピードコンポーネント・ティアグラを搭載したルーベ1.5で、カタログスペックによると完成車重量は8.5kgとある。停止時に手で持ち上げてみるとそれなりの重みはあるのだが、不思議なことにひとたび走り出すとその重量をあまり感じさせないのだ。
加速の乗りも軽快、上りでも重さで後ろに引きずられるような感覚もない。正直に申し上げると、期待値を大幅に超える完成度の高さで、久しぶりにエントリーモデルにチョイ乗りしただけで感動させられた。
下りやコーナーでの走りも特筆モノだ。軽快さはあるのだが、挙動が素直で狙ったラインを思ったように攻められる安心感がある。制動時のフィーリングも不安を感じさせる要素がない。これはフレームのヘッドまわりとフロントフォークが剛性に優れ、両者の調和が取れていることに由来すると思われる。
フロントフォークはハイモジュラスカーボンを使ったフルカーボンフォークで、上1-1/8インチ、下1-1/2インチの上下異径のテーパードコラムとなっており、タイトコーナーが連続するようなコースで重心を左右に激しく移動してもバイクの挙動にずれが生じることはなく、リズムよくシュパッと曲がれる。
フレームジオメトリーは、同社のハイエンドで軽量レーシングロードのSLシリーズと同じといい、ハンドルを下げたアグレッシブでレーシーなポジションも取れる。乗り味も含め、軽量さを前面に押し出したレーシングバイクなので、路面からの突き上げもそれなりに感じられるため、快適性という観点からはカーボンフレームと比べてやや劣る感じは否めない。それでもレーシングバイクとしては及第点を与えられるレベルだ。
BBまわりはプレスフィット30で横剛性はそれなりにあるが、ガチガチに固い感じではなく、それなりにウイップもする。大きなトルクをかけるようなペダリングでも高回転型のペダリングでも、どちらも許容する懐の深さを感じた。
一通り試乗を終え、改めてこのバイクを見る。本当にこのバイクはティアグラ仕様で完成車重量が8kg台半ばなのか——と驚かされる。しかも価格は完成車で14万円台。まさにバーゲンプライスであり、価格破壊という表現がこれほどに合うバイクはない。
これだけの性能のバイクがこの価格で手に入るのだから、学生レーサーはこのバイクを選んでホイールに予算をつぎ込めば、長いヒルクライムでもない限り申し分のないバイクができ上がるのではないか。だから、学生レーサーには間違いなく最適なバイクだし、使えるお金に制約がある所帯持ちのサラリーマンライダーや、日々の練習に加えてインドアトレーニングや輪行とラフに使えるセカンドバイクを探している人にもおすすめできる。
さらに想像を膨らませる。このバイクにデュラエースとかアルテグラを載せて、軽いホイールを履かせ、コックピットまわりやシートまわりのパーツやセッティングを煮詰めたら、かなり予算を抑えつつシリアスレーサーも納得のいく戦闘力の強いバイクができるだろう。さらに4種類のパターンとさまざまな色の組み合わせから、86万通り以上のデザインが考えられるフジ・リミックスでカスタムフレームを作ったとしたら……。想像するだけでも楽しいが、それをわれわれ庶民でも手が届きそうな現実的な価格で実現できそうなところにも心をくすぐられるではないか。
spec.
「フジ・ルーベ1.5」
シマノ・ティアグラ完成車価格/14万5000円(税抜)
フレーム/A6-SLカスタムバテッドアロイ
フォーク/カーボン
コンポーネント/シマノ・ティアグラ
ホイール/オーヴァル・コンセプト327
タイヤ/ヴィットリア・ザフィーロプロ 700×25C
ハンドル/オーヴァル・コンセプト310エルゴ
シートポスト/オーヴァル・コンセプト300
サドル/オーヴァル・コンセプト238
カラー/ストームシルバー
サイズ/446、49、52、54、56
重量/8.5kg
■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、最近はTTに精力的に取り組んでいる。海外のグランフォンドにも参加経験がある。ロード系の愛車は、キャノンデール・スーパーシックスエボとキャード10、スコット・アディクトの3台。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。