「フューチャーショック」の真価に迫る スペシャライズド・ルーベ エキスパート「アサノ試乗します!」その12
目次
スペシャライズドのエンデュランスロード・ルーベが2017年モデルでフューチャーショックという革新的な機構を搭載してフルモデルチェンジを果たした。果たして旧モデルからどのように進化したのか? まずは上級グレードのエキスパートに試乗し、その乗り味を体感する。
上位モデルには独自の衝撃吸収機構・フューチャーショックを搭載
2004年に初代モデルがデビューを果たしたスペシャライズドのエンデュランスロード・ルーベシリーズ。その名の通り、パリ〜ルーベに象徴されるような石畳を走破するクラシックレースで勝利するために開発され、過去に5度のパリ〜ルーベ制覇を成し遂げている。
2017年モデルで投入された最新モデルは、上位モデルにヘッドユニット内にフューチャーショックというショートストロークのサスペンションを搭載しているのが最大の特徴。また、上部にエラストマーを配したコブルコブラーシートポストを搭載することで、フロント・リア両セクションの衝撃吸収性を高めている。その一方で、先代モデルではフロントフォークとシートステーに配されていたエラストマー・ゼルツは、フューチャーショック搭載モデルではなくなっている。
ルーベ最新モデルのコアテクノロジーであるフューチャーショックを搭載するのは、Sワークスルーベと、ルーベエキスパート、ルーベコンプ、ルーベエリートの4モデル。これより下のグレードのルーベSL4スポーツとルーベSL4は、旧モデル同様のゼルツを搭載する。ルーベエキスパートは、メインコンポーネントにアルテグラと油圧式ディスクブレーキを搭載した上級モデルだ。フレームカラーは1色のみ、価格は45万円だ。
従来のロードバイクの枠に収まらないスペシャルバイク
試乗前、新ルーベシリーズは迷走してしまったのではないかと思えて仕方なかった。フロントフォークには新開発のサスペンション・フューチャーショックを搭載して、かなりパヴェの走破性を意識しているというのに、フレームはどちらかというとターマックのようなレーシーで軽快なルックスになっていて、遠目に今までのルーベっぽさがなくなっているように思えたからだ。
結論から言えば、しっかりルーベシリーズらしい乗り味は保たれていたし、あらゆる路面をスムーズに走れ、それが速さにつながるというルーベの魅力にはさらに磨きがかかっているように感じられた。
荒れた路面をスムーズに快適に走れる最大のポイントは、やはりフューチャーショックだ。ヘッドパーツで固定されたステアリングコラム内にフューチャーショックのサスペンションカードリッジを搭載し、ステムとハンドルが最大20ミリストロークするという、新ルーベのキーとなるテクノロジーだ。
サスペンションは常にアクティブでいつでも動くのだが、MTBとは違ってストロークによってホイールがフレームに対して上下動することがないので、操縦感覚にそれほど影響はないが、しっかりショックは吸収するという印象を持った。
「いつでも動く」と言っても、フューチャーショックの作動には一定の法則があると感じた。ダッシュ時やスプリント時にダンシングをしても、ハンドルを強く手前に引くような動作に対してはほとんど作動しないが、ハンドルに加重するような動作に対してだけ反応する感じだ。ダンシング時にハンドル荷重が大きくなりすぎるとフューチャーショックが作動してしまうが、うまくペダルに体重を乗せるような走り方ができていればそれほど気にならない。
もうひとつ、衝撃吸収性を高めてくれる機構が、エラストマーが搭載されたコブルコブラーシートポストとそれを装着するシートチューブまわりの造形だ。シートクランプがシートチューブの上端より下の方に付いており、シートポストがしなりやすくなっている。さらにシートポストそのものにも高い振動吸収性があるので、路面からの突き上げがかなり緩和される。
そこにキビキビと小気味よい走りが同居するところがパリ〜ルーベで勝つために作られたルーベたるゆえんだ。ヘッドまわりはフューチャーショックのサスペンションカードリッジが搭載されることもあって上下とも1-3/8インチと太くなっており、剛性感が高く、ブレーキング時やコーナーリング時に安心感があった。さらにシートステーがトップチューブとの接合部より低い位置に付くことで、リア三角の剛性が高く、ペダリング時にしっかりと路面にトラクションがかかっているのが感じられる。
そんなルーベにも弱点はある。加速時や上りでの軽快さに欠けることだ。フューチャーショックのサスペンションカードリッジは200gほどあるし、ディスクブレーキ搭載によって確実にトータル重量は増えている。平坦や下りは安定志向のジオメトリーの恩恵もあって重厚感がプラスに働いているのを感じるが、ハイペースでガンガン上るようなバイクではない。そこはターマックシリーズとの棲み分けになるのだろう。
ルーベの強みは、あらゆる路面でスムーズに速く走れるという点にある。ターマックが地形を問わず速く走れるオールラウンダーなら、ルーベは路面状況に関わらず速くスムーズに走れるオールラウンダーだ。河川敷を走っていて突然未舗装路が現れたときにも躊躇なく入っていけるような頼もしさがあるし、タイヤを太めのものにしてグラベルに行ってみようと思わせてくれる。そういう意味では、新ルーベシリーズは、これまでのロードバイクの枠に収まらない、無限の可能性を秘めた新しくて特別なバイクとも言えるかもしれない。
spec.
シマノ・アルテグラ完成車価格/42万円(税抜)
●フレーム/カーボン
●フォーク/カーボン
●コンポーネント/シマノ・アルテグラ
●ホイール/DT R470 ディスクプロ
●タイヤ/スペシャライズド・ターボプロ 700×26C
●ハンドル/スペシャライズド・ホバーエキスパート
●ステム/スペシャライズド・プロSL
●サドル/スペシャライズド・フェノムエキスパートGT
●サイズ/49、52、54、56、58
●試乗車実測重量/9.4kg(サイズ54)