NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス 別府、中根、岡、石上が所属するチームの抱負

右から石上優大、別府史之、NIPPO岩田裕美会長、中根英登、岡篤志

2011年に「プロ化」の道を歩み出してちょうど10年目、2016年にプロコンチネンタルチームへと昇格して5年目。

この10年間、絶えずチームは成長を続けてきた。我々にとっては1年1年を同じように大切にしてきたし、1年ずつ着実に階段を一歩上がってきた」と、ゼネラルマネージャーのフレデリク・ロスタンは熱っぽく語る。「そして2020年、NIPPOという新しいパートナーを得た今シーズンは、なおいっそう重要な年になるであろう」

プロヴァンサルであり、コスモポリタンでもあり……つまり南仏プロヴァンス地方に根を深く張りながらも、極めて国際色豊かな自転車チームであるNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスが、1月9日、関係者やファンの前で正式にお披露目された。

チームプレゼンテーションの舞台となったのは、マルセイユ郊外オバーニュのシャトー・ド・ラ・ビュジーヌ城。小高い丘の上に建つ19世紀の城は、現在は映画博物館として活用されている。その特別試写室のスクリーンに、この日は、大小51ものスポンサー名がびっしりと写し出された。

NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス

デルコを筆頭とした複数の地元企業と並んで、地方自治体関連がスポンサーリストに延々と連なる。チーム名の一部でもあるワンプロヴァンス自治体間協力公施設法人から、地方、県、市、さらには区まで。「我々はスポーツが輝くよう手助けし、スポーツは我々の土地を輝かせてくれるのだ」と、壇上で自治体責任者も高らかに謳い上げた。

そもそもラ・ビュジーヌ城とは、地元の大作家マルセル・パニョルの作品の舞台であり、このパニョルの産んだ人気キャラクター「マリウス」にちなんで、マリンブルーのストライプ柄ジャージはデザインされたんだとか。

いわゆる「地域密着型」の要素が極めて濃い一方で、「マルセイユは寄港地でもある」(byマルセイユ市責任者)。チームには世界10カ国から23名の選手(8月以降は11カ国24名)が集結した。この日の選手紹介方法にも、ちょっとしたインターナショナルな工夫が。アフリカ開催のラ・トロピカル・アミッサ・ボンゴ組(別府史之、岡篤志)、ヨーロッパ初戦のGPマルセイエーズ組(石上優大)、そして中東を舞台に戦うサウジアラビア&オマーンツアー組(中根英登)という3つのグループに分けて、順番に壇上へと招き上げられた。

右から石上優大、別府史之、NIPPO岩田裕美会長、中根英登、岡篤志

つまり1月20日のガボンで、日本の別府と岡はシーズンインを向かえる。「たくさんのお客さんの前でチームプレゼンテーションに出場するのは初めてかも」と欧州プロ1年目の岡が緊張した面持ちで過ごしたのに対して、プロ16年目の別府はさすが堂々たるもの。チームの前身、名門アマチュアクラブVCラポム・マルセイユ出身の大ベテランは、司会者からの質問にも流暢なフランス語ですらすらと答えた。

「変化を求めて、チームを移籍したんです。ゼネラルマネージャーの情熱に打たれ、チームのプロジェクトに共感しました。またNIPPOを筆頭に素晴らしいスポンサーが揃ったし、なにより才能ある若い選手が多いですね。今年のチームは大きな勝利を得られるでしょう。いいシーズンになりますよ!」

NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス

「提携育成チーム」の位置づけにあるAVCエクサンプロヴァンスから、今年念願のプロ入りを果たした石上もまた、突然、壇上でコメントを振られてしまった。ただ「普通にリラックスしてますけど」なんて開会前に言っていた通り、22歳ネオプロは一切たじろがない。むしろ会場にちょっとした笑いと温かい拍手を巻き起こした。

「こんばんは……みなさん。僕にとってプロ1年目です。プロのことはなんにも知りません。レースのことも、あれこれ他のことも。ただ仕事や、走り方は知っています。もしもチャンスがあれば……勝ちだって狙います」

この石上が寒い2月のヨーロッパでシーズンを走り出すのに対して、NIPPOの名の下ですでに3年走ってきた中根は、暖かなペルシャ湾岸へと向かう。中根にとって初戦は決して足慣らしではなく、求めるのはずばり「成績とUCIポイント」だ。

ちなみに今季のチームは、世界各地のレースに通算250日出走予定。これは昨季より約50日も多いのだとか!

フランスチームとしてフランスカップ(ワンデーレースシリーズ)の転戦はもちろん、昨パリ〜ルーベ9位のエヴァルダス・シシュケヴィチュスのために、ベルギー方面のワンデーレースにも今まで以上に参加していく。ツアー・オブ・ジャパンやジャパンカップは欠かせないし、アジア大陸での活動範囲も広げる。チームプレゼンテーションの2日前には、NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスの手元へパリ〜ニース招待状も届いた。あらゆるタイプの、あらゆる地形の、あらゆるレベルのレースが、しかも数多く用意された。日本人選手4人が輝くチャンスも、必ずや巡ってくる。

NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス

壇上のフレデリク・ロスタンGM(左)

ゲストから「ハートとド根性の持ち主」と称されたGMが、あまりに熱弁を振るいすぎたせいで……予定時間を大幅に超過して幕を閉じたプレゼンの後は、立食パーティーの美味しい食事と楽しいおしゃべりで夜遅くまで盛り上がった(選手たちはノンアルコール!)。それでも翌10日の朝8時過ぎには、チーム一行は元気よくスペインへと旅立っていった。選手たちはバルセロナ北の避寒地でトレーニングを行い、それぞれのシーズン開幕へ向けて、最後の調整を行う。

NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス

バイクはルック・795ブレードRSを使用。リムブレーキモデルがメインになるという