猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第36回
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雄大さにテンションが上がる筆者。
ある日、“ソラチグルメフォンド”のゲストライダーの話が舞い込んできた。
聞くとチャリダーご意見番の竹谷賢二氏が佐渡トライアスロンと重なってしまったので、代わりにゲストとして来てくれないかとの事だった。
グルメフォンド……今年ブルベに邁進してアスリート粉飴とカロリーメイトばかり食べてきた私にとって、それはあまりにも魅力的な言葉だった。
お受けさせていただくと返事をした。
○走に注意!?
後日、竹谷さんから「試走に気を付けてください」という言葉をいただいた。
コースの試走ですか?と聞くと「いえ、コースでの死走です…」と返ってきた。
よく意味が分からなかったが、とにかく北の大地・北海道へと向かった。
新千歳空港には主催者の1人、村田氏が迎えに来てくれた。
村田氏「今日は雨ですからねぇ〜コースの試走はどうしましょうか?」
私は恐る恐る「死走の事ですか?」と聞くと。
「あれは竹谷さん限定ですよ!」と返ってきた。
聞くと、竹谷さんに挑むべく北海道の猛者達が試走に集まり、結果として死走になるという恐ろしい現象が起こるらしい。
私はホッとして村田氏と試走へと向かった。
スタート&ゴール地点の岩見沢市を出発すると、いきなり北海道の雄大な景色が広がる。
北海道と沖縄の景色は唯一無二だと改めて感動する。
長沼を経由し、メロンで有名な夕張へと続く。
夕張は日本で初めて自治体が財政破綻した街だ。
廃線になった線路の跡や閉館した映画館の数々、そして炭鉱。
人々の繁栄と衰退を感じながら走っていると、今回のコースの難所、卍(万字)峠が現れる。
すると村田氏が突然「猪野さん、本気で行きましょう!」と踏み出した。
咄嗟の事に私は意味が分からなかったが、取りあえず踏む。
村田氏…速い。
私は1週間前に乗鞍でのヒルクライムを終えたばかりで、休戦体勢だ。
しかし何だか悔しいので踏む。
竹谷さんとレベルは違えど、赤い水玉と黒縁メガネも何かと挑まれる傾向にある。
これも坂バカ俳優の運命…心拍数は最大へと導かれ、千切れつつも何とかゴールした。
やはり死走ではないか…
エイドの食事も、坂もおいしくおかわり
一夜明け、イベント当日は台風一過で晴天となった。
まず驚いたのは運営スタッフの数の多さだ。
聞くと9つの自治体で開催しているらしい。
規模の大きさが伺える。
ステージではゲストライダーが紹介される。
すると今年、見事に日本縦断を果たされた篠さんが居られたので、超ロングライドの秘訣を聞くと「心拍数を上げない事ですね!」と返ってきた。
心拍数を上げずに日本を縦断してしまうのだから凄いものだ、と関心していたらスタートへと呼ばれる。
今日はブルベではない、心拍数は自由だと……
なぜか集団の先頭でスタートした。
先頭を牽くサポートライダーの方はレース経験者らしくペースが速い。
これではブルベと同じなので後方に下り参加者と触れ合う。
すると早速第一エイドが現れる。1発目からメロンのお出迎えだ。
ソラチグルメフォンドはお世辞抜きに全てのグルメが旨い!
お菓子は家に持って帰って、美味しい珈琲と食べると2度楽しめる。
数々のエイドでプリンやソーセージなどを楽しみながら進むと、坂が現れる。
私にとってのグルメはやはり坂だ。
坂が近づくと、なぜか私の後方に人だかりができる。
坂で私を召しとろうと企む侍達だ。またもや坂バカ俳優の運命だ。望む所だと一気にと踏む!
坂バカ祭りのスタートだ!
みんなで一気に心拍数を上げてフルもがき!
やはり坂はバカバカしく楽しい。坂バカは全国……いや世界共通だ。
北海道の坂は短いので祭りは5分ほどで解散した。
真の坂バカさ
イベントも半分の70kmを過ぎた。
すると一緒に走っているサポートライダーの方の無線から様々なトラブルが聞こえてくる。
落車……メカトラ…靴の履き間違え。
これらの全てに迅速に対応する運営の方々のチームワークは本当に素晴らしかった。
このイベントを愛しているから成せる技だろう。
私もイベントのために何かできないか?と考える。
すると難所の卍峠が現れる。私にできる事といえば坂を上る事ぐらいだ,
全力で卍アタックだ!今日は昨日の死走よりかかる!久々に心地よいヒルクライムだ。
頂上に着くと早速、折り返す!おかわり卍だ!
下りながら参加者を鼓舞すると皆んな口々に
「おかわり?」「坂バカだ!」「ホントにバカなんだ!」とみんな笑顔だ。
2本目も坂バカ魂全快で盛り上げゲストライダーとしての役目を終えた。
やっぱり愛は地球を救う
ゴールした後もイベントは続く。
ステージはトークショーや豪華景品が当たる抽選会で大いに盛り上がった。
イベントの締めくくりの挨拶で新井舞良氏が、
「とても愛に溢れるイベントでした!愛は最大のパワーです。私は愛で地球を救います」
と壮大に締めくくった。
イベントの締めとしてはいささか壮大過ぎるが、会場から暖かい拍手が沸き起こりイベントは終了した。
確かに「愛」や「好き」という力は強く、それは物事を具現化する力を持っていると思う…
今回のイベントも運営スタッフの方々や参加者の「愛」や「好き」という力が、心地よい時間と空間を作り出したのだろう。
ソラチグルメフォンドを通して、そんな事を実感した2024年の夏の終わりであった。