JBCF E1カテゴリーを走る実業団チーム MiNERVA-asahiってどんなチーム?

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ミネルヴァあさひ

9月末に行われた南魚沼クリテリウムと南魚沼ロードレース。タイプが違うにも関わらずE1カテゴリーの両レースで優勝を飾ったのは中島渉(MiNERVA-asahi)だった。MiNERVA-asahiは、選手・スタッフ全員が「サイクルベースあさひ」の従業員だという。そんなチーム員の話を聞いた。

 

チームの若手が2連勝

9月22日~23日の日程で新潟県南魚沼市にて行われたJBCFの南魚沼クリテリウムと南魚沼ロードレース。

南魚沼クリテリウムのE1カテゴリーは1周1.24㎞を30周、37.2㎞で争われた。終盤に5人の逃げが先行し、MiNERVA-asahiはその中に2人を送り込んだ。リーダージャージを着る武井裕(TRYCLE.ing)やグランフォンド世界選手権でアルカンシェルを獲得したばかりの高岡亮寛(Roppongi Express)らを残した集団は先頭5人との差を詰めきれず、そのまま先頭グループはスプリント勝負へ。先頭グループにいた中島渉(MiNERVA-asahi)が勝利を飾った。

ミネルヴァあさひ

南魚沼ロードレースを逃げグループで走る中島

 

翌日の1周12㎞を8周する96㎞の南魚沼ロードレースでは、2周目に大きい逃げグループができた。前日の勝者である中島は、そこに一人でジャンプし、合流した。

「今日は正直、集団待機で後半に仕掛けていこうかなと思ったんですけど、前半に結構大きめの逃げができちゃったので、そこで1人でジャンプして。様子を見ながら行ったんですが意外とペースも良かったので、高岡さんたちもいなかったし、このままいけたらいいなというところでしっかり気合入れていきました」と中島は振り返る。

集団がペースを上げるも追いつかないまま最終周回、上り区間で中島がペースを上げると先頭は6人に絞られた。最後はその中でスプリント勝負に。フィニッシュラインが見えるストレートで一人完全に抜け出した中島が一番最初にフィニッシュラインを切った。

中島は、前週に群馬サイクルスポーツセンターで行われたインカレでもスプリントで2位という結果だった。

「先週のインカレで悔しい2位だったので、そこから調子を落とさず、このまま南魚沼にこられた感じですね」と話す。

ミネルヴァあさひ

中島が一番でフィニッシュラインを切り、ガッツポーズを見せる

 

中島は、2年前にはJプロツアーカテゴリーを走る弱虫ペダルサイクリングチームに所属していた選手でもあった。そんな彼がMiNERVA-asahiに移籍し、エリートカテゴリーを走るのにはこんな訳があった。

「もともと大学4年間で自転車競技を終える予定でした。そこで就職活動とかもあるので、自転車競技を本格的にというよりかは学連のレースをメインで活動させていただきながら、あさひさんにお世話になって、ちょくちょくエリートツアーに参加という感じで走らせていただいてる状態です。

就職活動でどうしても乗れない時期が多くなってしまうところで、やっぱり弱虫ペダルだと海外でのプロを目指してる選手がメインなので、そういうところの選手と比べるとやっぱり練習量も下がっちゃいますし、そういうとこでチームの士気を下げるのも良くないと思ったので、辞めさせていただいたんです」

現在はアルバイトとしてサイクルベースあさひで働いており、大学卒業までお世話になる予定だと話した。

チーム戦というイメージがどちらかといえば強いJプロツアーカテゴリーに対して、エリートカテゴリーだと個人の強さが際立ったり、集団として逃げを追いづらかったりと個人戦のイメージが強い面もあるように思える。違いについて聞くと中島はこう答えた。

「チームの全員がしっかり強いので、E1でありながらしっかりチームとして動けているところもありますし、その中でもE1レベルだと自分の脚を使って走れるので、すごく辛いですけど楽しいレースだなと思います」

 

自転車競技を続けたい人の受け皿として

ミネルヴァあさひ

南魚沼のレースに参加したMiNERVA-asahiのメンバー

 

一方で、サイクルベースあさひの社員として働きながら、同じE1レースに参戦しており、現在Jエリートツアーランキングで3位につける布田(ふだ)直也は、競技を本格的に始めたのは入社してからだという。

「入社して2~3年目ぐらいからチームが発足して、そのときから入って、今5年目くらいですね」

もともとは1980年代、あさひがプロショップを運営していた頃に「ミネルヴァ」というレーシングチームが設立された。その後、活動を一時休止することとなり、2020年、スタッフ有志が集まり「MiNERVA-asahi」というチームとして再結成した。

チームとして走るのは、このJBCFのエリートカテゴリーのレースがメイン。E1~E3、マスターズ、フェミニン、ユース、それぞれが該当するカテゴリーのレースに参加している形だ。選手はもちろんのこと、メカニックや広報まで全てあさひの従業員でレースに参戦しているという。しかも、店舗の地域は人それぞれ異なる。

トレーニングを普段一緒に行わずとも、レース本番でチーム戦を行なっていくことは可能なのかを聞くと布田はこう答える。

「一応、週に1回オンラインでミーティングをして、そこである程度練習の内容とか、次のレースに向けての打ち合わせみたいなのをするんですけど、確かに実際にみんなで一緒に走るっていうのはレースのときしかないので、そこは前日の試走で一緒に走ったりとか、レース前のアップでコミュニケーション取ったりみたいな感じでやっています」

さらに、それらのレース活動をすることで、仕事にも活かせることがあるという。

「みんな同じ従業員なので、レース以外の仕事のこととかでもいろいろ共通点は多いですし、レースで集まって、コミュニケーションをとって、逆にそれを仕事とか会社の方にフィードバックできたりもするので、それはお互いにいい方向にはいっているのかなと思います」

実業団チームとしてレースに向けてコミュニケーションが図られ、社内の潤滑化にも役立っているようだ。

個々が別の会社に属していたり、ショップ関係の集まりであったり、実業団チームの形はそれぞれだ。Jプロツアーカテゴリーを走るチームサイクラーズスネルなど、一部選手が社員として働きつつレース活動を行なっているチームもある。

MiNERVA-asahiもまた、基本はフルタイムで(あるいはアルバイトとして)働きながらトレーニングを行いつつ、レースに向かっている。

そういった形態のチームがあるということは、特に、自転車競技をやりたいけれど、続ける手段が見つからないから辞めるという選手たちにとって一つの受け皿としての選択肢になり得るかもしれない。

強さの面でも頭角を表すMiNERVA-asahiの今後の活動に注目したい。

 

あさひ公式レーシングチーム「MiNERVA-asahi(ミネルヴァあさひ)」