ヨネックスのロードバイクで買ったら一番幸せになれるモデルは?

目次

Presented by YONEX

カーボネックスが人気のヨネックスが、その軽快な走りを、僕たちホビーサイクリストに身近に届けてくれるロードバイク「グローエント」。今回はその走りを筧五郎さんと吉本司さんが、ホイールもアップデートしながら、多様なシチュエーションで乗り比べ。その走りは、機材にこだわりのある2人を唸らせる快感なペダリングフィールを備えていた。

 

動画で見たい人はこちら

 

ヨネックス・グローエントとは?

ヨネックス・グローエント(新色)

ヨネックス・グローエント(新色) ●シマノ105 Di2完成車価格/51万400円 ●カラー/パールホワイト(写真のカラー)、ダークガン ●サイズ/XXS(写真のサイズ)、XS、S、M

上記の新色は2024年8月に登場したばかりで、この完成車からハンドルバーに日本人の体格にフィットしやすいディズナの「ジェイフィット エバージョン2」が搭載されている

ヨネックス・グローエント(従来カラー)

ヨネックス・グローエント(従来カラー) ●シマノ105 Di2完成車価格/49万5000円 ●カラー/シルバー/グリーン(写真のカラー)、ネイビー/ゴールド ●サイズ/XXS、XS、S、M(写真のサイズ)

 

“山の神”と称される森本誠さん、東京五輪女子ロードレース代表の金子広美さんなど、トップクライマーの走りを支えてきたヨネックスを象徴するバイクの「カーボネックス」。その軽やかな走りは、多くのロードサイクリストから絶賛されてきた。そして、このキャラクターを生かしつつ、快適性を付加して2022年に登場したミドルクラスが「グローエント」だ。

「快適性を……」というワードを目にするとエンデュランスロード的な仕様を想像するが、グローエントはコンペティティブロードとエンデュランスロードの中間にあるような存在だ。

その証拠にカーボネックスとジオメトリーは同様で、フレームを構成するマイクロコアやゴムメタル、そしてO.P.Sという基幹技術もトレースされる。でありながらヨネックスの武器であるカーボンレイアップを駆使するなどして、より多くのロードサイクリストに適したフレーム剛性に調整。乗り心地の良さはもちろん、レーサーのようなテクニックや脚力がなくとも扱いやすい操作性や、ペダリングフィールが追求される。さらにタイヤクリアランスは32Cなので、太幅タイヤもしっかり収まる。

カーボネックスの美点である軽やかなペダリングフィールを抽出し、乗りやすさを融合させたグローエントは、レースだけを主とせず、オンロードの走りを楽しむロードサイクリストには最適な1台だ。シマノ・105 Di2のコンポを搭載した完成車とフレームセットで販売される。

 

56サイクル・筧 五郎×自転車ジャーナリスト・吉本 司  試乗インプレッション

ヨネックス・グローエントを筧五郎が切る

●56サイクル代表 筧五郎(かけい ごろう)さん(写真前側)/2005年の乗鞍ヒルクライムを制覇し、年齢を重ねても一線で活躍する社会人レーサー。現在は「56サイクル」を運営しながらコーチングも行う。親しみやすいキャラクターからNHKの自転車番組「チャリダー★」をはじめ、メディア出演も多い。 ●自転車ジャーナリスト 吉本司(写真後ろ側)/フリーの自転車ジャーナリスト。ロードバイクを軸に置きながら、40年間にわたりさまざまな自転車遊びを経験する。車種やジャンルを問わず多方面に造けいが深いことで知られる。

 

ストック状態とカーボンホイールに履き替えて性能を深掘り!

今回の試乗は、56サイクルの代表、筧五郎さんを迎え、筆者である自転車ジャーナリストの吉本司という、体格や脚力の異なる2人が担当する。筧さんは言うまでもなくホビーレーサーの実力者であり、レーシング性能を探る。一方、吉本はノンレースのライダーとしてロングライドをはじめホビーサイクリスト目線での性能を体感する。

試乗車はシマノ・105 Di2コンポ搭載の完成車販売モデル。ホイールはアルミリムのシマノ・WH-RS171、タイヤはIRC・アスピーテプロSライト、クリンチャーの28Cサイズを履く。まずこの状態で試乗し、後にシマノ・WH-R8170-C50と同C36のカーボンホイールをそれぞれに交換して、ストック状態との性能の違いを体感した。

※筧さんはXSサイズ、吉本さんはMサイズに試乗しました(編集部 注)。

 

サイクルスポーツ(以下CS):そもそも筧さんって、ヨネックスに乗った事はあるんですか?

筧:実はあるんですよ。リムブレーキ時代のカーボネックスに試乗をして、そのフィーリングがすごく良かったので買ったんです。でも、自分の手元に届いたフレームは、ちょっとフレーム剛性が固く感じられて、結局手放してしまったんです。だから、ヨネックスへのイメージはいいイメージと悪いイメージの半々なんですよ。

CS:なるほど。で、グローエントの存在はどんなイメージですか?

筧:廉価バージョン。

CS:そ、そうですか……。乗ったことはありますか?

