安井行生のロードバイク徹底評論第13回 キャノンデール・スーパーシックスエボ vol.7

目次

安井スーパーシックスエボ7

徹底評論第13回は、近年稀に見る「衝撃のモデルチェンジ」となったキャノンデール・スーパーシックスエボである。アメリカでのローンチイベントに参加し、帰国後も日本で何度も試乗を行い、さらにこの連載のために新型エボの全モデルに(ホイールを統一して)乗った安井。新世代万能ロードに関する考察をしながら、新型エボを分析・評価する。

vol.1はこちら

 

エアロロードかくやの巡航性

では走りの評価に移る。
まず、米国プレスローンチでの印象を記しておく。各国メディアに用意されたのは、機械式デュラエース仕様のハイモッド完成車。乗車前にフレームを眺めてみる。あくまで個人的印象だが、造形として非常に美しい一台だ。
ヘッド部分で視線の流れが引っかかるシステムシックスとは異なり、目が各チューブをトレースする際、視線が淀みなく流れてくれる。最小サイズでも均衡が取れており、シルエットが引き締まってバランスが破綻していない。どれも似てきたこのカテゴリーの中で、新型エボの造形の仕上げは一頭地を抜く出来だ。先に「自転車のフレームは機能=形状」と書いたが、おそらく新型エボは、設計に“スタイリング”という要素が少なからず入っているものと思われる。

走り出した瞬間に感じたのも、プレゼンの印象と同様、「まるでエアロロードに乗ってるみたい」というものだった。チューブレスではなく、しかも一世代前(グラフェン2.0になる前)の25Cのルビノという決して最速タイヤではないのに、走行抵抗がかなり低く抑えられている。空力性能向上の結果だろうか。45mmハイトのホイールの影響も大きいだろうが。
加速の瞬間や登坂路での俊敏さは前作よりやや劣ると感じたが、これは決して軽いとは言えない足まわりのセッティングのせいだろう。もうちょっと軽いホイールをはかせれば、俊敏性はおそらく前作同等かそれ以上になると思われる。
しかし目減りしたと感じられるのは加速が生じ始める瞬間だけで、ペダル半回転後あたりからの加速性能、高速への伸びやかさは旧型を凌ぐ。(vol.1で述べた)乗車前の釈然としない印象が一転して晴れやかになってくるのはここからだ。

明らかな進化を感じるのは、先述の走行抵抗に加え、快適性とペダリングフィールである。旧型のような脚を刺すような刺々しさは影を潜め、ペダルが回しやすく、フレームとの一体感が高まっている。ディスクブレーキであることを考慮すると、この進化は大きい。
走行抵抗の減少、ペダリングフィールの円熟に加えて、大きな点数アップを果たしているのが乗り心地だ。特にリヤセクションの快適性は大幅に向上している。ドロップドシートステーの効果なのか、減衰よりも吸収に長けている印象で、大きめのギャップもドルンと飲み込む。「これじゃシナプス売れんくなるんちゃうんか……」という代理店スタッフのボヤきにも同情である。

軽やかで滑らかでスマートな、洗練されたスーパーバイク。確かに前作のような個性は薄れた。しかし、快適性、空力、ディスクブレーキへの最適化などを含めた万能バイクとして、これ以上の完成度を持つモデルはかなり少ない。それが第一印象である。

 

計6条件でのエボ一族インプレ

では日本での第二印象を記す。
せっかくなので、この連載用に新型エボ一族の同条件比較を行うことにした。
まず、トップモデルである①スーパーシックスエボハイモッドディスクデュラエースDi2。そして、②スーパーシックスエボカーボンディスクアルテグラ。最後は③スーパーシックスエボカーボンアルテグラ2。
①と②でハイモッドとスタンダードモッドの比較を、②と③でディスクブレーキとリムブレーキの比較(両車スタンダードモッド)をしよう、という腹積もりだ。

安井スーパーシックスエボ7

また、フレーム単体の違いを感取するため、ホイールをDTスイスのPRC1100ダイカットシリーズに統一しての比較も行った。ディスクブレーキ用はPRC1100ダイカット35ディスク、リムブレーキ用はPRC1100ダイカット35。リムの基本設計(35mmハイト、25mm幅)は共通であり、重量差もほとんどなく(ディスク版がフロント647g/リヤ788g、リム版はフロント650g/リヤ789g)、2モデルとも走りは洗練されているため、ディスクブレーキ・リムブレーキ比較に最適だと考えたためである。

安井スーパーシックスエボ7

よって、①②③に加え、①×DTスイス・PRC1100ダイカット35ディスク(=④)、②×DTスイス・PRC1100ダイカット35ディスク(=⑤)、③×DTスイス・PRC1100ダイカット35(=⑥)という、計6条件での試乗を行う。

安井行生のロードバイク徹底評論第13回 キャノンデール・スーパーシックスエボ vol.8に続く