レーシングモデルからコンフォート系へ華麗なる転身 スコット・CR1 20「アサノ試乗します!」その14
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かつて市販最軽量クラスのレーシングロードとして一世を風靡したスコットのCR1シリーズ。アディクトにその座を譲ってからはコンフォート系のモデルとして華麗なる転身を遂げた。今回は同シリーズの中でセカンドグレードにあたるCR1 20のインプレッションを行う。
SDS(ショック・ダンピング・システム)を採用し快適性を向上
スコットのCR1シリーズは、軽量カーボンバイクの火付け役となった初代モデルと比べ、快適性を向上させることで、ロングライド向けのコンフォート性能を高めたモデル。軽量レーシングバイクの座はアディクトシリーズに明け渡し、CR1は快適性を加味しつつ、手の届きやすい価格を実現することで、スコットのカーボンロードの入門機種という位置づけになった。
フレーム素材は先代モデル同様カーボンで、IMPという独自の製法を採用し、従来の製法よりヘッドチューブの接合部の素材を11%削減し、フレームを美しく見せるためだけの仕上げカーボンを配することで軽さを実現している。
また、SDS(ショック・ダンピング・システム)を採用して硬さと軽さ、快適性を高い次元で融合させているのも特徴。横方向には硬く、垂直方向に柔軟性を持たせることで、加速やスプリント時の掛かりの良さと、路面からの衝撃や振動をいなす快適な乗り心地の両立を目指している。
今回紹介するCR1 20は、同シリーズのセカンドグレード。メインコンポーネントにシマノ105、シンクロス製のアルミ製ステムやアルミ製ハンドル、サドル、ホイールを搭載。価格は22万9000円(税抜)でカラーは1色のみ。上位モデルのCR1 10との違いは、フレームカラーや搭載されるコンポーネントやホイールの違いのみで、フレームそのものは同一だ。
「カーボンエキスパートのスコット」を身近にする立役者
スコットはカーボンフレームの歴史を語る上で欠かせないブランドだ。超軽量カーボンロードのアディクト、さらに遡ると初代CR1など、歴史に残る名車を生み出してきたカーボンエキスパートだ。
中でも2004年にデビューした初代CR1のインパクトは大きかった。今でこそフレーム重量1000gを切るようなバイクは珍しくはないが、1000g台前半でも軽量フレームといわれた当時、フレーム重量880gというカタログスペックは圧倒的だった。世界最高峰のレースでも勝利を挙げるなど、超軽量カーボンレーシングバイクの先駆けと言える名車だった。
今回紹介するCR1は2代目にあたり、初代とは異なる快適性の強いロングライド志向のバイクとなっている。軽量レーシングカーボンフレームというポジションはアディクトに明け渡し、快適性を増すことで違う立ち位置を目指したと言えるが、同じようなポジションには後に紹介するソレイスというシリーズもある。両者の違いにも注目しながら、インプレしていこう。
CR1のソレイスとの最大の違いは、フレーム設計にある。ソレイスはシートステイやトップチューブを縦方向に薄くして衝撃を吸収させつつ、BBまわりはシートチューブやダウンチューブをBBシェル幅いっぱいまで拡幅して剛性を高めるなど、最新のロードバイクのトレンドを満載している。一方、CR1はBB規格こそBB86だが、ダウンチューブやシートチューブはBBシェルより幅が狭いオーソドックスな形状となっていて、シートステーも特別細いわけではない。よく言えばトラディショナル、悪く言えば一世代前のフレームである。
しかしながら、CR1に乗ってみると、快適性がかなり高いと感じられる。特に路面からの突き上げが非常にマイルドで、路面の細かい振動を拾ってもすぐに収束して手や身体に伝わるびびり感が少ないのが印象的だ。試乗車はアルミ製のハンドルバーを使っていたにもかかわらず、である。これはおそらくフレームの剛性と快適性、軽さを最適化するSDSや、細身のブレードのベンドフォークによるところが大きいと思われる。
さらにBBまわりの硬さもほどよく、ペダリング時に適度なウイップ感を伴うので、脚にも優しい。かといってパワーをロスするほどではなく、必要十分な剛性は保たれている。レースのような攻めの走りも楽しめないわけではないが、真価が発揮されるのはロングライドやグランフォンドのような気持ちいいペースで高速巡航を楽しむようなシーンだろう。その意味では初代CR1とは別のマシンになっている。
CR1 20のメインコンポーネントはシマノ105、ハンドルバーやステム、シートポストなどはシンクロス製で統一され、グラフィックもフレームに合わせられている。価格もソレイスの同グレードより抑えられており、パッケージとしてのお値打ち感が高い。CR1シリーズは、スコットのロードバイクラインナップの中で、「カーボンエキスパートのスコット」を身近にしてくれる貴重なモデルといえる。
spec.
●フレーム/カーボン
●フォーク/カーボン
●コンポーネント/シマノ・105
●ホイール/リム:シンクロスレース22、ハブ:フォーミュラチーム
●タイヤ/コンチネンタル・ウルトラスポーツ 700×23c
●ハンドル/シンクロスRR2.0 エルゴノミック31.8
●ステム/シンクロスRR2.0
●サドル/シンクロスFL2.5
●サイズ/XXS,XS,S,M,L
試乗車重量/8.8kg(サイズS)
■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、海外のグランフォンドにも参加経験がある。愛車はスコット・アディクトとキャノンデール・キャード10。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。