筧:ないですね。僕のヨネックスのイメージは、さっき話した時代のままで止まっているので、この子(グローエント)がどんな走りをしてくれるか楽しみです。

CS:それでは、お二人とも試乗をお願いします。

 

力まずペダルを回せることが、走りの楽しさにつながる

ヨネックスのグローエントを試乗

2人はまず平坦基調のコースでグローエントの実力を試す。筧さんが軽快なリズムでペダルを回し、吉本を引き連れ走ってゆく。ペダルが特別意識をしなくてもきれいに回るというのが、2人の共通する意見のようだ。

 

筧:僕はハイエンドバイクばかりを乗ってきたけど、中にはここで乗らないと(踏まないと)進まない、という感触のモデルもある。でもグローエントは(ペダリングの)、どの位置で踏んでもずっとクランクにトルクがかかっている感じがするね。

吉本:ペダルを踏むと、その脚が自然と下死点へと落ちていく。ライダーがペダリングに気を遣わないところがすごくいいですね。

筧:ノーマル(真円)から楕円ギヤに換えると、ここが踏む位置だってことが分かるようになるでしょ。(楕円ギヤをしばらく使って)楕円ギヤから真円のギヤに換えると踏む位置が体にしみついているので、ここで踏まなきゃという意識をしなくても、自然と脚が落ちる。でも、パワーはしっかりかかっている。(グローエントのペダリングフィールは)そんな感じだから、すごく良いなって。

吉本:それができるから、自転車がスムーズにきれいに流れるように進んでいきます。

筧:そうそう。流れていく。

ヨネックスのグローエントを試乗

ヨネックスのグローエントを試乗

吉本:ミドルグレード以下のバイクだと、チューブ肉厚をある程度厚くしているので、ペダルを踏んだときにゴツい印象があるモデルもあるんです。グローエントはそういう感覚が一切なくて、ペダリングフィールが気持ちいいですね。

筧:そうだね。ビギナーとかだと固い感じがあると体が辛くて乗るのが嫌になってしまうこともあるんだけど、このバイクは自転車ってこんなによく進むんだって思える。すごく丁寧に作られたバイクだよ。

吉本:とても素性がいい自転車です。素直なペダリングと推進力が、走りの気持ち良さにつながっていますね。

筧:これは感動というか、素直に驚いたね!

吉本:ではゴローさん、次は上りでグローエントの走りを試してみましょう!

 

脚に固さを感じないから、ペダルを気持ち良く回し続けられる

ヨネックスのグローエントを試乗

ヨネックスのグローエントを試乗

吉本:いやー、上りもとてもいいですね。

筧:思った以上に良かったね。

吉本:ほんと予想以上です。

筧:(上りでも)フレームに嫌な固さがなくて、脚がすっと下死点まで落ちる。というか勝手に落ちる。(ペダルを踏もうと)身構えていた自分が恥ずかしくなるくらいに素直にペダルを回せる。「1時から4時の間でペダルを踏んで」とか、そんなことを意識しなくていい。

吉本:そうですね。通常、上りになるとケイデンスって落ちますよね。選手はその落ち込みが少ないけれど、僕みたいなホビーサイクリストはガクンと落ちるわけです。そんなときに固いフレームはペダルを踏み抜きにくいので、踏もう踏もうとしちゃう(させられちゃう)。で、エネルギーを使うから、どんどんケイデンスが落ちて失速しちゃいます。でも、グローエントは固くなくて脚がすっと下死点に落ちてゆくので、ケイデンスを維持しやすいですよね。だから走りが楽だし、当然速さにつながってきますね。

筧:ペダルが回しやすくて、重量も感じにくい。その一言に尽きるよ。

吉本:上りは軽くて固いフレームの方がパワーロスがなくて良いと思っている人もいるかもしれません。でも一般のライダーは、しなやかさのあるフレームの方が上りを一定ペースで走りやすいし、タイムも出せるように思います。乗鞍でトップクラスのタイムを出したい人は別ですけど、アベレージライダーがタイム更新を狙うのなら、グローエントに軽めのパーツを組むと良いのかなと。

筧:乗鞍で1時間30分くらいを狙う人には、これを乗ってほしいね。こんなにもフィーリングのいいバイクはないからね。

吉本:このバイクならスタートからゴールまでタレずに走れそうです。

筧:そうね。ヒルクライムはタレちゃうのが一番良くないからね。グローエントは脚に固さを感じにくいから、右足でペダルを踏んだら自然と左足が上がってくる。そしたらまた左足を下ろして……と、その繰り返しをずっとできる。スピードを維持しやすいからヒルクライムが楽しくなるし、ゴールに早く着く。本当にこのフレームは良いね。試乗する前まで悪かったヨネックス印象が、良くなっちゃった!

吉本:いい意味でペダルを“回す”ことを強制される自転車ですよね。さて、ゴローさん、上りのパフォーマンスを楽しんだところで、最後はホイールを換えて、平地と上りを、もう一度楽しんでみましょう!

