安井行生のロードバイク徹底評論第13回 キャノンデール・スーパーシックスエボ vol.5

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安井スーパーシックスエボ5

徹底評論第13回は、近年稀に見る「衝撃のモデルチェンジ」となったキャノンデール・スーパーシックスエボである。アメリカでのローンチイベントに参加し、帰国後も日本で何度も試乗を行い、さらにこの連載のために新型エボの全モデルに(ホイールを統一して)乗った安井。新世代万能ロードに関する考察をしながら、新型エボを分析・評価する。

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ユーザーレベルで取捨選択が必要

安井スーパーシックスエボ5

この新型エボはシートチューブ上端の積層を分厚くして強度を確保しているようだ(強度が確保されているということは自ずと剛性も高くなり、クランプを締め付けたときにトップチューブ後端がたわんで逃げないので、固定力も高くなるはずだ)。同様の理由で、デローザ・メラク、ウィリエール・ゼロSLR、ヴェンジなども安心だろう。また、旧型SLR01や新型アディクトRCはシートクランプそのものを専用のカムテール形状にし、シートチューブ全周でストレスを受ける作りにしている。ドグマF12やG8はクランプ機構そのもので工夫をしている。それらはおそらく問題ないだろう。
しかし、見るだに心配なほどシートチューブ上端を薄く仕上げているフレームはいくつも存在する。個人的には、そういうフレームは怖くて買えない。フレーム本体であるシートチューブにクラックが入れば修理は難しい。しかも専用形状のシートポストは長年使ってクランプ部分に凹みができたとしても代替品が手に入るとは限らない。

それらはおそらくCADソフトの中では十分な強度を保っているのだろう。しかし現実世界では、委託工場がどんな形状精度でモノを仕上げてくるか、どんなユーザーがどんな状況でどんな乗り方で使うか、完璧に想定するのは難しい。
クールなカムテール形状のシートポストとスマートな内蔵シートクランプを組み合わせるのもいいが、製造技術の問題やユーザーの使用方法によって発生したクラックを「想定外でした」と言い逃れするのは大メーカーのやるべきことではない。
最新モードを纏ったバイクをちょいとしゃぶって飽きたら捨てるというリッチな乗り方ならそれでもいいのだろうが、愛車とじっくり長く付き合いたいというなら、購入時には注意したいポイントである。

 

ディスクブレーキ主体のラインナップへ

主題のエボに話を戻す。高弾性糸を使った軽量なハイモッドと、中弾性糸使用でコストを下げたスタンダードモッドという2種類のフレームが用意されるのは前作同様だが、新型はハイモッドがディスクブレーキのみとなった(スタンダードモッドにはリムブレーキとディスクブレーキの両方が用意される)。エボもとうとうディスクブレーキを主体とする方向に舵を切ったのだ。

スタンダードモッドにリムブレーキを設定した理由は?と聞いたところ、「アメリカのマーケットでは、ハイパフォーマンスなバイクにはディスクブレーキがマストです。軽量で高性能なリムブレーキロードに乗りたいという少数なユーザーのために時間とコストをかけてハイモッドのリムブレーキ仕様を開発するのは意味のないことだと判断しました。しかしディスクブレーキは高価になりがちです。ターゲットを広げるには、スタンダードモッドに安価なリムブレーキモデルを設定するべきだと考えました」とのこと。
要するに安いモデルを作るためにリムブレーキ版を作ったというわけだ。ちょっとガックリくる理由ではある。
なお、プロチームはリムブレーキ版を使っているが、これは決してハイモッドのリムブレーキ版というプロスペシャルではなく、スタンダードモッド(=市販品)だという。

安井スーパーシックスエボ5

フレーム重量は、ハイモッドが806g(フォーク364g)、スタンダードモッドのディスクが924g(フォーク405g)、スタンダードモッドのリムブレーキが908g(フォーク353g)となる(いずれも48サイズ、塗装済、小物込み、フォークはコラムカット済)。ディスク化したことやエアロ志向になったことを考えると、エボの名に恥じない軽さと言っていいだろう。なお、フォークやシートポストを含めたハイモッドディスクのシステム重量では前作比で19gの軽量化を達成しているという。
ハイモッドには、デュラエース仕様、アルテグラDi2仕様の完成車と、フレームセットが用意される。当初設定されていたデュラエースDi2仕様は消えたようだが、ハイモッド完成車は(機械式デュラ仕様もアルテDi2仕様も)70万円台と、トップモデルとしてはなかなか魅力的なプライスである。バカ売れしているというヴェンジプロのいいライバルである。ただし、機械式デュラ仕様のホイールは非SL(ホログラム45ノット)となる(アルテDi2仕様のホイールはホログラム45SLノット)。
スタンダードモッドのディスク版はフォースeタップ仕様、アルテグラ仕様、105仕様。リムブレーキ版はアルテグラ仕様、105仕様となる。

2020シーズンにおけるキャノンデールの冒険は、コンセプトの劇的変化だけではない。グラフィック面での挑戦だ。ありとあらゆるところにメーカー名やモデル名やテクノロジーの名称をこれでもかと入れることが当たり前だった従来のグラフィックに対し、2020キャノンデールは一気にシンプルになった。目立つロゴはトップチューブに入るメーカーロゴのみ。ダウンチューブの斜線やその色合わせは好みがわかれるところだろうが、トップモデルに設定されるブラックは、かつてのブラックインクを彷彿とさせる洗練されたグラフィックである。この流れは今後のトレンドとなりそうな気がする。これに追従する他社も出てくるだろう。

安井行生のロードバイク徹底評論第13回 キャノンデール・スーパーシックスエボ vol.6に続く