 

素性のいいフレームがホイール性能を引き出し、速さが加わる

ヨネックスのグローエントを試乗

ヨネックスのグローエントを試乗

筧:どうでした? ホイールを換えると。

吉本:端的に速くなります!

筧:そうそう。上りも速くなる。

吉本:C50に乗るとペダリングとホイールの転がり感のピッチがとても合うので、バイクがよどみなく流れて行くような感覚が強くなるので、速くて気持ちいいですね。そもそもグローエントが持っている走りの気持ち良さが増幅されていますね。

筧:スピードを上げちゃいたいな、もがきたいなって。

吉本:本当にそうですね。

筧:スピードが上がってからの上り返しは、走りが重くなるところだけど、すーっとスピードを上げていけちゃう。ギヤチェンジをコンコンって(ギヤ比を)上げられちゃうから、いい意味で走らされてしまう。

吉本:アルミホイールの状態だとやっぱりスピード変化で鈍さを感じますね。でもC36を履くと、上りで勾配が変わって速度が落ちそうなときに“ちょい踏み”する場面でも失速しないです。ホイールを履き替えると、性能に望む物はほぼないですよね。

筧:本当にないね。

吉本:ゴローさん、これでレース出てと言われたら文句ないですよね。

筧:普通に出られるよ。軽快さがすごく際立っているから、目をつむって走れば自分がいつも乗っているエ●ンダと変わらないくらい。

吉本:フレームの素性がいいから、ホイールの良い部分がきれいに引き出されますね。

筧:いろいろなホイールとけんかをしないで仲良くできる。本当にいいバイクだよ。

 

丁寧な作りでホビーライダーの脚力を、しっかり引き出してくれる

ヨネックス・グローエントについて語る筧五郎さん

CS:お二人とも試乗をお疲れさまでした。結構、楽しまれていたようですね。では、まず筧さん。全体を通しての印象はいかがでしたか?

筧:今まではヨネックスは“固い”というイメージでした。でも、これに乗ったら、こんなにも素直に走るんだと、驚きました。しかもそれが平地から上りまで変わりなく、ホイールを換えるともっと速く走れる。素直に走ってくれるから疲れないね。

CS:なるほど。ゴローさんは競技者ですけど、その目線で見て“使える”バイクですか?

筧:使えるね。特にレースの入門者に乗ってほしいな。フレームが固くない。しなやかさがあるけれど、芯があるのでヤワな感じがない。

CS:ヒルクライムはもちろんエンデューロ、入門用のロードレースにもいけると。

筧:そうだね。

CS:今回はホイールを付け替えて試乗もしてみましたが、パーツ交換するとさらに楽しく乗れそうですね。

筧:ホイールもそうだけど、交換するならカーボンのハンドルとか、ステムもサドルも軽いものに換えるとバイクの振りが変わって軽くなると思うよ。

CS:そういう意味ではフレームセットで買った方がいいですか?

筧:そうかもしれないね。

CS:では次に吉本さんはいかがでしたか?

ヨネックスのグローエントを試乗

吉本:癖がなくてすごく乗りやすいバイクです。ペダリングフィールをはじめ乗り味が優しい。でも、ロードバイクらしい軽快感はちゃんと感じられて、バランスがとてもいいですね。レース派でも固くないフレームが好きな人はハマると思うし、僕みたいにノンレースのサイクリストが乗るには絶好の1台。ロングライドやブルベ、ヒルクライムとかで自分なりに頑張って走るときに、疲れにくいので脚力を十分発揮できるでしょう。

CS:なるほど。

吉本:ハイエンドのレースバイクの加速感とか軽さは、分かりやすくて楽しい面はあるけれど、それを一般のライダーが本当に楽しめるのか、必要なのかというと決してそうとは限りません。大切なのはストレスなく快適に安全に乗れること。それが日々のライドの満足感につながり長く乗り続けられる。自分はレーサーではないので、グローエントみたいなバイクがあったら、無理なく毎日楽しく乗れると思います。

筧:いい意味ですごく裏切られた感じがあるね。こんなにも乗りやすいなんて……。そしてこれが(フレームセット)35万円だなんて!

吉本:本当に驚きですよ。話は変わりますけど、僕、以前に新潟県にあるヨネックスのファクトリーを取材したことがあるんです。フレームが作られる様子をこの目で見て、開発者の方々の話を伺ったんです。開発はとても緻密にされていて、生産部門では職工の方々が1枚1枚プリプレグを慎重かつ丁寧に貼り付けているんです。ゴローさんが「丁寧に作られているフレーム」と評しましたけど本当にそのとおりで、今回グローエントに乗って、取材をしたときのことを思い出しました。

グローエントは、これだけの性能ながら手に入りやすい価格を実現するために生産の一部は外部で行っているらしいのですが、チューブをはじめフレーム部材は新潟工場で作られているそうです。だからヨネックスの丁寧な自転車作りのDNAは、グローエントにも的確に反映されているんです。今回は改めてヨネックスのすごさを思い知った気がします。性能面もいいし、こういうホビーライダーの側にしっかりと向いたバイクが売れてほしいですね。

CS:本当にそうですね。お二人とも、ありがとうございました。